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応募条件を緩めるとき、現場の合意をどう取るか

求人を出し直しても応募が来ない。媒体の担当者からは「経験年数の条件が厳しいのでは」と言われる。ところが現場の部長に相談すると、「未経験を入れられても困る」「教える余裕はない」と返ってきて、話がそこで止まる。採用担当が不在のまま募集を預かっている管理部門の方から、この状態の相談を受けることがあります。

このとき、条件を下げるべきかどうかを議論しても結論は出にくいものです。現場が抵抗しているのは条件の文言ではなく、「自分たちの負担が増える」「結局使えない人が来る」という見通しの部分だからです。この記事では、応募条件の緩和を現場と合意するための、仕分けの仕方と進め方を整理します。

現場が反対しているのは、条件そのものではない

「経験3年以上」を「1年以上」に下げる提案に現場が首を縦に振らないとき、反対の中身はたいてい次のどれかです。

ひとつは教育負担です。経験の浅い人が入れば、誰かが時間を使って教えることになります。その時間が誰の工数から出るのかが決まっていないと、現場は反対する側に回りやすくなります。ふたつめは品質やミスへの不安。三つめは既存社員との釣り合いで、同じ給与で経験の浅い人を入れることへの説明がつかないという話です。

条件の数字を議論する前に、この3つのどれが引っかかっているのかを現場に言わせるところから始めると、話が進みやすくなります。 「反対の理由を一つだけ挙げるとしたら何ですか」と聞くだけでも十分です。

緩める候補を「入社後に教えられるか」で仕分ける

次に、求人票に並んでいる要件を一つずつ分解します。軸はシンプルで、入社後に社内で教えられるかどうか、教えられるとして何ヶ月かかるか、教える人が社内にいるかの3点です。

要件の例入社後に教えられるか扱い
業界・商材の知識教えられることが多い緩める候補
自社で使う業務システムの操作教えられることが多い緩める候補
同職種の実務経験「3年以上」年数そのものは代替できないが、業務の中身で言い換えられる場合がある書き換えの候補
一般的な資格(実務に必須でないもの)入社後取得が可能なことが多い緩める候補
法令上の必置資格・運転免許など業務に不可欠なもの教えられない/取得に時間がかかる緩めない
夜勤・休日出勤・転勤の可否本人の生活条件のため変えられない緩めない
マネジメント経験育成に年単位かかることが多い原則緩めない

この表を現場と一緒に埋めること自体が合意形成になります。現場は「全部必要だ」と言いがちですが、一行ずつ「これは入社後に誰かが教えられますか」と聞いていくと、教えられるものと教えられないものは分かれます。分かれた時点で、緩める対象は現場が自分で選んだ項目になります。

なお、年齢や性別に関する表記はそもそも書けないことが多く、これは緩和の議論とは別の話です。前任者の原稿に残っている場合は先に直しておきます。

現場に出すのは、3列の表

仕分けができたら、現場に提示する紙はこの形にします。

緩める要件入社後に誰が何を教えるか想定される追加の教育時間
業界経験不問営業部長が商材の基礎を説明最初の2週間で計6時間程度
システム操作は入社後習得既存メンバーがマニュアルで指導初月に週2時間程度
実務経験1年以上に変更配属先の先輩がOJT3ヶ月間、週3〜4時間程度

数字は自社で見積もった目安で構いません。重要なのは、緩和によって発生する負担を会社側が先に数字で示し、「この時間は業務時間として扱う」と約束することです。負担の総量が見えないまま「採用のために譲ってくれ」と頼むと、現場は際限のない要求として受け取ります。

あわせて、OJTを担当する社員の既存業務をどれだけ減らすかも、同じ紙に書いておくと話が早く進みます。

全面的に変えず、1人目だけ下げて試す

現場の合意が取りにくいときは、恒久的な方針変更にしないことです。進め方としては次の形があります。

  • 今回の募集1名分に限って条件を下げる
  • 期間を区切る(例:2ヶ月掲載して応募状況を見る)
  • 入社後3ヶ月時点で、受け入れ側に負担感と立ち上がり具合を確認する
  • その結果を見て、次回以降も同じ条件で出すかを決め直す

「一度決めたら戻せない」と思われると反対は強くなります。試行であること、振り返りの時期を決めてあることを先に伝えると、現場は判断を保留したまま協力しやすくなります。

ここで同時に決めておきたいのが、下げた条件で来た応募者を誰が合否判断するかです。基準を緩めた直後は面接官ごとに評価が割れやすく、「条件を下げたのに全員落ちる」という状態が起きます。見る項目を事前に揃えておく方法は現場の面接官によって評価がばらつくときの揃え方にまとめています。また、誰がどの段階で決めるのかが曖昧だと、合意した条件が面接の場でなし崩しになります。採用の可否を誰が決めるかを、紙に1枚で決めておくもあわせて確認してください。

緩める前に、条件以外を疑ったか

応募が来ない原因が条件にあるとは限りません。掲載が止まっている、原稿の職種名が社内用語になっている、応募窓口が前任者の個人アドレスのままになっているといった理由で応募が入っていないことも多くあります。

条件を下げるのは現場に負担をかける判断なので、費用も負担もかからない箇所を先に直したうえで提案したほうが、合意は得やすくなります。確認の順番は応募が来ない求人を立て直す優先順位で整理しています。

合意したあと、現場に返すもの

条件を緩めた後は、応募数や面接設定数の変化を現場に戻します。協力した側は「あれで何か変わったのか」を知りたがるためです。週に一度、応募数と面接予定だけを共有するだけでも、次に条件を見直すときの話が通りやすくなります。見通しの伝え方は現場から「いつ採用できるのか」と聞かれたときの答え方も参考になります。


条件の見直しも、現場との調整も、本来は採用担当が間に入って進めていた仕事です。その担当が抜けた状態で、管理部門や社長が片手間に進めようとすると、どうしても止まりやすくなります。

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