外国人社員の在留期限や届出を前任者しか把握していないとき
採用担当が退職したあと、求人の再開や応募者への連絡を先に手当てしようとしていた矢先に、「そういえば外国人社員の在留カードの管理も前任者がやっていた」と気づくことがあります。誰が何人いるのか、期限がいつなのか、更新の手続きが進んでいるのかが、社内の誰にも分からない。前任者のPCにExcelがあったような気もするが見当たらない。この状態は、採用の停止とは性質が違います。
求人の再開は、会社が自分の都合で時期を決められます。一方で在留期限は社外で決まっていて、こちらの事情で延びません。期限を過ぎれば本人の就労と在籍に直接かかわり、会社側も対応を求められる場面が出てきます。採用の復旧より先に、期限のあるものを先に置くのが順番です。この記事では制度の解説には踏み込まず、社内で今日から動ける「洗い出しと確認先への相談」の手順に絞って整理します。
期限があるものを先に、採用は後に回す
前任者が採用以外も兼務していた場合、戻すべき業務は一度に片づきません。判断の軸は単純で、期限を社外が決めているものを先に置きます。在留期限、各種の届出期限、試用期間の満了日などがこれにあたります。求人原稿の修正や媒体の再開は、1週間後ろにずれても取り返しがつくことが多い一方、期限の過ぎたものは取り返しがききません。
兼務業務全体の並べ替えについては前任者が採用以外も兼務していた。どの業務から戻すかで扱っています。ここでは、そのうち外国人社員に関する部分だけを取り出します。
まず在留カードの写しを集めて一覧にする
最初にやるのは、対象者が何人いるのかを確定させることです。人事台帳に国籍欄があればそこから拾えますが、記載が古いことがあります。給与計算のデータ、雇用契約書のファイル、現場の責任者への確認を重ねて、対象者を漏れなく拾ってください。
対象者が分かったら、在留カードの写しを集め直します。前任者が保管していた写しが見つかっても、更新後の最新のものとは限りません。本人に依頼して、現在手元にあるカードの表裏の写しを提出してもらうのが確実です。依頼の文面は「担当者交代にともない、会社で保管している書類を確認しています」と事務連絡の形で構いません。不安を与える書き方は避けます。
集めた情報は、次の列で1枚にまとめます。
| 列 | 記入内容 | 確認元 |
|---|---|---|
| 氏名・社員番号 | 在留カードの表記と社内表記の両方 | 人事台帳 |
| 在留資格 | カードの記載をそのまま転記 | 在留カード |
| 在留期間の満了日 | カードの記載をそのまま転記 | 在留カード |
| 就労制限の有無 | カードの記載をそのまま転記 | 在留カード |
| 更新手続きの状況 | 未着手/準備中/申請済み(申請日) | 本人への確認 |
| 手続きを依頼している先 | 本人/行政書士等/不明 | 本人・前任者 |
| 社内の担当 | 現時点で誰が見ているか | 社内 |
ポイントは、カードの記載を解釈せずそのまま写すことです。在留資格ごとに何ができるかの判断は社内でせず、記載を正確に集めることに徹します。判断が必要な箇所は、後述の相談先に持ち込みます。
満了日の近い順に並べ、動き方を決める
一覧ができたら満了日の近い順に並べ替えます。残りの期間によって、社内でやるべきことの重さが変わります。
| 満了日までの残り | 社内でまず確認すること |
|---|---|
| 3ヶ月未満 | 更新申請が進んでいるか本人に直接確認する。未着手なら最優先で相談先を押さえる |
| 3〜6ヶ月 | 誰が手続きを担うかを本人と合意し、会社が出す書類の準備に入る |
| 6ヶ月以上 | 一覧に載せ、次の月次点検で見る状態にする |
更新の申請をいつから受け付けてもらえるかは制度上の定めがあり、時期や必要書類は在留資格や個別の事情によって変わることがあります。ここは社内の推測で進めず、出入国在留管理庁の案内や相談窓口で確認してください。満了日が迫っている人がいる場合は、この確認を今日の仕事として入れます。
更新の準備を、本人と会社のどちらが持つか
在留期間の更新は、基本的には本人の申請です。ただし実務では、会社が在職証明や給与に関する書類を用意し、本人がそれを添えて申請するという分担になっていることが多くあります。前任者がどこまで手を出していたかが分からないと、本人が「会社がやってくれるはず」と待ち、会社が「本人が進めているはず」と思い込む空白が生まれます。
この空白をなくすには、本人と1回話す場を持つのが早道です。聞くことは3点に絞れます。
- 更新の手続きは、現在どこまで進んでいるか(未着手/書類準備中/申請済み)
- 前任の担当者から、どこまで手伝ってもらう話になっていたか
- 会社から出す書類で、いま必要なものがあるか
この3点を聞いた結果は、先ほどの一覧の「更新手続きの状況」欄に転記します。口頭のやり取りで終わらせると、また同じ空白ができます。なお、前任者が本人に対して口頭で約束していたことが出てくる場合があります。入社後のフォローが止まっているときに拾う項目は入社直後の社員のフォローが止まっているときに拾うことでも触れています。
届出まわりは「誰かが出していたはず」を確認する
外国人を雇い入れたときや離職したときには、行政への届出が求められる場面があります。前任者が退職している場合、直近の入社・退職分について届出が出ているかどうかを社内の誰も知らない、という状態になりがちです。
確認の順番としては、まず前任者が使っていた共有フォルダとメールから、届出の控えや送信履歴を探します。見つからない場合は、提出先の窓口に「担当者が交代したため、届出の状況を確認したい」と問い合わせる形が現実的です。出ていなければ、遅れてでも出す段取りに入ります。ここも、要否や手続きの細部を社内で判断しないことが大事です。
確認先への相談の切り出し方
相談先は大きく3つに分かれます。どこに何を聞くかを決めてから連絡すると、話が早く進みます。
- 出入国在留管理庁の相談窓口:在留期間の更新に関する一般的な手続きや必要書類の考え方
- 行政書士(入管業務を扱う事務所):申請書類の作成や、個別事情をふまえた進め方
- 社会保険労務士:雇用に関する届出や労務面の扱い
切り出し方は、状況をそのまま伝えるのが一番通じます。「採用と外国人社員の手続きを担当していた社員が退職し、社内に経緯を知る者がいません。対象者は◯名で、直近の満了日は◯月◯日です。まず何から確認すべきか教えてください」。対象者数と最も近い満了日を先に言うと、相手も優先度を判断しやすくなります。
顧問社労士がいる会社では、どこまで依頼できるかが契約範囲によって変わります。範囲の考え方は顧問社労士に採用業務をどこまで頼めるかにまとめています。
同じ空白を繰り返さないために
一度整理した一覧は、置き場所と更新の担当を決めておかないと、また個人のPCに戻ります。共有フォルダに置き、閲覧できる人を限定したうえで、月1回、満了日の近い順に上から3人分を見る。これだけで、次に担当が交代しても期限を見落としにくくなります。カードの写しは個人情報にあたるため、保管場所と権限は総務側で管理する形が扱いやすいことが多いです。
在留期限の管理は、採用担当が持つこともあれば労務側が持つこともあり、会社によって置き場所が違います。退職を機に、この業務を採用の後任に戻すのか、管理部門に残すのかを決めておくと、次の引き継ぎがぐっと軽くなります。
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