面接官だった現場社員が異動・退職したときの立て直し
採用担当は残っているのに、ある職種の選考だけが進まない。理由をたどると、その職種の面接をずっと一人で担っていた営業部長や店長が、異動や退職で抜けていた。日程調整の連絡は出せても、面接に出る人がいない。合否を決める人もいない。こうした止まり方は、採用担当の退職より社内で気づかれにくいことがあります。
この記事では、面接官が抜けた職種をどう立て直すかを整理します。まず面接官の依存状態を職種別に点検し、後任の面接官が立つまでの暫定対応を決め、評価基準を引き継ぐ資料を集め、最後に面接官を2名以上置く体制に直す、という順番です。
面接官が抜けると、なぜ選考が止まるのか
現場の面接官は、面接に出るだけでなく「この人を現場に入れてよいか」の判断も持っています。採用担当が日程を組み、書類を回しても、最後の判断が特定の一人の頭の中にあると、その人が抜けた時点で選考の出口がふさがります。
もう一つの理由は、評価の基準が記録に残っていないことです。「あの部長が会えば分かる」で回っていた職種では、何を見て合格にしていたのかを誰も説明できない場合があります。後任を立てようにも、何を引き継げばよいのかが分からないまま時間が過ぎていきます。
面接官が1人に依存していないかを職種別に点検する
まず、募集している職種ごとに「誰が面接に出ているか」「その人がいなくなったら誰が代われるか」を書き出します。直近1年分の面接日程(カレンダーの予定や会議室の予約)と、残っている評価メモから拾うと、記憶に頼らずに埋められます。
以下は、書き方の例です。
| 職種 | 一次面接 | 最終面接 | 代わりに面接できる人 | 評価の記録 | 判定 |
|---|---|---|---|---|---|
| たとえば 法人営業 | 営業部長(異動予定) | 社長 | なし | 部長の手帳のみ | 要対応 |
| たとえば 店舗スタッフ | 店長(退職) | エリア長 | 副店長 | 評価シートあり | 暫定対応で回せる |
| たとえば 経理 | 経理課長 | 管理部長 | 管理部長 | 評価シートあり | 当面問題なし |
判定欄は、「代わりに面接できる人」が空欄で、かつ評価の記録が個人の手元にしかない職種を「要対応」とします。このとき、一次と最終が同じ人に集中していないかもあわせて確認してください。両方を一人が持っていた職種は、抜けた瞬間に選考の入口も出口も止まります。
後任の面接官が立つまでの暫定対応
後任の面接官を決めて、その人が一人で判断できるようになるまでには時間がかかります。その間も応募者は待っているため、選考を止めずに進める暫定の形を先に決めます。
管理部門が同席して、進行だけ担う
現場の知識がない管理部門の担当者に、合否の判断まで任せるのは無理があります。そこで役割を「進行」と「判断」に分け、管理部門は進行だけを持ちます。
| 役割 | 担う人 | 中身 |
|---|---|---|
| 進行 | 管理部門の担当者 | 会社説明、条件の説明、時間の管理、質問への回答の記録 |
| 現場の見極め | 後任候補の現場社員(同席) | 仕事内容に関する質問、経験の確認 |
| 合否の判断 | 現場の上長(最終面接官など) | 進行役の記録と同席者の所見をもとに決める |
進行役が質問と回答をその場で書き取っておけば、面接に出ていない上長でも記録をもとに判断できます。後任候補の現場社員にとっては、同席が面接官としての練習の場にもなります。
応募者への伝え方
面接官が替わったことを応募者に詳しく説明する必要はありません。「当日は〇〇部の〇〇と、管理部の〇〇が担当します」と、当日会う人の名前と部署を事前に伝えれば足ります。前の面接官と面識のある応募者には、担当が替わった旨を一言添えておくと、話が食い違ったときの混乱を避けやすくなります。
暫定期間中に決めておくこと
暫定期間の合否を誰が最終的に決めるかは、紙1枚に書いて関係者で共有しておきます。決める人が曖昧なまま面接だけ進めると、面接は終わったのに結果が出せず、応募者を待たせることになります。
評価基準を引き継ぐために渡す資料
後任の面接官に「よろしく」と頼むだけでは、前の面接官と同じ見方はできません。次の資料を集めて渡します。
- 抜けた面接官が書いた評価メモ(手書きでも可)
- 直近で合格させた人と不合格にした人の応募書類と、それぞれの理由
- 面接でいつも聞いていた質問の一覧
- 入社後に活躍している人・早期に辞めた人の名前と、その理由についての現場の見立て
異動の場合は、本人がまだ社内にいます。 退職と違って、異動先に連絡すれば質問できます。異動の発令から着任までの間に30分でも時間をもらい、「合格にした決め手」「落とした理由」を聞き取っておくと、資料だけでは分からない判断の癖を拾えます。退職ですでに聞けない場合は、残った記録から逆算する方法があります。手順は前任者の合否判断の基準を、過去の選考履歴から復元するにまとめています。
新しく面接官になる人に渡す基本の3点(質問の型・評価の書き方・聞いてはいけない質問)は、現場の面接官を増やすときに、最低限渡すもので整理しています。この記事で挙げた資料は、それに加えて「その職種で前の面接官が何を見ていたか」を引き継ぐためのものです。
面接官を常に2名以上確保しておく体制
立て直しが終わったら、同じ止まり方を繰り返さない形に直します。目指すのは、どの職種にも面接に出られる人が2名以上いる状態です。
- 正と副を決める:職種ごとに主担当と副担当の面接官を置き、点検表の「代わりに面接できる人」欄を空欄にしない
- 交互に出る:副担当を名前だけにしないため、たとえば月に1回は副担当が面接に出る日をつくる
- 同席で育てる:新しく面接官になる人は、初めの数回を主担当の面接に同席してから一人で担当する
- 異動の情報を採用側に流す:面接官を務める社員の異動内示が出たら、採用担当か管理部門にも伝わるよう、人事異動の連絡経路に一行加える
- 年に1回は点検表を見直す:組織変更の時期にあわせて、職種別の表を更新する
4番目は見落とされやすい箇所です。異動は採用とは別の決裁で動くため、採用側が知らないまま面接官がいなくなる場合があります。面接官を外すこと自体は止められなくても、事前に分かっていれば後任の同席を前倒しできます。面接の日程調整そのものが止まっている場合は、面接の日程調整が止まったときの立て直し方もあわせて確認してください。
面接官の穴は、採用担当の不在と同時に起きることもあります。担当者の退職で採用全体が止まっている場合は、求人活動の復旧から後任の採用担当の育成、面接体制の見直しまでを採用担当引き継ぎ代行でまとめて引き受けています。媒体アカウント・契約・進行中の応募者を棚卸しする「採用ストップ診断」までは無料です。費用の目安は料金プランをご覧ください。