採用担当の退職時に回収すべきアカウントと情報
採用担当の退職が決まって引き継ぎの段取りを組んでいるとき、多くの会社が「業務のやり方」を教えてもらうことに時間を使います。ところが後任が実際に手を止めるのは、やり方がわからないからではなく、管理画面に入れない・契約が誰の名前なのかわからない・応募者の履歴書がどこにあるのか出てこないという、もっと手前の場所です。
この記事は、退職前の限られた時間で「アカウントと情報の所在」だけに絞って洗い出す手順をまとめたものです。引き継ぎ書に何を書くかは採用業務の属人化を解く。引き継ぎ書に必ず書く12項目、最終出社日までのスケジュールは採用担当の退職が決まったら、在籍中にやっておくことで扱っているので、ここでは重複を避け、名義と権限の移し方に集中します。
回収を「情報の引き継ぎ」と分けて考える
引き継ぎ書は、本人がいなくなった後でも読めば意味がわかります。一方でアカウントの権限や契約名義は、本人が在籍している間に操作しないと動かせないものが多くあります。退職後に「あのIDのパスワードを教えてほしい」と連絡しても、返信がもらえるかは相手の善意に依存します。転職先での業務が始まれば、返信は遅くなるのが自然です。
つまりアカウント回収は、引き継ぎ書の一項目ではなく、期限が固定された別作業として扱ったほうが取りこぼしが減ります。順番としては、後任探しよりも先に着手すべき部類です(採用担当が退職した直後にやるべき7つのことも参考になります)。
洗い出しは4つの層に分ける
対象を思いつくまま並べると必ず漏れます。次の4層に分けると、確認すべきものが機械的に出てきます。
| 層 | 具体例 | 本人がいないと詰まりやすい点 |
|---|---|---|
| 入口(認証) | 採用用メールアドレス、ログインID、二要素認証の受信端末、パスワード管理ツール | 認証コードが本人の携帯やメールに届き、後任が受け取れない |
| 契約 | 求人媒体、人材紹介、採用管理システム(ATS=応募者情報を管理するツール)、適性検査、Web面接ツール | 契約者名・請求先・自動更新日が社内に記録されていない |
| データ | 履歴書・職務経歴書、選考メモ、面接評価、応募者一覧、原稿の元データ | 個人PCやクラウドの個人アカウントに保管されている |
| 人の関係 | 紹介会社の担当者、媒体の営業担当、面接に協力していた社内の人、内定者・辞退者 | 連絡先が本人の携帯・名刺・個人のSNSにしか残っていない |
とくに「入口」は見落とされがちです。求人媒体の管理画面は、パスワードがわかっていてもログインできないことがあります。認証メールの宛先が前任者の個人アドレスになっていたり、二要素認証(ログイン時にコードを別経路で確認する仕組み)の受信先が本人の携帯番号になっていたりするためです。この詰まり方は求人媒体の管理画面に入れないときの確認手順で個別に解説しています。
「データ」の層は、費用の問題ではなく管理の問題として急ぎます。応募者の履歴書は個人情報です。退職者の個人端末や個人のクラウドストレージに残ったままだと、会社として所在を説明できない状態になります。削除を依頼するにしても、まず会社側に完全なコピーを移してからでないと、進行中の選考が消えます。
個人名義の媒体を法人名義に移す
小規模な会社では、求人媒体の申込みが担当者個人のメールアドレスや個人名義で行われていることが珍しくありません。移し方は媒体によって異なりますが、おおむね次の3パターンに整理できます。
| パターン | やること | 向いている状況 |
|---|---|---|
| 担当者情報の変更 | 媒体の担当者へ連絡し、アカウント内の登録者・通知先メールを会社の共有アドレスに変更する | 契約自体は法人で、登録メールだけが個人アドレスの場合 |
| 契約名義の変更 | 名義変更の書面を提出し、契約者・請求先を法人に切り替える | 契約者が個人名になっている場合 |
| 解約して再契約 | 現契約を終了し、法人名義で新規に契約し直す | 名義変更に対応していない、または残期間が短い場合 |
いずれも、媒体の営業担当に連絡すれば手続きの案内をもらえることが多いです。ただし「解約して再契約」を選ぶと、過去の応募者データや原稿が引き継がれない場合があります。掲載中の求人があるときは、再契約前に応募者一覧と原稿をダウンロードしておくのが安全です。
そもそもどの媒体と契約しているのかがわからない、というケースもあります。その場合は請求書や口座の引き落とし履歴から逆算する方法が有効です。手順は求人媒体の棚卸しで何を確認するかにまとめました。
退職前にしか頼めない操作
本人が在籍しているうちに、次の操作は「本人の手で」やってもらってください。後から代行できないものが含まれます。
- 管理画面の管理者権限を、会社の共有アカウントまたは後任に付与する(権限の追加は管理者本人しかできない仕様が多い)
- 二要素認証の受信先を、本人の携帯から会社の共有端末・共有アドレスに変更する
- 採用用メールアドレスがある場合は、パスワードを変更して会社が管理下に置く。個人アドレスで受けていた場合は転送設定を入れる
- 個人端末・個人クラウドにある応募者データを、会社の共有フォルダに移す
- 紹介会社・媒体の担当者に、担当交代の連絡を入れる(本人からの一報があると引き継ぎ後の連絡が通りやすい)
- 内定者・選考中の候補者に、後任へ引き継ぐ旨を伝える
最終出社日まで日数がない場合は、上の6つのうち上から3つを優先します。データは社内のどこかに痕跡が残ることがありますが、権限と認証は本人がいなくなると復旧に時間がかかります。
すでに退職してしまった場合
連絡が取れる状態であれば、まず「どの媒体と契約していたか」「認証メールの宛先」の2点だけを聞き取ります。細かい業務手順を聞くより、この2点のほうが後任の着手を早めます。
連絡が取れない場合は、請求書と受信メールから契約の存在を特定し、各媒体の窓口に法人としての権限回復を申し入れる流れになります。会社が契約者であることを示す書類(請求書、申込書の控えなど)を用意しておくと進みやすいことが多いです。引き継ぎ資料が何も残っていない状態からの再構築は引き継ぎメモが無いとき、何から手をつけるべきかで扱っています。
この作業を進める間も、掲載中の求人には応募が入り続けます。返信が止まった応募者は他社の選考へ移っていくため、アカウント回収と並行して、暫定でも応募受付の窓口を決めておくことをおすすめします(求人を止めている間に、応募者はどうなるのか)。
回収の目的は「次に同じことが起きない状態」
一度回収できたら、次の退職で同じ作業を繰り返さないために、共有アドレスでの登録・請求書の保管場所の固定・管理者権限を2名以上に付与、の3点を決めておくと負担が軽くなります。担当が1名の体制ではここが崩れやすいので、採用担当が一人しかいない会社のリスクを整理するも合わせてご覧ください。
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