契約更新のタイミングで求人媒体の価格だけ下げる交渉はできるか
採用担当が退職したあと契約を洗い出したら、更新日が目前の求人媒体が出てきた。前任者がいつどんな条件で契約したのか分からないまま、営業担当から「同条件で更新でよろしいですか」という連絡だけが届く。掲載内容を変えるほどの余裕はないが、金額はもう少し下げられないのか——という場面です。
この記事では、プランや掲載内容は据え置いたまま、更新のタイミングで価格だけを下げる交渉が現実的に通るのかを検証します。媒体の新規提案を評価する話ではなく、すでにある契約を下げる交渉に絞ります。
「価格だけ下げる」は、通ることもあるが形が変わりやすい
先に結論を書くと、更新時の価格交渉そのものは珍しい話ではありません。媒体や代理店の営業には継続率という評価軸があり、既存契約を維持するほうが新規開拓よりも手間がかからないため、更新の場面では一定の調整余地が用意されていることが多いです。
ただし、「同じ内容のまま単価だけ下がる」という形で返ってくるとは限りません。 定価を崩すと他社との整合が取れなくなるため、実務上は次のような形に置き換わることがよくあります。
| 返ってきやすい形 | 実質的な意味 | 注意点 |
|---|---|---|
| 掲載期間の延長 | 1週あたりの単価は下がる | 対応できる人が社内にいないと無駄になる |
| 上位プランを同額で提供 | 露出は増えるが支出は減らない | 予算を削りたい場合は目的に合わない |
| オプションの無償付与 | スカウト通数や原稿修正が増える | 翌年から有償に戻ることがある |
| 純粋な値引き | 支出が減る | 何かが外れていないか要確認 |
支出そのものを減らしたいのか、同じ金額でより多く出したいのか。ここを社内で決めてから話を始めないと、提案を受けても良し悪しを判断できません。採用担当が不在の会社では、まず前者(支出を減らす)を優先するほうが扱いやすいことが多いです。
交渉材料になるのは3種類の情報だけ
値下げの根拠として通用するのは、感想ではなく事実です。用意できるものは次の3つに集約されます。
| 材料 | どこから取るか | 伝え方の例 |
|---|---|---|
| 契約年数と年間支払額 | 過去1〜2年の請求書 | 「◯年継続していて年間◯万円を支払っています」 |
| 他媒体の見積もり | 他社に同条件で依頼して取得 | 「同じ予算帯で他社からも提案を受けています」 |
| 応募・採用の実績 | 管理画面の応募数、入社者の入社日 | 「前回の掲載では応募◯件、採用◯名でした」 |
このうち効きやすいのは3つ目です。応募1件あたりいくらかかったかを自社で計算して提示すると、「その単価では継続できない」という主張に具体性が出ます。
問題は、前任者が応募経路を記録していないと、この材料が手元にないことです。その場合は入社日から逆算する、管理画面の応募履歴を拾う、といった復元作業が先になります。手順はどの媒体から採れていたか分からないとき、次の契約更新をどう決めるかにまとめています。
他媒体の見積もりについては、持っていない見積もりを「ある」と言うのは避けてください。実際に問い合わせて取得したうえで使うほうが、話が具体的になり交渉も早く進みます。
切り出すのは更新日の1〜2ヶ月前
タイミングを外すと、内容の良し悪し以前に話が動きません。目安は更新日の1〜2ヶ月前です。理由は2つあります。
ひとつは、自動更新の停止期限に間に合わせるためです。契約書には「更新日の◯日前までに申し出がなければ自動更新」と書かれていることが多く、この期限を過ぎると「今回はこのまま、次回に」と流れやすくなります。期限の読み方は求人媒体を解約したいとき、途中解約できるのかで扱っています。
もうひとつは、営業側が条件を出せる時期があるためです。四半期や期末の締めに向けて調整の余地が広がることがある一方、更新日の直前は稟議を回す時間が残っていません。
切り出し方は、値引きを要求する文面より、判断材料を求める文面のほうが摩擦が少ないことが多いです。
前任の担当者が退職し、現在は社内で契約を見直しています。◯月◯日が更新日と認識しています。継続の可否を検討したいため、次回更新分のお見積もりと、前回掲載の応募実績をいただけますか。あわせて、掲載内容は現状のままで費用を抑える選択肢があればご提案ください。
「担当が退職した」ことは隠さなくて構いません。ただし、不在で困っていると強調するより、社内で見直しているという言い方のほうが主導権を保ちやすくなります。
下がった見積もりは、項目単位で前回と並べる
値下げ回答が来たら、金額の合計だけを見て判断しないでください。総額が下がる代わりに、これまで付いていたものが外れているケースがあります。外れやすいのは次のような項目です。
- スカウトの送信可能通数
- 掲載中の原稿修正の回数や対応速度
- 写真・動画の撮影や取材
- 検索結果での表示に関するオプション枠
- 掲載開始日の優先手配
- 営業担当による運用サポートやレポート
見分け方は単純で、前回と今回の見積書を項目単位で左右に並べます。今回だけ「一式」「基本プラン」とまとめられている行があれば、内訳を文字で出してもらってください。口頭で「これまでと同じです」と言われた内容も、メールに残しておくと後で確認できます。
判断の基準は、外れた項目を後任や社内の誰かが手作業で埋められるかどうかです。スカウト通数が減る、原稿修正が有償になるといった変更は、採用担当が不在の会社ほど効いてきます。金額が下がっても社内の手間が増えるなら、実質的には値下げになっていないことがあります。
下げる交渉より、止める判断が先に来る場合もある
そもそも交渉に労力をかけるべき契約かどうかも点検してください。次のような状態なら、単価を下げるより契約を一度手放すほうが筋が通ります。
- 前回の掲載で応募がほとんど入っていない
- 応募が来ても対応できる人が社内にいない
- 同種の媒体を複数契約していて、どれが効いたか分からない
- 募集職種そのものを当面止める予定がある
応募に対応できない状態で掲載を続けると、費用は出ていく一方で応募者は離れます。 値下げ交渉は「掲載を続ける前提」の話なので、続ける前提が崩れているなら先に整理が必要です。どの契約が残っているかの洗い出しは求人媒体の棚卸しで何を確認するかにまとめています。
なお、代理店経由の契約では、代理店が媒体から仕入れる価格が別にあるため、下げ幅の出方が直接契約と異なります。誰と交渉しているのかは先に確認しておいてください。
交渉を「毎年できる状態」にしておく
一度下げられても、翌年に前任者と同じ状況——契約内容も実績も誰も把握していない状態——に戻れば、また言い値で更新することになります。更新交渉を続けられるようにするには、契約更新日の一覧、年間の支払額、掲載ごとの応募数と採用数が、担当者の記憶ではなく共有された場所に残っている必要があります。
この記録づくりは、後任の採用担当が最初に覚える仕事としても向いています。経験者でなくても、請求書と管理画面を突き合わせる作業から入れば、媒体ごとの費用対効果を自分の言葉で説明できるようになります。
契約更新の判断を急ぎながら、後任の採用担当も探さなければならない状態であれば、外部に預ける選択肢もあります。株式会社Talencoの採用担当引き継ぎ代行は、止まった求人活動の復旧、後任の採用、引き継ぎと業務改善までを一続きで行うサービスです。後任は採用担当の経験者でなくても構いません。当社が育てたうえで引き継ぎます。
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