求人票に年齢・性別を書いてよいか。前任者の原稿に残りやすい表現
採用担当が辞めたあと、求人を再開しようとして前任者の原稿をそのまま媒体に入稿する。これは手間が少なく、最初の一手としては妥当です。ただし古い原稿には、「30代までの方が活躍中」「女性スタッフ多数」「体力に自信のある男性歓迎」といった、今は載せられない、あるいは媒体審査で差し戻される表現が残っていることがあります。前任者が書いた当時は通っていた場合もありますし、単純に書いてはいけないと知らずに書かれていた場合もあります。
この記事では、労働条件の書き方全般ではなく、年齢・性別・国籍に関する「書けない表現」だけに絞って整理します。賃金や就業場所の明示項目は求人票の労働条件の書き方が今のルールに合っているかで扱っているので、そちらとあわせて点検してください。
制限の根拠は、属性ごとに別の法律にある
年齢・性別・国籍は、まとめて「差別はだめ」と一括りに覚えられがちですが、根拠となる法律が別々です。例外の認められ方も違うため、分けて理解しておくと判断しやすくなります。
| 属性 | 主な根拠 | 原則 |
|---|---|---|
| 年齢 | 労働施策総合推進法(旧・雇用対策法)9条 | 募集・採用で年齢にかかわりなく均等な機会を与える。年齢制限は原則不可 |
| 性別 | 男女雇用機会均等法5条 | 募集・採用で性別を理由とする差別的取扱いを禁止 |
| 国籍・信条・社会的身分 | 職業安定法3条 | 職業紹介・募集等で差別的取扱いをしてはならない |
いずれも「応募の入口を属性で閉じないこと」を求めている点は共通しています。採用後に誰を選ぶかではなく、募集段階で特定の属性を排除する表記が問題になります。
年齢制限が例外として認められる場合
年齢については、厚生労働省令(労働施策総合推進法施行規則)で例外が限定列挙されています。代表的なものを挙げると、次のような場合です。
- 定年年齢を上限として、その年齢未満の方を期間の定めのない契約で募集する場合
- 労働基準法など他の法令で年齢制限が定められている業務の場合(深夜業や危険有害業務など)
- 長期勤続によるキャリア形成を図るため、職業経験を問わず若年層を期間の定めのない契約で募集する場合
- 特定の職種で特定の年齢層が著しく少なく、技能やノウハウの継承が必要な場合
- 芸術・芸能分野で表現上の真実性が求められる場合
- 60歳以上の方や、国の施策の対象となる特定年齢層に限定して募集する場合
例外に該当するかどうかは条件が細かく、たとえば3つ目の「長期勤続によるキャリア形成」は、職業経験を不問にすることや、新卒者と同等の処遇で募集することなどが前提になります。前任者の原稿に「35歳以下」とあったとしても、その条件を満たしていないまま書かれているケースがあります。自社が例外に当たると自己判断せず、所轄のハローワークに原稿を見せて確認するのが確実です。
「女性スタッフ活躍中」はなぜ引っかかるのか
性別については、「女性のみ」「男性歓迎」のような直接的な限定だけでなく、応募できる性別が限られていると読める表現が問題になります。職種名も同様で、「ウェイトレス」「営業マン」のように一方の性を示す語は、「ホールスタッフ」「営業職」のような中立的な名称に置き換えます。
迷いやすいのが「女性スタッフ活躍中」です。これは職場の構成を説明する事実の記載として書かれることが多く、募集条件そのものを限定しているわけではありません。ただし、読み手に「男性は対象外では」と受け取られる余地があり、媒体の審査基準では修正を求められることがあります。どうしても職場の雰囲気を伝えたいなら、「現在のメンバーは20代から50代まで、男女ともに在籍しています」のように、排除の含みが出ない書き方にするほうが安全です。
性別の例外としては、警備など防犯上の要請がある職務、演劇等で表現上の必要がある場合、労働基準法の母性保護規定に関わる業務、女性の比率が低い職種で女性を優先するポジティブアクションなどが認められています。こちらも該当範囲は狭いと考えてください。
言い換えは「任せる業務」と「必要な条件」で書く
年齢や性別を書きたくなるとき、本当に伝えたいのは属性ではなく業務の実態であることがほとんどです。そこを事実で書き直すと、法令上の問題が消えるうえに、原稿としても具体的になります。
| 残りやすい表現 | 本当に言いたかったこと | 言い換えの例 |
|---|---|---|
| 30代までの方 | 経験不問で長く育てたい | 未経験から始められます。業務経験は問いません |
| 体力に自信のある男性 | 重量物の運搬がある | 20kg程度の資材を1日10回ほど運ぶ作業があります |
| 女性スタッフ活躍中 | 細かい作業が中心で女性が多い | 手元の検品作業が中心です。立ち仕事はほぼありません |
| 若くて明るい方 | 来客対応がある | 1日20名ほどの来客対応と電話取次を担当します |
| 日本人の方 | 日本語でのやり取りが必要 | 顧客と日本語で電話応対する業務があります |
国籍についても同じで、「日本国籍の方」ではなく、業務上必要な日本語の水準や、就労可能な在留資格を持っていることを条件として書きます。書き方の全体像は求人原稿を刷新するときに直す7か所とあわせて見ると整理しやすくなります。
掲載前に、行単位で点検する
媒体に出してから差し戻されると、掲載開始が数日ずれます。入稿前に原稿を上から読み、次の観点で引っかかる行に印をつけてください。
- 数字と「歳」「代」がセットで出てくる行(応募条件欄だけでなく、仕事内容やキャッチコピーにも紛れています)
- 「男性」「女性」「主婦」「ママ」「〜マン」「〜ガール」を含む行
- 「若手」「シニア」「フレッシュ」など年齢層を示唆する形容
- 「体力」「力仕事」「腕力」など、性別を連想させて実際の負荷量が書かれていない行
- 「日本人」「国籍」に触れている行
- 写真・動画のキャプションや、社員インタビューの肩書に年齢が入っていないか
印をつけた行は、上の表の要領で「任せる業務」と「必要な条件」に書き換えます。年齢の例外に当たると判断して残す場合は、なぜ該当するのかを原稿の近くにメモとして残しておくと、後任や次の更新担当が同じ検討を繰り返さずに済みます。この種の判断の記録は、引き継ぎ書に残す情報の一部でもあります(採用業務の属人化を解く。引き継ぎ書に必ず書く12項目)。
なお、判断に迷う表現については、所轄のハローワークの求人窓口、都道府県労働局、顧問社労士などに確認してください。媒体の営業担当も審査基準には詳しいので、入稿前に原稿を見てもらうだけで弾かれる箇所が分かることがあります。
原稿の点検だけで止まらないために
表現の修正は半日もあれば終わります。問題は、その先の応募対応と選考を誰が回すかです。採用担当が不在のまま原稿だけ直して掲載を再開すると、応募が入った時点で再び止まります。
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