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退職した元社員が応募してきたときの進め方

求人を再開した直後や、社員紹介で声をかけた流れで、数年前に辞めた元社員から応募が届くことがあります。社内に「あの人なら知っている」と言う社員が何人もいる一方で、当時の勤務評価も、本当の退職理由も、どこにも残っていない。採用担当が辞めた後だと、この状態になりやすいところです。

元社員の応募は、通常の中途応募より判断材料が多いようでいて、実は根拠のない印象が多い状態です。「現場が歓迎しているから早く決めよう」と進めると、条件や処遇を詰めないまま内定に近いところまで行ってしまい、後から人事側で止められないことがあります。ここでは、記録から確認する3点、選考フローの扱い、給与と役職の決め方、社内の合意の取り方の順に整理します。

まず、記録と当時の上長から3点だけ確認する

元社員の応募で最初にやるのは、面接の設定ではなく、社内に残っている事実の回収です。人づての評判から入ると、良い話も悪い話も一人の記憶に引っ張られます。確認するのは次の3点で足ります。

確認する内容確認先見るポイント
退職の種類と日付労務・総務の退職記録、離職票の控え、就業規則上の手続き書類自己都合か会社都合か、退職日と最終出社日、退職金や貸与物の精算が終わっているか
在籍中の勤務実績勤怠記録、人事評価のシート、配属履歴評価の高低より、欠勤・遅刻の傾向、異動の経緯、担当していた業務の範囲
当時の上長の所感元の所属長(退職していれば同僚だった社員)また一緒に働きたいか、あるとすればどの条件か。抽象的な印象ではなく具体的な場面を聞く

「なぜ辞めたのか」は、本人と当時の上長の双方から聞いて、食い違いがないかを見ます。 片方だけだと、どちらの話も本人にとって都合よく整理されていることがあります。食い違いがあること自体が問題なのではなく、どこがずれているかが分かれば、面接で確認すべき論点が決まります。

なお、懲戒に関わる退職や、トラブルを抱えたままの退職が記録に残っている場合は、人事担当だけで判断せず、顧問の社労士や弁護士に相談した方が安全です。

通常の選考フローに乗せる

元社員だからといって、面接を省いたり、書類選考を飛ばしたりしない方がよいケースがほとんどです。理由は3つあります。

ひとつは、情報が古いこと。前回の在籍が3年前なら、本人の経験も家庭の事情も変わっています。会社側も、組織・人員・業務の進め方が変わっています。「知っている人」という前提は、お互いにとって事実と違っている場合があります。

ふたつめは、受け入れる現場への説明がつかなくなること。選考を省いて入社した人が期待どおりに動かなかったとき、「誰が決めたのか」が残っていないと、現場の不満が人事と経営に向かいます。

みっつめは、他の応募者との公平性です。同じ求人に応募している人がいる状況で、元社員だけ別ルートで進むと、選考基準そのものが崩れます。合否の基準が社内で言語化されていない会社ほど、ここが曖昧になりやすいところです。基準を過去の選考から復元する手順は前任者の合否判断の基準を、過去の選考履歴から復元するにまとめています。

実務としては、通常のフローに乗せたうえで、面接の中身だけ元社員向けに調整します。経歴の説明は短くし、代わりに「退職後に何をしてきたか」「戻る理由」「前回辞めた理由は解消されているか」に時間を使います。過去に自社を受けて不採用になった人の再応募とは扱いが異なるため、そちらは過去に不採用にした人が再応募してきたときを参照してください。

給与と役職を、前職時と同じにしてよいか

元社員の応募でいちばん揉めやすいのが条件です。「辞めたときと同じ」で合意しかけることが多いのですが、これは根拠としては弱いと考えた方がよいところです。判断の軸は次のように分けられます。

軸前職時と同じでよい方向に働く見直しが必要な方向に働く
担当する業務前回とほぼ同じ職種・役割に戻る別職種、別拠点、責任範囲が変わる
離職期間1年未満で、同職種の経験を継続している数年空いている、別業界に移っていた
社内の給与水準在籍時から水準が大きく動いていない既存社員の昇給やベースアップで水準が変わった
役職同じポジションに空きがあり、現任者がいない当時の後任が今その役職に就いている

基準は「辞めたときの本人」ではなく「いま同じ仕事をしている既存社員」に置きます。 元社員だからという理由で既存社員より高い条件を出すと、入社後に必ず知られます。求人の提示額が社内の水準を上回ったときの整え方は求人の提示給与が既存社員を上回っているとき、どう整えるかに書いています。

役職については、当時のポジションに現任者がいるケースが問題になります。元社員を同じ役職で戻すと、現任者を降格させるか、二人体制にするかの判断が発生します。採用の話として処理せず、組織の話として決裁を上げた方がよい場面です。

勤続年数の扱い(有給付与や退職金の計算で前回在籍分を通算するか)も、就業規則の定めを確認してください。規則に書かれていない場合、口頭で約束すると後から戻せません。

現場が歓迎しているとき、警戒しているとき

社内の反応は、おおむねこの2通りに分かれます。どちらでも、合意の取り方は「個別に根回しする」より「決める人と順番を先に決める」ほうが収まりやすいところです。

現場が歓迎している場合、進行が速くなりすぎることが問題になります。「本人ともう話した」「来月から来られると言っている」と、条件も決裁もないまま既成事実が積み上がります。この場合は、面接日と条件提示日を先にカレンダーに置き、それ以前の約束はしないと現場に伝えます。入社日の話を現場の誰かがしてしまった場合は、早めに「確定ではない」と本人へ訂正の連絡を入れます。

現場が警戒している場合、理由を具体的に聞き出すことが先です。「前にトラブルがあった」という表現の中身が、業務上の意見対立なのか、勤怠や言動の問題なのかで、扱いはまったく違います。警戒している社員に意見を言わせないまま採用を決めると、入社後の受け入れが機能しません。反対意見は、面接の確認項目に変換して記録に残し、面接で確かめた結果を本人たちに返します。

どちらのケースでも効くのは、誰が最終的に決めるかを先に明示しておくことです。募集開始・選考通過・条件提示・内定の決裁者を1枚にしておく方法は採用の可否を誰が決めるかを、紙に1枚で決めておくにまとめています。元社員の応募は、この紙がない会社ほど止まりやすくなります。

判断を記録に残す

元社員を採用する場合も見送る場合も、理由を2〜3行で残してください。見送った場合、本人が社内に知人を多く持っている分、「なぜ落ちたのか」が社内で話題になりやすくなります。記録がないと、担当者が変わるたびに説明が変わります。

採用した場合は、条件(給与、役職、勤続年数の扱い)とその根拠を、労働条件通知書とは別にメモで残しておくと、次に似たケースが来たときの基準になります。


元社員の応募への対応は、採用担当が在籍していれば過去の記録と判断基準の両方を本人が持っているため、そこまで大ごとになりません。難しくなるのは、担当が不在で、記録を探すところから始めなければならない状態のときです。

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