人材紹介会社から、社内で把握していない手数料請求が届いたとき
採用担当が退職したあと、聞いたことのない人材紹介会社から百万円単位の請求書が届くことがあります。対象者の名前を見ると、たしかに最近入社した社員です。ただし、その会社と契約していたのか、その社員が紹介経由だったのかを社内の誰も答えられません。前任者が一人で窓口を持っていた場合、こうした状態になりやすくなります。
この記事では、請求の根拠が社内で分からないときに、支払う前に確かめる3点と、紹介会社へ送る事実確認の連絡文、支払いを保留するときの伝え方を整理します。請求を疑ってかかるためではありません。正しい請求であれば気持ちよく払い、食い違いがあればこの段階で解消するための手順です。
支払いを急がず、期日は無視しない
請求書は「この金額を払ってほしい」という相手の主張です。社内で根拠を確認する時間を取ることは失礼にはあたりません。一方で、紹介会社が紹介を経て入社に至っている場合、請求そのものは正当である場合があります。
そのため、まず決めることは2つだけです。
- 支払期日を確認し、期日より前に紹介会社へ連絡を入れる
- 経理に「確認中のため、指示があるまで支払処理をしない」と伝える
期日を過ぎてから「確認中でした」と伝えると、相手の受け取り方が変わります。契約書に支払い遅延時の定めがある場合もあるため、確認に時間がかかりそうなときほど早めに一報を入れておきます。
支払い前に確かめる3点
確認する項目と、社内で探す場所、紹介会社に聞くことを並べると次のとおりです。
| 確認項目 | 社内で探す場所 | 紹介会社に聞くこと |
|---|---|---|
| 契約書の有無と料率 | 契約書の綴り、共有フォルダ、前任者の業務メール、電子契約サービス | 締結済み契約書の写し |
| 推薦日と応募経路 | 媒体の管理画面、応募者管理表、面接の日程連絡メール | 推薦日と推薦時に送った書類 |
| 入社日と理論年収の定義 | 雇用契約書、労働条件通知書、社員名簿 | 算定に使った年収の内訳 |
1. 契約書の有無と料率
最初に、その紹介会社と会社として契約を結んでいたかを確かめます。紙の契約書が見つからなくても、前任者の業務メールに契約書のPDFが添付されていたり、電子契約サービスで締結されていたりする場合があります。社内で見つからなければ、紹介会社に写しを送ってもらえば足ります。
契約書が出てきたら、手数料率と、何をもって手数料が発生するか(内定承諾時か、入社時か)を読みます。あわせて返金規定の箇所にも印をつけておきます。対象者が入社後すぐに辞めている場合は、人材紹介で採った人が早期に辞めたとき、手数料は戻るのかで返金規定の読み方を確認してください。
なお、前任者の名前で署名されていても、会社の業務として結ばれた契約は会社の契約として扱われる場合があります。「本人が勝手に結んだ契約だから無効」と判断するのは早計です。契約の有効性に疑問がある場合は、顧問弁護士に相談してから動きます。
2. 推薦日と応募経路
次に、対象者が本当にその紹介会社経由で入ってきたのかを確かめます。同じ人が求人媒体から直接応募していたり、別の紹介会社からも推薦されていたりすることがあるためです。
媒体の管理画面で対象者の応募日を検索し、紹介会社から届いた推薦メールの日付と比べます。どちらが先だったかで扱いが変わる契約の場合があります。重複が見つかったときの進め方はエージェント経由と直接応募が重複したときの手数料の扱いにまとめています。
3. 入社日と理論年収の定義
最後に、請求金額の計算を確かめます。手数料は「理論年収×料率」で算出する契約が一般的ですが、理論年収に何を含めるかは契約ごとに定義が違います。賞与、各種手当、固定残業代を含めるかどうかで金額は変わります。
たとえば、月給30万円・賞与が年2ヶ月分の社員について、仮に料率30%で計算すると次のようになります。
| 理論年収の定義 | 理論年収 | 手数料(仮に料率30%) |
|---|---|---|
| 月給×12ヶ月 | 360万円 | 108万円 |
| 月給×12ヶ月+賞与2ヶ月分 | 420万円 | 126万円 |
定義の違いだけで、この例では18万円の差が出ます。契約書の定義と、労働条件通知書に書かれた条件を突き合わせ、請求書の年収がどちらの考え方で出されているかを確認します。入社日が契約上の発生条件を満たしているか(まだ入社していない、内定辞退している、などがないか)もここで見ます。
紹介会社へ送る事実確認の連絡文
社内で確認しきれなかった項目は、紹介会社に資料を出してもらいます。責めるような書き方は避け、窓口が替わったことと、確認したい資料を具体的に伝えます。
件名:ご請求書(請求番号◯◯)の内容確認のお願い
株式会社◯◯ ご担当者様
いつもお世話になっております。株式会社△△の□□です。弊社の採用窓口の担当が交代し、本件は私が引き継いでおります。
◯月◯日付でいただいたご請求書について、社内で契約と推薦の記録を確認しきれておりません。お手数ですが、以下をお送りいただけますでしょうか。
- 弊社と締結した契約書の写し
- 対象の方の推薦日と、推薦時にお送りいただいた書類
- 手数料の算定に用いた理論年収の内訳と入社日
◯月◯日までに頂戴できましたら、内容を確認のうえ、◯月◯日までにお支払いについてご連絡いたします。
ポイントは、こちらから回答期限を切ることです。相手は「いつ払ってもらえるのか」が分かれば、確認作業に協力しやすくなります。紹介会社の担当者の連絡先自体が分からない場合は、人材紹介会社との窓口が切れたときの再開連絡の手順で契約先と窓口を特定してから送ってください。
支払いを保留するときの伝え方
資料を待つ間に支払期日が来る場合は、保留することを先に伝えます。伝える内容は3つです。
- 支払わないという意味ではなく、確認が終わるまで処理を止めていること
- 何を確認しているのか(契約書、推薦日、年収の内訳)
- いつまでに支払いの可否を連絡するか
「確認が取れ次第」とだけ書くと、相手は待つ期限が分かりません。日付を入れて伝えることで、保留が先延ばしではないことが伝わります。
資料を受け取って内容に食い違いがあった場合は、どこが違うのかを根拠の資料とともに返します。重複応募の扱いや理論年収の定義で双方の解釈が分かれ、話し合いで決着しない場合は、その時点で顧問弁護士に相談します。社内で決めた支払可否は、経理と決裁者に記録として残しておきます。
同じ請求をもう一度驚かないために
今回の確認で見つかった契約書は、採用の共有フォルダに紹介会社ごとに保存します。あわせて、紹介会社への請求書の送付先を前任者の個人アドレスから経理の共用アドレスへ変えてもらうよう依頼しておくと、次の請求が届いた時点で社内の誰かが気づけるようになります。
ほかにも、前任者だけが把握していた紹介会社が残っている場合があります。契約が生きている紹介会社をこの機会に一覧にしておくと、進行中の推薦や今後の請求を事前に見通せます。
前任者が一人で抱えていた契約は、紹介会社だけでなく求人媒体や採用ツールにも残っていることがあります。株式会社Talencoの採用担当引き継ぎ代行では、止まった求人活動の復旧から、後任の採用担当の採用と育成、引き継ぎまでを一続きで支援しています。後任は採用担当の経験者でなくてもかまいません。
料金は料金プランにまとめています。採用ストップ診断(媒体アカウント・契約・進行中の応募者の棚卸し)までは無料です。ご相談はLINE公式アカウントからお寄せください。