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費用と比較

中途採用で入社祝い金・支度金を出すべきか

採用担当が辞めて求人の応募が細ってくると、「入社したら30万円出す、と書けば応募が来るのではないか」という案が社内で出ることがあります。給与テーブルを触らずに済み、採れなければ1円も出ていかないので、経営側には魅力的に見える案です。

ただ、入社祝い金や支度金は、出し方を誤ると「すぐ辞める人を呼び込む」「既存社員が不満を持つ」「辞めた人に返してと言えない」といった問題を抱えます。この記事では、祝い金を給与の引き上げ・媒体費の増額と同じ表に並べて比べ、出すならどう設計するかを整理します。

祝い金を検討する前に、応募が来ない理由を確かめる

祝い金は「条件」の一部です。応募が来ない原因が、求人が検索で表示されていない(露出)、仕事内容が伝わっていない(原稿)にある場合は、祝い金を足しても届く人数は変わりません。お金をかける前に、費用をかけずに直せる箇所から点検する順番は応募が来ない求人を立て直す優先順位にまとめています。

また、提示している給与そのものが同業同エリアの水準より低い場合、祝い金は一時的な目くらましになることがあります。入社後の毎月の手取りは変わらないため、比較して入った人が早めに見切りをつける場合があるからです。給与水準が相場から外れていないかは募集職種の給与が相場に合っているか、自社で調べる方法の手順で先に確かめてください。

給与・媒体費・祝い金を同じ表で比べる

3つは「応募を増やすためにお金を使う」点では同じですが、費用の性質がまったく違います。

比較の観点給与を上げる媒体費を増やす入社祝い金・支度金
費用の性質毎月続く固定費掲載期間ごとの支出入社時の一回きり(分割も可)
採れなかった場合費用は発生しない掲載した分は発生する費用は発生しない
後から取り消せるか下げるのは難しい次の期間から止められる次の募集から止められる
既存社員への影響逆転が起きると不満が出やすいほぼない入社時期による不公平感が出る
入社後の定着への効き方毎月の待遇として残る関係しない受け取った後は効きにくい

祝い金の最大の利点は、固定費にならず、採れたときだけ発生することです。たとえば、仮に月給を2万円上げると年間24万円、その人が3年在籍すれば72万円になります(賞与や会社負担の社会保険料を含めない単純計算です)。同じ人に祝い金30万円を一度払う場合と比べると、総額の差は在籍年数が延びるほど開きます。しかも給与は一度上げると下げにくく、その職種の次の採用や既存社員の昇給の基準にもなります。

一方で、祝い金は入社した瞬間に効果を使い切ります。毎月の待遇を重視して転職先を選ぶ人にとっては、判断材料として弱い場合があります。「入社のきっかけ」にはなっても「居続ける理由」にはならない、という性質を前提に置いておくと判断を誤りにくくなります。

祝い金が向きやすい場面・向きにくい場面

向きやすいのは、給与は相場並みで、あと一押しが欲しい場面です。転居を伴う採用で引っ越し費用が応募のハードルになっている場合や、在職中の候補者が入社日までの空白期間に不安を抱えている場合は、支度金という名目に意味が出ます。

向きにくいのは、給与が相場より低いのを埋め合わせたい場面と、早期退職が続いている職種です。後者では、祝い金目当ての応募が混じった場合に、同じ穴に人を入れ続けることになりかねません。

早期退職時の返還条件は、「返させる」より「後で払う」

祝い金を出す会社が最初に心配するのが、「受け取ってすぐ辞められたらどうするか」です。ここで「入社後◯ヶ月以内に退職した場合は全額返還」と書きたくなりますが、賃金として支払ったものの返還を求める取り決めは、内容によっては労働基準法上の問題(違約金や賠償額の予定の禁止など)との関係で争いになる場合があります。返還条項を付けるなら、文言を社労士に確認してもらってください。

実務上の扱いやすさで考えると、返還を求めるより、支給時期を後ろにずらす設計のほうが揉めにくくなります。

支給の設計応募者への見え方早期退職した場合注意点
入社時に一括最も分かりやすい回収は返還条項頼み返還条項の有効性に論点が残る
入社時と試用期間満了後に分割分かりやすさを保てる後半分は支給前に退職となる支給日と在籍条件を書面で明示する
一定期間在籍した後に一括訴求力はやや下がる支給前の退職なら発生しない「祝い金」より定着手当に近い性質になる

どの設計でも、支給日・支給額・在籍条件を労働条件通知書や合意書に書き、本人の署名をもらっておくことが前提です。採用担当が不在の会社では、もう一つ注意点があります。分割や後払いにすると「誰がいつ払うか」を管理する人が必要になることです。支給予定日を応募者管理表や給与担当のカレンダーに載せておかないと、払い忘れという、返還より深刻な揉め事を招くことがあります。

既存社員との不公平感をどう扱うか

祝い金で一番見落とされやすいのが社内への影響です。既存社員は祝い金なしで入社しています。新しく入った人の口から「入社祝いで30万円もらった」と伝われば、「自分たちには何もないのか」という声が出る場合があります。

手当ての方法は大きく3つあります。

  • 対象を限定する理由を言える形にする:転居を伴う人に限る支度金、資格保有者に限るなど、条件と理由を説明できるようにしておく
  • 社員紹介の報奨金と並べて設計する:既存社員が紹介して入った人にも同じ祝い金が出るなら、社員側も恩恵を受ける形になる
  • 期間を区切って打ち出す:「今期の募集に限る」と決めておけば、恒常的な待遇差には見えにくい

給与を上げる案の場合は、不公平感が一時金よりも強く、長く残ります。提示給与が既存社員を上回ってしまったときの整え方は求人の提示給与が既存社員を上回っているとき、どう整えるかで扱っています。祝い金はその逆転を避けたいときの代替案として検討する価値がある、という位置づけです。

求人票への書き方と、税務・労務上の扱い

求人票に祝い金を書く際は、支給条件を省いて金額だけを目立たせると、応募者との認識違いの原因になります。「入社時◯万円、試用期間満了時◯万円(各時点で在籍している方に支給)」のように、条件まで書くのが基本です。媒体ごとに掲載基準があり、表記が制限される場合もあるため、掲載前に媒体の営業担当に確認してください。

また、祝い金を給与として源泉徴収や社会保険料の対象にするのか、支度金を引っ越し費用などの実費精算として扱えるのかで、本人の手取りも会社の処理も変わります。この判断は自社で決めず、税理士・社労士に確認してから求人票の金額を決めてください。手取り額を前提に応募した人とのトラブルを避けるためです。

まとめ:祝い金は「最後の一押し」として使う

入社祝い金・支度金は、固定費にならず、採れたときだけ発生するという点で、給与の引き上げより取り消しやすい手段です。ただし、応募が来ない原因が露出や原稿、給与水準にある場合は効きにくく、支給条件の管理や社内への説明という手間も増えます。出すなら、原因を確かめた後の一押しとして、後払いや分割の設計で、支給を管理する人を決めてから始めるのが現実的です。

採用担当が不在のままだと、祝い金を出すかどうか以前に、求人の状態や契約、進行中の応募者が把握できていないことがあります。採用担当引き継ぎ代行では、止まった求人の復旧から後任の採用担当の採用・育成までを、広告費込みの料金プランでお引き受けしています。媒体アカウント・契約・進行中の応募者の棚卸しを行う「採用ストップ診断」までは無料です。お問い合わせはLINE公式からどうぞ。

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