採用の外部委託費を社内で通すときの説明の組み立て方
採用担当が辞めて求人が止まり、外部に任せるしかないと判断した。ここまでは決まっても、次に待っているのは経営会議か役員への説明です。数百万円規模の支出を、採用の専門知識がない相手に、限られた時間で通さなければなりません。
このとき多くの稟議が止まるのは、金額が高いからではなく「その金額が高いのか安いのか、比べる相手が書かれていない」からです。この記事では、比較対象の置き方と、効果の書き方、そして稟議書の項目立てを順に整理します。採用の実務ではなく、社内を通すための組み立ての話です。
「採用人数」を効果指標にすると通りにくい
最初に、書き方の落とし穴を一つ挙げます。効果欄に「4ヶ月で1名採用」と書くと、決裁者は自然に「1名に200万円か」と単価計算を始めます。そして「もっと安く採れる方法はないのか」という論点に移り、そこで議論が止まります。
外部委託の効果は、採用人数だけでは表しきれないことが多いです。止まった求人活動が動き出すことも、社内に担当者と手順が残ることも、人数には現れません。効果は次の3つに分けて書くほうが、決裁者の判断材料になりやすいです。
- 復旧までの日数:応募窓口の再開、掲載の再開、面接開始までの目安
- 社内に残るもの:後任の担当者1名、手順書、媒体・エージェントとの窓口
- 支出の上限:期間と総額が固定されているか、追加費用が発生する条件
「何人採れるか」は外部要因に左右されるため約束しにくい。一方で「いつ窓口が戻るか」「終わったとき社内に誰が残るか」は設計の話なので説明できます。約束できることを効果として書くのが、通りやすい稟議の基本です。
比較対象を3つ並べて相対化する
200万円という数字を単独で見せると高く見えます。決裁者が判断できるようにするには、同じ目的を達成する他の手段を横に並べます。並べる相手は次の3つです。
- 自社で後任を採用する場合の総額
- 欠員のまま採用が止まり続ける場合の損失
- 外部に委託する場合の費用
いずれも会社ごとに前提が違うため、稟議書には自社の数字を入れます。以下は考え方の枠組みです。
| 比較対象 | 費用に含まれるもの | 見積もりの立て方 |
|---|---|---|
| 自社で後任を採用 | 人材紹介手数料または媒体費、後任の年収と社会保険料、採用にかかる社内工数、立ち上げ期間の生産性 | 想定年収に手数料率を掛け、そこに募集・選考の社内工数を加える |
| 採用を止めたまま | 停止中も発生する媒体費、欠員部署の残業・外注費、応募者の離脱による再募集コスト | 現在契約している媒体の月額と、欠員1名分の穴埋めコストを月額で出す |
| 外部に委託 | 委託料(広告費を含むか要確認)、社内の窓口担当の工数 | 期間と総額が固定されているかを確認し、月額に割って比較 |
人材紹介経由で採用担当を1名採る場合の総額の考え方は採用担当の後任を人材紹介で採ると総額いくらかかるかに分解しています。稟議書に自社の数字を入れる前に、この枠組みで一度計算しておくと説明が安定します。
2番目の「止めたままの損失」は、稟議で最も見落とされる項目です。掲載を止め忘れた媒体費、進行中だった応募者の離脱、欠員部署の残業。これらは既に発生している支出なので、外部委託の費用と同じ通貨で比べられます。止めている期間に何が起きるかは求人を止めている間に、応募者はどうなるのかで整理しています。
なお、当社の採用担当引き継ぎ代行は標準プランが4ヶ月・200万円(税別・広告費込み・分割可)です。他に、止まった求人活動の復旧に絞った2ヶ月・80万円、引き継ぎ後の定着まで含む6ヶ月・300万円があります。月額に割ると標準プランは月50万円で、期間と総額が最初から固定されている点は、稟議上の説明材料になります。
稟議書の項目立て
決裁者が知りたい順に並べます。多くの場合、最初の3行で通るか差し戻されるかが決まります。
| 項目 | 書く内容 | 書き方の注意 |
|---|---|---|
| 件名 | 採用活動の復旧および後任担当者の確保にかかる外部委託の件 | 「採用代行の導入」ではなく、解決する課題を件名にする |
| 現状 | 担当者の退職日、停止している求人数、進行中だった応募者数、支払いが続いている媒体費 | 感想ではなく件数と金額で書く |
| 課題 | 復旧に必要な作業と、社内で担える工数の差 | 「人がいない」ではなく「誰が何時間必要か」に分解する |
| 打ち手 | 委託の範囲(復旧・後任採用・引き継ぎのどこまで) | 範囲外の業務も明記して期待値を揃える |
| 費用 | 総額、期間、支払い条件、広告費の扱い | 追加費用が発生する条件を先に書く |
| 効果 | 復旧までの日数の目安、終了時に社内に残る体制 | 採用人数は目安として添える程度にする |
| 代替案 | 自社採用、派遣、掲載停止して待つ、の3つと却下理由 | 検討した形跡があると差し戻されにくい |
| 撤退条件 | どの時点で何が達成されていなければ見直すか | 決裁者の不安を先に潰す項目 |
「現状」を件数と金額で書くのがこの表の要点です。「採用が止まっていて困っている」では判断できませんが、「求人3件が停止、選考中だった応募者5名が未対応、媒体費は月18万円が発生中」なら判断できます。棚卸しの手順は求人媒体の棚卸しで何を確認するかを参照してください。
想定される質問への備え
会議で出やすい質問は、だいたい4つに絞られます。
「なぜ今なのか」には、時間とともに作業量が増える構造で答えます。掲載を止めた期間が延びると、復旧は原状回復ではなく作り直しに近づいていきます。停止1ヶ月と3ヶ月では、必要な作業量が変わることが多いです。
「なぜ外部なのか」には、社内工数の差で答えます。後任の募集・選考を社内で回すと、求人票の作成から応募対応、面接調整までを兼任者が抱えることになります。総務や管理部門との兼任で採用を回せる範囲には限度があるため、どこから外に出すのかを線引きした上で説明すると納得されやすいです。
「終わったらまた頼むことになるのでは」には、終了時の状態で答えます。委託の目的が作業の代行ではなく、後任の担当者と手順を社内に残すことなら、そこを明示します。後任を採用担当の経験者に限定しない設計にできる場合、募集の難易度と人件費の両方が下がることが多いです。
「金額の根拠は」には、月額換算と代替案の総額との差で答えます。総額200万円は大きく見えますが、期間で割った月額と、自社採用で発生する手数料・人件費・社内工数の合計を並べると、比較の土台に乗ります。
決裁後にどう報告するか
稟議は通したあとの報告設計まで書いておくと、次の支出も通りやすくなります。月次で報告する項目を先に決めておきます。応募数、面接設定数、未対応件数、後任候補の進捗の4つ程度で足ります。数値目標を約束するのではなく、進捗が見える状態を維持することが目的です。
金額の大きい支出は、一度通れば終わりではなく、途中で「本当に効いているのか」を問われます。報告の型を最初に決めておくと、その問いに毎回作業を発生させずに答えられます。
社内説明の材料が足りない段階でも、現状の棚卸しだけは先に進められます。当社の採用担当引き継ぎ代行では、媒体アカウント・契約・進行中の応募者を洗い出す「採用ストップ診断」までを無料で行っています。停止中の媒体費や未対応の応募者数など、稟議書の「現状」欄に書く数字がそのまま揃います。
費用の全体像は料金プランをご確認ください。相談の入口はLINE公式のみで、電話番号は置いていません。稟議に添える資料の形で整理してお渡しすることもできます。