エージェント経由と直接応募が重複したときの手数料の扱い
採用担当が退職し、応募の受け皿が一時的に崩れていた時期に、同じ人物が「求人媒体からの直接応募」と「人材紹介会社からの推薦」の両方で社内に入っていた——後から気づくと、支払うべき成功報酬をめぐって話が難しくなります。紹介手数料は理論年収に対する一定割合の成功報酬とする契約が一般的で、一件あたりの金額が小さくありません。だからこそ、感情ではなく契約書と記録で処理する必要があります。
この記事では、重複が判明した時点で何を確認し、誰にどの順番で連絡し、候補者本人にはどこまで聞いてよいかを整理します。あわせて、同じことを繰り返さないための「応募受付日を記録する」最小限の運用まで扱います。担当不在の初動全体は採用担当が退職した直後にやるべき7つのこと(優先順位つき)で扱っているので、そちらと併せて読んでください。
なぜ担当が不在だと重複が起きるのか
重複そのものは、担当がいる会社でも起きます。転職活動中の候補者が、自分で媒体から応募しつつ、エージェントにも登録して同じ会社を勧められる、という状況は珍しくありません。
問題は、それを社内で突き合わせられるかどうかです。担当が一人で応募一覧とエージェントからの推薦メールの両方を見ていた場合、その人が抜けた瞬間に照合する目がなくなります。推薦メールが前任者の受信箱に残ったまま、媒体の直接応募だけが後任の目に入り、面接を進めてしまう。あとからエージェントに「弊社が推薦した方ですが、選考はいかがでしょうか」と連絡が来て、初めて重複が発覚する——という順番になりやすいのです。
重複は事故ではなく、記録が分断されたときに現れる症状です。 前任者の個人メールに推薦が埋もれているケースは前任者の個人携帯・個人メールで進んでいた候補者をどう見つけるかも参照してください。
まず契約書のどこを見るか
判断の起点は、当事者の記憶ではなく人材紹介契約書(基本契約書)です。重複時にどちらが優先されるかは、契約書の条項で決まっていることが多く、会社ごとに書きぶりが違います。以下の項目を順に確認してください。
| 確認する条項 | 何が書かれているか | 実務上の意味 |
|---|---|---|
| 先行・重複の扱い | 「既に自社応募がある候補者は対象外」など | どちらが先かを判定する条項。最重要 |
| 判定の基準日 | 応募日/推薦通知の到達日/面談実施日 | 「先」の定義。ここが基準になる |
| 通知の方法 | 書面・メール・システム上の推薦のみ有効 か | 口頭紹介が無効とされる場合がある |
| 有効期間 | 推薦から◯ヶ月以内の入社は手数料対象 | 過去の推薦が生きていることがある |
| 異議の申し出期限 | 重複を知った日から◯日以内に通知 など | 黙って進めると反論できなくなる |
| 返金・返戻規定 | 早期退職時の返金割合 | 支払い判断の材料になる |
基準日の考え方は大きく二つに分かれます。ひとつは応募日基準で、候補者が自社の媒体経由で応募した日と、エージェントの推薦日を比べ、早いほうを優先するもの。もうひとつは推薦通知基準で、エージェントから正式な推薦通知が届いた時点で、以後その候補者は紹介対象とみなすものです。後者の場合、自社への直接応募が数日先行していても、社内で誰も処理していなければ「応募があった」と主張しにくくなります。
契約書そのものが見当たらない、どのエージェントと契約しているか分からない場合は、先に契約先の特定が必要です。手順は人材紹介会社との窓口が切れたときの再開連絡にまとめています。
エージェントへの連絡は「事実確認」から始める
重複に気づいた時点で、支払う・支払わないの結論を先に出す必要はありません。むしろ先に結論を伝えると、確認前の言い切りが後で覆せなくなります。最初の連絡は事実確認に限定してください。
連絡文に入れる要素は次の4つです。
- 対象候補者を特定できる情報(氏名・生年月日など、双方が照合できる範囲)
- 自社側で確認できている事実(媒体経由の応募が◯月◯日に記録されている)
- 相手に確認したいこと(推薦通知の送信日時、送信先アドレス、担当者名)
