採用と入社手続きの担当を、どこで区切るか
採用担当が辞めたあと、選考は再開できたのに「内定を出した人の手続きが誰の担当か分からない」という詰まり方をする会社があります。前任者は採用も入社手続きも一人で見ていたので、境界線を引く必要がなかった。引き継いだ側は「採用は自分、労務は総務」と思っていて、その間にある内定承諾から入社日までの1〜2ヶ月が、どちらの手からも落ちる。
この記事では、内定通知から初日の受け入れまでに発生する仕事を並べ、境界線を「内定承諾時点」に引く場合と「入社日」に引く場合の2パターンを比較します。担当交代のたびに手続きが落ちる会社は、人を増やす前にこの線を決めるほうが早いことが多いです。
内定承諾から入社日までに発生する仕事
まず、実際に発生する作業を時系列に並べます。会社によって呼び方は違いますが、抜けやすいのはだいたいこの範囲です。
| 順番 | 作業 | 期限の目安 |
|---|---|---|
| 1 | 内定通知(口頭+書面) | 合否決定後すぐ |
| 2 | 条件の最終調整(給与・入社日・勤務地) | 承諾前 |
| 3 | 内定承諾の受領(書面・メール) | 通知後1週間前後 |
| 4 | 労働条件通知書・雇用契約書の交付 | 入社日まで |
| 5 | 提出書類の案内と回収(年金手帳・雇用保険被保険者証・マイナンバー・口座情報など) | 入社日前後 |
| 6 | 入社日までの接点維持(連絡・現場との顔合わせ) | 承諾〜入社日 |
| 7 | 社会保険・雇用保険の資格取得届 | 原則、入社後まもなく(要確認) |
| 8 | 初日の受け入れ(席・PC・入館証・オリエンテーション) | 入社日 |
| 9 | 現場への配属連絡 | 入社日前 |
社会保険や雇用保険の届出期限は制度ごとに異なり、原則として入社後まもなく提出が必要です。実際の日数は年金事務所やハローワーク、顧問の社会保険労務士に確認してください。ここで押さえたいのは、7と8は入社日を過ぎてから始めると間に合わないという点です。だから「入社してから労務に渡す」という運用は成立しません。
落ちやすいのは4・5・6
1〜3は採用側が自然に持ちます。7〜9は労務・総務側が持つのが一般的です。落ちるのは真ん中の4・5・6です。
4の書類交付は、書式が前任者のPCにしかないことがあります。5の書類回収は、案内を出す人と受け取る人が違うと催促が止まります。6の接点維持は、誰の仕事とも書かれていないため、承諾後に連絡が途絶えて辞退につながることがあります。承諾後の連絡が切れた状態からの立て直しは内定者フォローが途絶えたときの立て直し方に、入社日が迫っている場合の確認順は入社直前の内定者の手続きが止まっているときの確認項目にまとめています。
パターンA:内定承諾で渡す/パターンB:入社日で渡す
境界線の引き方は、実務上この2つに整理できます。
| A:内定承諾で労務に渡す | B:入社日まで採用が持つ | |
|---|---|---|
| 採用側が持つ範囲 | 1〜3 | 1〜6 |
| 労務側が持つ範囲 | 4〜9 | 7〜9 |
| 向く会社 | 労務担当が常勤でいる。入社が毎月ある | 労務が他業務と兼任。入社が年に数人 |
| 利点 | 書類と届出が一本で流れる。採用側は選考に集中できる | 候補者から見た窓口が入社日まで変わらない |
| 弱点 | 承諾直後に担当が変わり、候補者が不安になる場合がある | 採用側が労務の期限を把握していないと届出が遅れる |
| 引き継ぎの回数 | 1回(承諾時) | 1回(入社日直前) |
どちらが正しいというものではなく、労務側に常勤の担当がいるかどうかで決まることが多いです。労務が兼任で、入社が年に数人しかない会社は、Bにして採用側が入社日まで面倒を見たほうが落ちにくい。逆に毎月入社者がいる会社は、Aにして書類と届出のラインを固定したほうが安定します。
決めたら、渡す時点を日付ではなく事象で書いておくと運用が崩れにくくなります。「内定承諾のメールを受領した日」「入社日の7営業日前」のように、誰が見ても同じ日になる表現にします。
渡すときに一緒に渡す情報
境界線を決めても、渡す中身が決まっていないと受け取った側が動けません。引き継ぎシートに入れておく項目は次の通りです。
- 氏名・連絡先(本人の希望する連絡手段まで)
- 入社日と、入社日が確定か仮かの区別
- 提示した条件(給与・手当・雇用形態・試用期間・勤務地・想定残業)
- 口頭で伝えた内容(入社日の融通、初年度の有給、配属の希望など)
- 交付済みの書面と、未交付の書面
- 回収済みの提出書類と、未回収のもの
- 前職の退職予定日と、在職中かどうか
- 配属先と受け入れ担当者の名前
- 紹介会社経由の場合は、担当エージェントと手数料の条件
特に3番目と4番目です。書面に残っていない口約束は、渡した側の記憶からしか出てきません。ここが抜けたまま入社日を迎えると、初日に条件の齟齬が出ます。引き継ぎ書全体に何を書くかは採用業務の属人化を解く。引き継ぎ書に必ず書く12項目を参照してください。
線を決めた記録を、人に紐づけない場所に置く
境界線をどこに引いたかは、口頭合意のままにせず1枚に書いて共有フォルダに置きます。担当が交代するのは今回だけではありません。次に誰かが抜けたとき、この1枚があるかどうかで復旧の速さが変わります。
内定承諾から入社日までの手続きが今まさに止まっている、あるいは誰が持っているか分からないという状態であれば、まず現状の棚卸しから着手するのが早いです。採用担当引き継ぎ代行では、止まった求人活動の復旧と後任の採用・育成までを4ヶ月で進めます。費用の考え方は料金プランをご覧ください。採用ストップ診断(媒体アカウント・契約・進行中の応募者の棚卸し)までは無料です。LINE公式からご相談ください。