現場の面接官によって評価がばらつくときの揃え方
採用担当がいた頃は、面接官がそれぞれ違うことを言っても、間で誰かが調整していました。「A部長は経験年数を気にするが、実際に効いているのは前職での動き方だ」といった翻訳を、担当者が頭の中でやっていたわけです。その人が抜けると、翻訳者がいないまま評価シートだけが現場に残ります。同じ応募者に対して一次は「ぜひ通したい」、二次は「うちには合わない」と正反対の評価が並び、誰が決めるのかも決まっていない。結果として合否が数日〜数週間宙に浮きます。
この記事は、過去の選考履歴から基準を洗い出す作業(前任者の合否判断の基準を、過去の選考履歴から復元する)を終えたあと、それを現場の面接官に配る側の話に限定します。基準そのものの作り方ではなく、「どう配れば同じ言葉として使われるか」「合議の場を開かずに合否を決めるにはどうするか」です。
評価シートを増やすと、かえって揃わない
ばらつきを見つけたときに最初に出る案は「評価シートを整えよう」です。ところが項目を10個、20個に増やすと、次のようなことが起きやすくなります。
- 面接中に記入が追いつかず、面接後に記憶で埋める
- 全項目が3点(真ん中)で埋まり、差がつかない
- 点数の合計は近いのに、結論だけが正反対になる
項目が多いシートは「評価を記録する道具」としては機能しますが、「面接官の目線を合わせる道具」としてはほとんど働きません。人が面接の30〜60分で意識して見られる観点は、そう多くないためです。
揃えるべきなのは項目の数ではなく、項目の言葉の意味です。 「コミュニケーション能力」という同じ欄に、ある面接官は話の分かりやすさを書き、別の面接官は愛想の良さを書きます。欄が同じでも中身が違えば、比較には使えません。
見る項目は3つに絞り、言葉の意味まで書いて配る
現実的な落としどころは、職種ごとに3項目です。3項目にすると、面接官は面接中に意識できますし、合否が割れたときも「どの項目で割れたか」がすぐ分かります。
配るときは、項目名だけでなく「この項目は何を指すか」「何を聞けば分かるか」「これは見なくてよい」まで1枚に書きます。書式の例を挙げます。
| 項目 | この項目の意味(言い換え) | 確認する質問の例 | この項目で見ないこと |
|---|---|---|---|
| 業務の再現性 | 前職で同じ作業を一人で完結させていたか | 「直近で担当した案件を、着手から完了まで順に教えてください」 | 会社の規模・知名度 |
| 立ち上がりの速さ | 分からないことを誰にどう聞いて解決してきたか | 「入社直後に困ったことと、どう解決したかを教えてください」 | 資格の有無 |
| 定着の見込み | 転職理由が自社で解消されるか | 「今回の転職で変えたいことは何ですか」 | 転職回数そのもの |
項目の中身は職種によって変わりますが、構造は共通です。ポイントは右の2列で、「何を聞くか」と「見ないこと」を書いた時点で、面接官の判断は自然に寄っていきます。 「見ないこと」を明示しておかないと、面接官は自分が気になる点(学歴、話し方、前職の社名)を勝手に足してしまうためです。
配る場は、会議を新設しなくてかまいません。既存の部門会議の5分でこの1枚を読み上げ、各項目に「うちで言えばこういう人」という実在の社員を1名ずつ当てはめて説明すると、言葉の意味が短時間で共有されます。
合議の場を持たずに合否を決める
面接官が3人いると、合否を決めるために全員を集めたくなります。しかし調整役がいない状態で全員の予定を合わせると、それだけで1週間かかります。応募者側の待ち時間が延びると辞退が増えるため(応募者への返信速度が採用結果をどう変えるか)、会議を待つ運用は避けたいところです。
代わりに使えるのが、評価シートに記入必須の一文を置く方法です。3項目の評価とは別に、面接官全員に次の一文を必ず書いてもらいます。
「この人が入社したら、自分は◯◯を任せる/任せられない。理由は( )」
点数と違い、この一文は逃げられません。全項目3点でも、任せる仕事の名前が書けるかどうかで態度が出ます。理由の欄に「経験年数が足りない」と書かれれば、それが3項目に無い観点だと分かり、基準の議論に持ち込めます。
決め方は、集める前に順序を決めておきます。
| 状況 | 決め方 |
|---|---|
| 全員が「任せる」 | そのまま次の選考へ進める。会議は開かない |
| 全員が「任せられない」 | 見送り。理由の一文をそのまま記録に残す |
| 意見が割れた | 決裁者1名(配属先の責任者など)が、割れた項目だけを見て単独で決める |
| 3項目のどれでもない理由で割れた | 決裁者が決め、その観点を次回の3項目に入れるか判断する |
大事なのは「割れたら決裁者が1人で決める」と先に宣言しておくことです。ここを決めていないと、割れた案件だけが滞留します。誰を決裁者にするかは、採用業務のうち判断を社内に残す線引きの話でもあります(採用業務を社内と外部でどう分けるか)。
面接官に配るのは1枚だけにする
現場は採用の専任ではありません。渡す資料が増えるほど読まれなくなるため、配布物は次の1枚に収めます。
- 3項目とその言い換え、質問例、見ないこと
- 記入必須の一文
- 面接時間の目安と、応募者に伝える自社情報(給与レンジ、勤務地、次のステップと日程感)
- 聞いてはいけない質問(家族構成、出身地、思想信条など)
社長や部長が急に一次面接に入る場合の準備は別記事にまとめています(社長が急に面接するときの準備(質問と評価の最低ライン))。この1枚と併せて渡すと、初回から記録の粒度が揃いやすくなります。
揃えた記録は、次の基準に反映させる
3項目に絞ると、当然こぼれる観点があります。それを拾うのが、記入必須の一文にある「理由」の欄です。同じ理由が3件、4件と続いたら、その観点は3項目に入れ替える候補になります。逆に、誰も触れない項目は外します。
この入れ替えを四半期に一度でも回せると、基準が前任者の頭の中に戻らず、シートの側に残り続けます。属人化を薄める作業としては、権限や手順書の整理と同じ位置づけです。
一方で、項目を絞る作業そのものには、過去の選考履歴を読む手間と、現場に説明して合意を取る手間がかかります。担当者が不在のまま、社長や総務が本業と並行して進めると、ここで止まりやすいところです。
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