- 現時点では判断を保留していること(契約条項に照らして双方で確認したい旨)
「前任者が退職して社内が混乱しており」という説明は、必要な範囲で正直に伝えて構いません。ただし「記録がないので分からない」とだけ言うと、相手側の記録だけで話が進みます。自社側で確認できた事実は、断片でも必ず添えてください。担当交代を社外にどう伝えるかは採用担当の退職を、媒体営業・エージェント・現場にいつ伝えるかで整理しています。
候補者本人に聞いてよいこと、聞かないほうがよいこと
事実確認のためとはいえ、候補者本人への質問には注意が必要です。本人は選考中の立場で、板挟みになると辞退につながることがあります。
| 聞いてよいこと | 避けたほうがよいこと |
|---|---|
| 当社への応募経路(媒体名・紹介会社名) | どちらの経路で選考を進めたいかの選択を迫る |
| 応募・登録したおおよその時期 | 他社の選考状況やエージェントとの契約内容の詳細 |
| 現在の連絡窓口をどちらにするかの希望 | 手数料の話題、社内の金銭的事情 |
聞き方も、「経路が二重になっており、こちらの管理の問題でご迷惑をおかけしています。連絡の窓口を一本化したいので、どちらからのご連絡が届いているか教えていただけますか」といった、会社側の不手際として伝える形が無難です。選考の進行と手数料の話は完全に切り離し、面接日程は止めないでください。返信が止まる影響は応募者への返信速度が採用結果をどう変えるかのとおりです。
決着の付け方は、金額よりも先例で考える
契約条項が明確で自社が有利な場合でも、そのエージェントと今後も付き合うなら、全面的に押し切ることが最善とは限りません。実務では次のような着地が取られることがあります。
- 契約どおり一方の経路で処理し、経緯を書面で残す
- 今回は支払い、次回以降の重複判定ルール(基準日と通知方法)を書面で取り決める
- 手数料率や支払時期の条件を見直したうえで合意する
どの案でも、決めた内容を必ず書面(メールでも可)で残してください。担当者が代わるたびに同じ議論が再燃するのを防げます。金銭が絡む判断なので、決裁者は社長または管理部門の責任者に上げるのが安全です。
再発防止は「応募受付日を残す」だけでも効く
高機能な仕組みは要りません。応募が入った時点で、次の項目を一つの表に記録する運用があれば、重複はほぼ検知できます。
- 氏名(と生年月日など照合できる情報)
- 応募・推薦の受付日
- 経路(媒体名/紹介会社名)
- 応募職種
- 一次対応した社内担当者
紹介会社からの推薦は、個人の受信箱ではなく採用専用のメールアドレスで受けることを条件にすると、担当が抜けても記録が残ります。採用管理システムを使っている場合の引き継ぎは採用管理システム(ATS)の契約とデータをどう引き継ぐかを、まず窓口自体を立て直す段階であれば採用担当が不在の間、応募窓口を1日でつくる手順を参照してください。
手数料の揉めごとは、体制の問題として片づける
重複による手数料トラブルは、担当が一人で全経路を見ていた体制の副産物として起きることが多く、後任を採っても記録の運用を決めなければ再発します。契約条項の確認、エージェントとの窓口の再構築、応募受付の記録化は、本来まとめて手を付けたほうが効率的です。
Talencoの「採用担当引き継ぎ代行」は、止まった求人活動の復旧、後任の採用、引き継ぎと業務改善までを一続きで担います。後任は採用担当の経験者でなくてかまいません。当社が実務の中で育て、記録の残る運用ごと引き継ぎます。標準プランは4ヶ月・200万円(税別・広告費込み、分割可)、復旧のみの2ヶ月80万円、完全支援の6ヶ月300万円もあります。
- サービスの流れ:採用担当引き継ぎ代行
- 費用の比較:料金プラン
採用ストップ診断(媒体アカウント・契約・進行中の応募者の棚卸し)までは無料です。 重複が起きている候補者の切り分けもこの範囲で確認できます。ご相談はLINE公式から、契約書の該当ページや推薦メールの日付が分かるものをお手元にご用意のうえお送りください。