人材紹介で採った人が早期に辞めたとき、手数料は戻るのか
人材紹介で採用した社員が、入社から数ヶ月で退職した。採用担当は既にいない。手数料は数十万円から百万円単位で支払っているはずだが、契約書がどこにあるかも分からない――。この状況で最初に必要なのは、エージェントに連絡することではなく、自社が結んだ契約の中身を確認することです。
返金が受けられるかどうかは、業界の慣習ではなく個別の契約書に書かれた条文で決まります。ここでは、採用のことが分からない管理部門の方が、前任者の残した書類から返金規定を読み解き、事実確認の連絡を出すまでの手順を整理します。
まず契約書を探す。見つからないときの代替
人材紹介の契約書は「人材紹介基本契約書」「職業紹介サービス利用規約」などの名称で交わされていることが多く、個別の紹介ごとに「紹介手数料に関する確認書」が添えられている場合もあります。
探す順番は次の通りです。
- 契約書ファイル・総務の書庫(紙の原本)
- 前任者の共有フォルダ内の「契約」「エージェント」フォルダ
- 支払った請求書(請求書に手数料率と返金条件が併記されていることがある)
- 電子契約サービスの管理画面(クラウドサインなどを使っていた場合、社内の管理者アカウントを確認)
どこにも見つからない場合は、エージェントに「貴社と弊社の基本契約書の写しをいただけますか」と依頼して差し支えありません。契約当事者である以上、写しの提供を断られることはまれです。契約先そのものが特定できていない段階であれば、人材紹介会社との窓口が切れたときの再開連絡の手順で契約先の洗い出しから始めてください。
返金規定で確認する5か所
契約書が手元に揃ったら、次の5点を順に確認します。条文の文言をそのまま書き写しておくと、後のやり取りで食い違いが起きにくくなります。
| 確認する箇所 | 具体的に見るもの | なぜ重要か |
|---|---|---|
| 返金の対象期間 | 「入社日から◯ヶ月以内の退職」の起算日と期間 | 起算日が入社日か内定日かで数週間ずれる |
| 返金の計算方法 | 定率(在籍期間の区分ごとに割合が決まる)か、日割りか | 退職日が1日違うだけで区分が変わる場合がある |
| 退職理由の区分 | 自己都合・会社都合・懲戒の扱いの違い | 会社都合は返金対象外とされることが多い |
| 再紹介(フリーリプレイスメント)条項 | 返金の代わりに無償で再紹介する定めの有無と優先順位 | 会社側に返金を選ぶ権利がない契約もある |
| 請求の手続きと期限 | 退職判明後◯日以内の書面通知など | 期限を過ぎると請求できないと定める契約もある |
対象期間と計算方法
返金の対象期間は、入社から1ヶ月・3ヶ月・6ヶ月といった区切りで段階的に返金割合が下がる定め方が多く見られます。割合は契約ごとに異なるため、自社の条文に書かれた数字をそのまま読み取ってください。日割りで計算する契約もあり、その場合は退職日が1日ずれるだけで金額が変わります。
退職理由の区分が最大の論点になりやすい
多くの契約では、本人の自己都合による退職は返金対象、会社都合(解雇、事業縮小、試用期間満了での本採用見送りなど)は対象外、と区別されています。ここで問題になるのが、退職理由が社内で曖昧なまま処理されているケースです。
実際には本人が「合わない」と言って辞めたのに、退職届に理由が書かれていない。あるいは上司が退職勧奨に近いやり取りをしていた。こうした場合、後からどちらの区分か判断できず、交渉が長引きます。試用期間の扱いが絡む場合は、試用期間の満了が近い社員の本採用判断が止まっているときも併せて確認してください。
再紹介条項があるとき
返金ではなく「同等の人材を無償で再紹介する」と定められている契約があります。採用担当が不在で、再紹介されても選考を回せる体制がない場合、この条項は実質的に使えないことがあります。条文に「会社が返金を選択できる」旨があるか、ない場合は協議できるかを確認しておきます。
エージェントに送る事実確認の連絡
返金を主張する前に、事実確認の形で連絡を出すほうが話が進みやすい傾向があります。文面の骨格は次の通りです。
- 誰が、いつ入社し、いつ退職したか(氏名・入社日・最終在籍日)
- 退職理由の区分(自己都合である旨、または確認中である旨)
- 自社が確認した契約条項の該当箇所(第◯条)
- 返金または再紹介のどちらに該当するかの貴社見解を伺いたい旨
- 回答の希望期日
「返金してください」と先に書くより、「契約第◯条の該当有無についてご見解をいただけますか」と書くほうが、相手も社内で確認を取りやすくなります。担当交代の事実は、不在を強調せずに「弊社の採用担当が交代したため、契約内容を改めて確認しております」程度に触れれば足ります。
なお、退職理由の認定や契約解釈で見解が分かれた場合は、金額によっては弁護士など専門家に相談する判断もあります。社内だけで押し切ろうとしないほうが無難です。
返金を取る前提で、記録を残しておく
返金請求でつまずくのは、条文の解釈よりも「事実を証明する記録がない」場面のほうが多いものです。入社後の社員について、最低限次の記録を残しておくと、仮に早期退職が起きても判断材料が揃います。
| 残すもの | タイミング | 書く内容 |
|---|---|---|
| 入社日の記録 | 入社当日 | 雇用契約書の控えと実際の初出社日 |
| 入社後面談メモ | 1ヶ月・3ヶ月 | 本人が話した困りごと、配属先の評価 |
| 退職の申し出記録 | 申し出を受けた日 | 申し出日、申し出た相手、本人の言葉 |
| 退職届・退職理由 | 退職手続き時 | 自己都合か会社都合かが読み取れる記載 |
入社後の面談記録は、返金請求の材料であると同時に、早期退職そのものを減らす仕組みでもあります。採用担当が抜けた直後は入社後のフォローが誰の担当でもなくなりがちなので、入社直後の社員のフォローが止まっているときに拾うことも確認しておくとよいでしょう。
返金の有無は、次の採用手段の判断材料になる
仮に手数料の一部が戻ったとしても、採用にかかった時間と現場の負担は戻りません。同じ職種を再び人材紹介で採るのか、別の手段に切り替えるのかは、総額で比べて判断するほうが現実的です。手数料の相場と他の手段との比較は採用担当の後任を人材紹介で採ると総額いくらかかるかで整理しています。
契約書が見つからない、どの条文が該当するか判断できない、エージェントとのやり取りを誰が持つかも決まっていない。こうした状態は、採用担当が抜けた会社では珍しくありません。
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