応募者の個人情報が退職者のPCや個人アカウントに残っているとき
採用担当が退職したあとに、「そういえば履歴書のPDFはどこに保存されていたのか」と気づく会社は少なくありません。共有サーバーを探しても見つからず、前任者が使っていたノートPCの中か、本人の個人メールの添付ファイルにしか残っていない。面接メモに至っては、私物のノートや個人のスマートフォンのメモアプリだったということもあります。
これは引き継ぎの不便さの話にとどまりません。応募者は「この会社に預けた」つもりで履歴書を送っています。それが退職した個人の手元にある状態は、会社として説明できる状態ではありません。この記事では、どこに残りやすいのか、退職前後に何を依頼して何を記録に残すのか、そして今後同じことを起こさない保存先の設計までを、採用の専門知識がない方向けに整理します。
まず、どこに残っているかを洗い出す
採用の個人情報は、会社が管理していると思っている場所以外に散らばりやすい性質があります。応募者対応はスピードが求められるため、その場で手元に落として処理する運用になりやすいからです。
| 残りやすい場所 | よく残っているもの | 会社から見えるか |
|---|---|---|
| 業務PCのローカル(デスクトップ・ダウンロード) | 履歴書・職務経歴書のPDF、応募者一覧のExcel | PCを回収すれば見える |
| 個人メール(フリーメール) | 媒体からの応募通知の転送、応募者との直接やりとり | 見えない |
| 個人スマートフォン | 面接日程の連絡、応募者の電話番号、メモアプリの評価コメント | 見えない |
| 私物PC・自宅の外付けドライブ | 持ち帰って作業した選考資料 | 見えない |
| クラウドの個人アカウント | 応募者管理シート、面接メモ、共有リンク | 見えない |
| 紙 | 印刷した履歴書、面接時の手書きメモ | 保管場所によっては不明 |
このうち会社が自力で確認できるのは、実質的に業務PCと紙だけです。残りは前任者に申告してもらう以外に把握する手段がありません。だからこそ、聞ける時期が限られます。アカウントや契約名義の回収と合わせて動くほうが効率がよいので、採用担当の退職時に回収すべきアカウントと情報と並行して進めることをおすすめします。
なぜ放置できないのか
理由は二つあります。
一つは応募者への責任です。応募者は求人に応募した時点で、その会社の採用選考のために履歴書を提出しています。選考が終わったあとも退職した個人の私物端末に残り続ける状態は、その前提から外れています。万一そこから情報が外に出た場合、責任を問われるのは個人ではなく会社です。
もう一つは社内管理です。個人情報の取り扱いについては、取得した目的の範囲で扱うこと、および漏れや紛失を防ぐための管理措置を講じることが法令上求められています。具体的にどこまでを自社の義務と考えるかは業種や規模によって変わるため、判断に迷う場合は顧問弁護士や社会保険労務士、個人情報保護委員会の公開資料を確認してください。ここで押さえておきたいのは、「どこに何があるか把握していない」状態そのものが管理できていないことを意味するという点です。
退職前に依頼する、削除確認の手順
在籍中であれば、業務上の指示として依頼できます。有給消化に入ると業務命令としての依頼はしにくくなるため、最終出社日より前に着手してください(有給中の頼み方については前任者が有給消化に入る。どこまで引き継ぎを頼めるかにまとめています)。
手順は「集める→移す→消す→記録する」の順です。逆にすると、消したあとに必要な資料がなかったことに気づく事故が起きます。
- 申告してもらう。 上の表をそのまま渡し、「該当する場所にデータがあるか」をチェックしてもらいます。責める場面にしないことが大事です。持ち帰り作業を咎める空気を出すと、申告漏れが増えます。
- 会社の保存先に移す。 履歴書・職務経歴書・応募者一覧・面接メモ・不採用者の記録を、共有フォルダの決められた場所にコピーします。ファイル名の付け方をこの時点で揃えておくと、後任が探せます。
