募集職種の給与が相場に合っているか、自社で調べる方法
前任の採用担当が作った求人原稿を、給与欄もそのまま使い続けている。応募が減ってきたが、金額が低いのか、他に原因があるのかが分からない。社内に採用の専門家がいないと、「たぶん相場より安い気がする」以上の材料が出てこないまま話が止まりがちです。
この記事は、募集している職種(営業、施工管理、介護職など)の提示給与が市場とずれていないかを、自社だけで確かめる手順をまとめたものです。採用担当という職種そのものの年収相場については採用担当の給与相場と、後任にいくら払うべきかで扱っているので、後任の給与を決めたい方はそちらをご覧ください。
給与を疑う前に、順番を確認する
応募が来ない原因は、露出(そもそも見られているか)、原稿(読んで応募したくなるか)、条件(給与や休日)の3層に分かれます。給与改定は決裁も時間もかかるため、先に露出と原稿を見直すほうが速いことが多いです。詳しい順番は応募が来ない求人を立て直す優先順位にまとめています。
そのうえで「原稿は直した、それでも動かない」という段階に来たら、給与を数字で点検します。感覚で上げ下げを議論しても社内が納得しないので、調べ方を先に決めておきます。
手順1|同業・同エリアの求人を10件並べる
最も手早いのは、自社が使っている媒体とハローワークで、同じ職種・同じエリアの求人を10件集めることです。10件は「多いほうがよいが、非採用担当が1〜2時間で終わる上限」という現実的な線です。
集めるときは、次の条件を揃えてください。揃っていないものを混ぜると比較になりません。
| 揃える条件 | 具体的な見方 |
|---|---|
| 職種の実態 | 職種名ではなく仕事内容で合わせる(同じ「営業」でも新規開拓と既存対応は別物) |
| 勤務エリア | 通勤圏が重なる範囲。市区町村または沿線単位 |
| 雇用形態 | 正社員は正社員のみ。契約社員・派遣は別集計 |
| 経験要件 | 未経験可と経験3年以上は分けて記録する |
| 掲載の新しさ | 直近3ヶ月以内に掲載・更新されたもの |
記録する項目は、社名・職種名・給与下限・給与上限・固定残業代の有無と時間・賞与の記載・年間休日・経験要件の8つで足ります。Excelに8列を作り、1行1社で埋めていくだけです。
手順2|月給と年収の表記を揃える
ここが自己流で崩れやすいところです。求人票の給与表記は媒体や会社ごとにばらつきがあり、そのまま並べると比較できません。
| 元の表記 | 揃え方の考え方 |
|---|---|
| 月給のみ | 月給×12に、記載があれば賞与月数を足して年収換算する |
| 年収のみ | 12で割って月額に戻す。賞与込みかどうかを注記する |
| 固定残業代込みの月給 | 固定残業代を差し引いた基本給と、含まれる時間数を分けて記録する |
| 幅表記(例:月給◯◯〜◯◯円) | 下限どうし、上限どうしで比べる。中央値は下限で取る |
| 日給・時給 | 所定労働日数・時間から月額に換算する(あくまで目安) |
特に固定残業代は、含まれる時間数まで見ないと金額の意味が変わります。 同じ月給でも、固定残業20時間込みと残業代別では実質が違うためです。なお固定残業代の内訳や就業場所の変更範囲など、求人票に書く必要がある項目については求人票の労働条件の書き方が今のルールに合っているかで確認してください。
手順3|平均ではなく中央値を見る
10件の下限額を小さい順に並べ、5番目と6番目の真ん中を取ります。これが中央値です。平均は1社の高額求人に引っ張られるため、10件程度のサンプルでは中央値のほうが実態に近くなります。
見るポイントは3つです。自社の下限が中央値より下か上か、自社の上限が他社の下限より低くないか、そして自社より高い求人が何件あるか。応募者は複数の求人を並べて比べるので、「10件中、自社より条件のよい求人が何件あるか」という見え方が判断材料になります。
手順4|公的な統計で裏を取る
求人だけだと「その地域で今たまたま出ている募集」に偏ります。もう一段の裏取りには、無料で使える次の情報源があります。
- 賃金構造基本統計調査(厚生労働省)。産業別・職種別・地域別・年齢別の賃金が公表されており、e-Statから閲覧できます。
- ハローワークインターネットサービスの求人検索。地域と職種を指定して、実際に出ている求人の条件を一覧で確認できます。
- 職業情報提供サイト(job tag)。職種ごとの仕事内容と賃金の目安を調べられます。
統計は「すでに働いている人の賃金」、求人は「これから採る人への提示額」です。両者は一致しないことが多く、採用の競争が強い職種では求人側が高く出る場合があります。統計は下支えの確認、求人10件は実際の競合状況、と役割を分けて見てください。
調べた結果を稟議に載せる
社長や役員に上げるときは、次の5行があれば判断できます。
- 調べた対象(職種・エリア・件数・取得日)
- 他社の給与下限の中央値
- 自社の提示額と、その差額
- 自社より条件のよい求人の件数
- 改定する場合の年間増加額(対象人数×差額×12ヶ月+賞与・社会保険料の増分)
5番目を書かないと差し戻されやすくなります。既存社員の給与との整合も同時に問われるため、新規募集分だけの試算で通るか、在籍者も含めた改定になるかを先に確認しておくと話が早いです。外部費用も含めた説明の組み立ては採用の外部委託費を社内で通すときの説明の組み立て方が参考になります。
上げずに済ませる代替条件
給与改定が通らない場合でも、応募者が比較しているのは金額だけではありません。調整の余地があるのは次のあたりです。
- 手当の新設・明示(住宅、資格、通勤、皆勤など。既にあるのに求人票に書いていないケースも多い)
- 賞与の実績を金額または月数で具体的に書く
- 年間休日、残業時間の実績、有給取得率を数字で出す
- 始業時刻の選択、週1回の在宅など勤務時間の柔軟性
- 試用期間中の給与を本採用時と同額にする
これらは原稿の書き方で伝わり方が変わります。書き換える箇所は求人原稿を刷新するときに直す7か所に整理しました。
調べても動かせないときは
給与を調べる作業自体は自社でできます。難しいのは、調べた後に媒体の設定を直し、原稿を書き換え、応募対応を回し続ける部分です。採用担当が不在のまま兼任で抱えると、調査だけで止まってしまうことがあります。
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