定額制・掲載し放題型の求人サービスは担当不在の会社に向くか
採用担当が辞めたあと、媒体の営業から「月額定額で何本でも求人を出せます」という提案を受けることがあります。職種ごとに掲載料がかかる従来型より安く見えますし、人がいない今だからこそ、まとめて出しておけば応募が入ってくるのではないかとも思えます。
ただ、定額制・掲載し放題型は「出す側に手が足りている」ことを前提に設計されているサービスです。担当が不在の会社が同じ感覚で契約すると、求人の本数だけが増え、応募の受け口が追いつかないという状態になりやすくなります。ここでは、担当がいない前提でこの形態をどう評価するかを整理します。
定額制・掲載し放題型とは何か
呼び方はサービスによって違いますが、おおむね次のような仕組みです。
- 月額または年額の固定費を払う
- 契約期間中は、決められた枠の範囲で求人原稿を何本でも掲載・差し替えできる
- 応募が何件来ても、採用が決まっても追加費用は発生しない(成功報酬がない)
費用が読めるのは明確な利点です。採用が決まるたびに数十万円単位の手数料が出ていく人材紹介と比べると、予算の立て方は楽になります。一方で、応募が来ても来なくても同じ金額が出ていくため、運用が止まった瞬間に「払っているだけ」の状態になります。担当不在の会社にとっては、ここが最大の論点です。
原稿を増やすほど、応募の経路が散る
掲載し放題と聞くと、職種ごと・拠点ごとに原稿を分けて出したくなります。実際、細かく分けたほうが検索に引っかかりやすくなることはあります。問題はその後です。
原稿が増えると、確認すべき管理画面の画面数、通知メールの通数、応募者の問い合わせ経路が同時に増えます。担当が1人いれば吸収できる増分でも、兼任者が片手間で見る体制では取りこぼしが出ます。そして求人媒体の多くは、応募への返信状況や掲載の更新頻度が検索表示に影響する仕組みを持っています。返信が止まった原稿は、露出も落ちていくことがあります。
つまり、原稿を増やす → 返信が追いつかない → 表示が落ちる → 応募がさらに減る、という順番で効果が落ちていきます。媒体を複数並行させたときと同じ構造が、1社の契約の中で起きるわけです。媒体数そのものの絞り込みについては担当が不在の間、求人媒体は1つに絞るべきかで整理しています。返信の遅れが選考結果に与える影響は応募者への返信速度が採用結果をどう変えるかをご覧ください。
向く条件と、向かない条件
同じサービスでも、社内の状態によって評価は変わります。
| 向きやすい | 向きにくい | |
|---|---|---|
| 募集職種の数 | 1〜2職種に絞れている | 5職種以上を同時に出したい |
| 応募対応 | 当番が決まっていて、平日は誰かが見る | 「気づいた人が返す」運用 |
| 面接枠 | 面接官の空き枠が週に確保されている | 面接の日程調整から詰まっている |
| 採用の予定人数 | 継続的に複数名採る(店舗・現場職など) | 年に1〜2名の専門職 |
| 社内の体制 | 原稿を直せる人が1人いる | 管理画面に入れる人がいない |
判断の軸は「本数」ではなく「対応できる応募件数」です。掲載し放題の価値は出せる原稿の数ではなく、応募が継続的に入ってくる状態をつくれるかどうかで決まります。週に何時間を採用に割けるのかが分からない場合は、先に採用業務は月何時間かかるのか、測ってから後任を決めるの手順で実時間を概算してから契約に進むほうが安全です。
採用を1〜2名で終える予定なら、応募が来た分だけ課金される形態や、決まったときだけ費用が出る形態のほうが総額を抑えられる場合があります。一方、現場職を毎月のように採る会社では、定額制が割安になることもあります。ここは自社の採用人数次第で、どちらが正解とは言えません。
契約前に必ず確認する5か所
定額制は「安いか高いか」より「いつ止められるか」で損得が変わります。見積書や申込書の次の箇所を確認してください。
| 確認箇所 | 見るポイント |
|---|---|
| 最低利用期間 | 6ヶ月・12ヶ月などの縛りがあるか。期間中の解約可否 |
| 契約の更新方法 | 自動更新か。停止の申し出期限は何日前か |
| 中途解約の扱い | 残期間分の支払い義務、違約金、返金の有無 |
| 掲載枠の上限 | 「無制限」の実態。同時掲載数や差し替え回数の制限 |
| 原稿作成の範囲 | 初回だけ制作してもらえるのか、修正は毎回自社か |
特に見落とされやすいのが、自動更新の停止期限です。担当が不在の会社では、更新日を誰も把握していないまま次の1年が始まることがあります。契約書の該当条項を見つけたら、更新日と申し出期限をカレンダーに入れておくと取りこぼしません。解約の進め方そのものは求人媒体を解約したいとき、途中解約できるのかにまとめています。
「掲載し放題」の表現にも幅があります。原稿の本数は無制限でも、検索結果の上位に出る枠は別料金というケースや、同時掲載できる職種数に上限があるケースがあります。営業担当に「今の体制で、月にどれくらいの応募を想定していますか」と根拠を聞いたうえで、応募1件あたりいくらになるかに換算して他の形態と並べると比較しやすくなります。
契約するなら、最小構成から始める
定額制を選ぶ場合でも、担当が不在のうちは本数を絞って始めるほうが結果につながりやすくなります。
- 今月どうしても採りたい職種を1〜2つに決める
- 応募の通知先を個人のメールではなく共用アドレスに向ける
- 平日に1回は必ず受信を確認する当番を決める(曜日で分担してよい)
- 2〜3週間運用して、応募件数と返信の遅れを見てから原稿を追加する
この順番で進めると、応募が増えすぎて止まる事態を避けられます。逆に、契約初月に全職種を一斉掲載するのは、担当がいない会社では避けたほうがよい進め方です。
定額制か従量課金かという形態の違いは、本来は採用担当がいる前提で検討するものです。担当が抜けた状態では、どの形態を選んでも「応募を受けて返す人」がいなければ費用だけが出ていきます。まずは今の契約で何が動いていて、何が止まっているのかを把握することが先になります。
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