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引き継ぎと属人化

求人票の労働条件の書き方が今のルールに合っているか

採用担当が抜けたあと、掲載を再開しようと管理画面を開くと、数年前に前任者が作った原稿がそのまま残っていることがあります。文面は読める。職種名も給与も書いてある。だからそのまま「掲載再開」を押したくなります。

ただし求人票に書くべき労働条件の項目は、ここ数年で追加されています。前任者が原稿を作った当時は書かなくてよかった行が、今は書いていないと不足になっている場合があります。この記事は法律の解説ではなく、手元の原稿を開いて「この行が足りていないか」を潰していくための確認手順です。原稿の読みやすさや訴求の作り込みは求人原稿を刷新するときに直す7か所で扱っているので、ここでは条件表示の抜けだけに絞ります。

なぜ「前と同じ原稿」で足りなくなるのか

労働条件の明示に関するルールは、雇用契約を結ぶときだけでなく、求人を出す段階にも及びます。2024年4月には、募集時に明示する事項として「従事すべき業務の変更の範囲」「就業場所の変更の範囲」「有期労働契約を更新する場合の上限の有無と内容」が加わりました。それ以前から、固定残業代を採用している場合の内訳表示や、受動喫煙を防止するための措置の明示も求められています。

つまり、原稿を最後に触ったのが数年前なら、当時は存在しなかった項目が丸ごと抜けている可能性があるということです。媒体によっては入力欄が用意され、埋めないと公開できない仕様になっていることもありますが、フリーテキストの「仕事内容」欄に前任者が長文を流し込んでいる場合、欄自体が空のまま通っていることがあります。

なお、個別の記載が要件を満たすかどうかの最終判断は、所轄のハローワーク・都道府県労働局や、顧問の社会保険労務士に確認してください。この記事は「確認すべき行の一覧」までを担当します。

原稿を開いて、この6行を順に見る

管理画面の求人編集画面を開き、上から順に照合します。1件あたり15分程度で終わります。

確認する行何が書いてあれば通りやすいか抜けやすい理由
就業場所雇入れ直後の場所と、変更の範囲(将来的に配置転換があり得る範囲)昔の原稿は住所1行だけで終わっている
業務内容雇入れ直後の業務と、変更の範囲「業務内容」と「変更の範囲」が別項目という認識がない
契約期間期間の定めの有無。有期なら更新の有無、更新の判断基準、更新上限上限の記載が2024年以降の追加項目
賃金基本給の額。固定残業代がある場合は内訳「月給25万円〜(固定残業代含む)」で止まっている
試用期間期間の有無と長さ、期間中の条件が異なる場合はその内容本採用後の条件だけ書いている
受動喫煙対策屋内禁煙、喫煙専用室設置など、実態に合った措置欄が新設されたが未入力のまま

以下、特に前任者の原稿で崩れやすい3項目を掘ります。

就業場所と業務の「変更の範囲」

古い原稿は「勤務地:東京都◯◯区(本社)」で終わっていることがほとんどです。今は、入社直後の場所に加えて、将来変わり得る範囲まで書く必要があります。

書き方は、実態に合わせて狭くも広くもできます。転勤がない会社なら「変更の範囲:変更なし」と書けば足ります。支店が複数あるなら「変更の範囲:会社の定める国内の事業所」といった書き方になります。ここで注意したいのは、実態より広く書いておけば安心、という発想は選考に跳ね返ることです。転勤の予定がないのに「全国の事業所」と書けば、転居を避けたい応募者は応募をやめます。実際に異動があり得る範囲を、現場の責任者に確認してから決めてください。

業務も同じ構造です。「雇入れ直後:営業事務/変更の範囲:会社の定める事務業務全般」のように、直後と範囲を分けて書きます。

有期契約の更新上限

契約社員やパートの募集で見落としやすいのがここです。期間の定めがあるなら、更新の有無だけでなく、更新回数や通算契約期間の上限を定めている場合はその内容も示します。上限を設けていないなら、社内の運用がどうなっているかを先に確認してください。前任者しか知らなかった運用ルールが口頭で存在していた、というケースもあります。この種の「本人の頭の中にしかなかった決めごと」の洗い出しは、採用業務の属人化を解く。引き継ぎ書に必ず書く12項目と合わせて進めると漏れにくくなります。

固定残業代の内訳

固定残業代(みなし残業代)を採用しているなら、次の3点をそろえて書きます。

書く要素記載例
固定残業代を除いた基本給の額基本給 220,000円
固定残業代の額と、それが何時間分か固定残業手当 45,000円(時間外労働20時間分)
超過分の扱い20時間を超える時間外労働分は別途支給

「月給265,000円(固定残業代含む)」という1行だけで済ませている原稿は、この3要素のうち2つが欠けています。応募者側から見ても、基本給がいくらなのか分からない求人は比較の土俵に乗りません。給与の額そのものをどう決めるかは採用担当の給与相場と、後任にいくら払うべきかで触れています。

媒体ごとに直すのではなく、原本を1つ作る

複数媒体に出している会社ほど、直す作業が分散します。媒体Aは直したが媒体Bとハローワークは古いまま、という状態は起きやすく、条件が食い違えば応募者からの問い合わせや、入社後の認識違いにつながります。

手順としては、まず自社の労働条件を1枚のシート(職種ごとに上記6行を埋めたもの)にまとめ、それを各媒体の入力欄に転記していく形が扱いやすくなります。原本があれば、次に募集を立てる人が経験者でなくても同じ内容を再現できます。今どの媒体に何が出ているか分からない場合は、求人媒体の棚卸しで何を確認するかの手順で契約と掲載状況を先に把握してください。

更新のタイミングは、次の3つを決めておくと形骸化しにくくなります。

  • 給与改定や就業規則の変更があったとき
  • 新しい職種を募集するとき
  • 年に1回、時期を決めて全職種を見直すとき

判断に迷ったときの確認先

記載内容がルールに合っているかを社内だけで断定するのは難しい場面があります。次の順で確認するのが現実的です。

  1. 利用中の求人媒体の担当営業に、入力欄の仕様と必須項目を聞く
  2. ハローワークに出しているなら、所轄の窓口で記載内容を確認してもらう
  3. 顧問の社会保険労務士がいれば、契約書の雛形と求人票の記載を突き合わせてもらう

特に3は重要です。求人票と、入社時に渡す労働条件通知書・雇用契約書の内容が食い違っていると、入社直前や入社後にトラブルになりやすくなります。採用担当が不在の期間は、この突き合わせをする人がいなくなりがちです。

直す時間が取れないまま掲載を止めている場合

条件表示の見直しは、やること自体は難しくありません。ただし、担当者が抜けた直後の会社では「原稿を直す前に、管理画面に入れない」「そもそも今どこに出ているか分からない」という段階で止まっていることが多くあります。掲載を止めている間も応募者の動きは進むので、原稿の完成度を上げる前に、まず窓口と掲載の状態を戻す順番になります。

Talencoの「採用担当引き継ぎ代行」は、止まった求人活動の復旧、後任の採用担当の採用、引き継ぎと業務改善までを4ヶ月で進めるサービスです(標準プラン200万円・税別、広告費込み、分割可)。求人原稿の条件表示の整備も、復旧作業の一部として一緒に進めます。後任は採用担当の経験者でなくても構いません。当社が実務を回しながら育てて引き継ぎます。

進め方は採用担当引き継ぎ代行、費用は料金プランをご覧ください。ご相談はLINE公式から受け付けています。媒体アカウント・契約・進行中の応募者を棚卸しする「採用ストップ診断」までは無料です。

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