- 転送設定を止める。 媒体からの応募通知を個人メールに転送していた場合、転送設定を解除しないと退職後も応募者情報が個人宛に届き続けます。見落とされやすい項目です。
- 削除してもらう。 移し終えたことを確認したうえで、ローカル・個人メール・個人端末・クラウド個人アカウント・紙の順に削除します。メールは「ゴミ箱を空にする」まで、紙はシュレッダーまでを指定します。
- 記録に残す。 次項のとおりです。
証跡は「何を消したか」ではなく「消したと本人が申告した事実」を残す
会社は前任者の私物端末を検査できません。したがって残せる証跡は、確認の依頼をした事実と、本人が完了を申告した事実になります。口頭で終わらせず、書面かメールで残してください。
| 記録すること | 具体的な残し方 |
|---|---|
| 依頼した日と内容 | チェックリストを添付したメールを本人と上長に送る |
| 対象範囲 | 「採用選考に関する個人情報(履歴書・経歴書・面接メモ・連絡先)」と明記 |
| 完了の申告 | 本人がチェックリストに記入し、返信または署名して提出 |
| 会社側の受領 | 受け取った担当者名と日付を記載して保管 |
| 未対応の項目 | 「私物PCは自宅にあるため後日」など残ったものを明記し、期限を切る |
完璧を目指すより、抜けを可視化するほうが実務的です。未対応が残ったまま退職日を迎えることはあります。その場合も、何が残っているかを書面にしておけば、後日の連絡先が確保でき、社内でも状況を説明できます。
退職後に発覚した場合も、やることは同じです。連絡が取れるうちに削除を依頼し、応じてもらえた事実を記録します。同時に、応募者側から「その後どうなりましたか」と連絡が来る可能性を想定して、応募窓口の受け皿を先に用意しておくと落ち着いて対応できます。
今後は個人端末に置かない。共有フォルダの権限設計
削除して終わりにすると、後任が同じことを繰り返します。持ち帰りが起きるのは本人の意識の問題というより、置き場所と権限の設計が採用業務に合っていないためです。
設計の要点は三つです。
保存先を一箇所に決める。 「採用」フォルダの下に「募集中の求人」「選考中の応募者」「不採用・保留」「内定者」の四つを作り、応募者ごとにフォルダを切ります。判断に迷わない構造にすることが、手元保存を減らす一番の近道です。
権限を職種ではなく作業単位で配る。 採用担当は全体の編集権限、面接官は自分が面接する候補者のフォルダのみ閲覧、経営層は全体の閲覧のみ、といった配り方にします。面接官に閲覧権限がないと、資料が個人メールで送られて拡散します。権限を絞りすぎることが漏えいの原因になる、という逆方向の副作用は覚えておいてください。
保管期間と削除のタイミングを決める。 不採用者の応募書類をいつまで保管するか、返却するか破棄するかを社内ルールとして決め、求人票や応募フォームの案内と食い違わないようにします。決めておけば、担当が代わっても運用が続きます。
こうしたルールは、引き継ぎ書に書き込んでおくと後任に伝わります。何を書くべきかは採用業務の属人化を解く。引き継ぎ書に必ず書く12項目にまとめてあります。
手が足りないときは
削除確認も権限設計も、やること自体は難しくありません。難しいのは、採用担当が抜けた直後にこれを進める人がいないことです。応募者への連絡、媒体の契約確認、後任の募集が同時に押し寄せる中で、個人情報の棚卸しは後回しになりやすい業務です。
Talencoの「採用担当引き継ぎ代行」では、止まった求人活動の復旧、後任の採用、引き継ぎと業務改善までを一括で引き受けます。後任は採用担当の経験者でなくて構いません。当社が実務を代行しながら育て、保存先や権限のルールごと引き継ぎます。標準プランは4ヶ月・200万円(税別・広告費込み、分割可)。ほかに復旧のみの2ヶ月プラン、6ヶ月の完全プランがあります。詳しくは採用担当引き継ぎ代行と料金プランをご覧ください。
まずは現状の把握からで構いません。媒体アカウント・契約・進行中の応募者の棚卸しを行う「採用ストップ診断」までは無料です。ご相談はLINE公式からお願いします。