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引き継ぎと属人化

前任者の合否判断の基準を、過去の選考履歴から復元する

書類選考を再開しようとして、手が止まる会社があります。応募者の履歴書は届いている。面接の枠も押さえられる。それでも「この人を通していいのか」が誰にも判断できない。前任の採用担当が、頭の中だけで合否を決めていたからです。

引き継ぎ書に「求める人物像」と書いてあっても、たいてい「コミュニケーション能力が高い方」「自ら考えて動ける方」といった求人原稿の文言がそのまま写されているだけで、実際の書類選考には使えません。ただし、判断基準そのものは消えていないことが多いです。過去の選考結果という形で、社内に残っています。この記事では、通過者と見送り者の履歴を並べて基準を逆算し、後任と現場が使えるチェック表に落とすまでの手順を扱います。

基準は「言葉」ではなく「結果」に残っている

前任者が言語化していなかったとしても、通した人と落とした人の実物は残っています。応募者一覧、履歴書のファイル、面接メモ、内定通知の記録。これらは「その人が何を良しとしていたか」の記録そのものです。

先に材料の所在を確認してください。媒体の管理画面に入れない、応募者データが個人アカウントにしかない、という状態だと復元作業に入れません。その場合は先に引き継ぎメモが無いとき、何から手をつけるべきかの順番で全体像を戻してから、この作業に着手したほうが早いことが多いです。

使う材料は次の3つです。

  • 過去1年程度の応募者一覧(応募日・職種・選考結果)
  • 通過者と見送り者の履歴書・職務経歴書
  • 分かる範囲での面接メモ、現場からの評価コメント

入社後の状況も併せて見てください。 前任者の基準が正しかったとは限らないため、通過させた人が定着しているかどうかは、基準を採用するか捨てるかの判断材料になります。

手順1:通過者と見送り者を1枚に並べる

職種ごとに、直近1年の応募者を表にします。1件あたり5分もかけません。全件は無理なら、内定・入社まで進んだ人を全員、書類で見送った人を職種あたり10〜15名ほど抜き出せば傾向は見えてきます。

項目記入する内容
応募日・職種どの募集への応募か
年齢層・在職状況在職中/離職中、離職期間の長さ
経験年数・業種同業か異業種か、何年か
直近の職務内容実際に何をしていたか(役職名ではなく作業内容)
転職回数・在籍期間何年ごとに変わっているか
資格・学歴募集要件に書かれていたもののみ
結果書類見送り/面接見送り/内定/辞退/入社
入社後在籍中/早期退職(分かる範囲で)

ここで大事なのは、履歴書に書いてある事実だけを写すことです。「印象が良さそう」といった主観は、この段階では入れません。

手順2:差が出ていない項目を捨てる

並べ終えたら、通過群と見送り群で列ごとに比較します。多くの場合、募集要項に書いてあった条件のいくつかは、実際には合否を分けていません。

たとえば「経験3年以上」と求人票に書いてあるのに、通過者に経験2年の人が複数いる。逆に経験8年でも書類で落ちている人がいる。この場合、経験年数は実際には効いていない条件です。同じことが資格や学歴でも起きます。

差が出ていない項目を消していくと、残る列は数本になります。実務でよく残るのは次のような条件です。

  • 通勤時間、勤務地からの距離
  • 前職の在籍期間(短期離職の連続がないか)
  • 業務の粒度(同じ職種名でも、実際に手を動かしていた範囲)
  • 応募から連絡がつくまでの速さ、返信の丁寧さ
  • 希望条件と自社の提示条件の開き

最後の2つは履歴書には書かれていませんが、応募者とのメールのやり取りに残っています。前任者が「連絡の取りやすさ」で判断していたケースは珍しくありません。返信のやり取りは応募者への返信速度が採用結果をどう変えるかでも触れているとおり、応募者側の意欲を映す情報でもあります。

手順3:残った条件を「見れば分かる」言葉に直す

残った条件を、後任がその場で判断できる形に書き換えます。「主体性がある人」では判断できませんが、「前職で担当範囲を自分で広げた経験が経歴書に書かれている」なら、書類を見て○×がつけられます。

判断できる形かどうかは、同じ書類を2人が見て同じ結果になるかで確かめてください。分かれるようなら、条件の書き方がまだ曖昧です。

手順4:3〜5項目のチェック表にする

項目は増やしすぎないでください。10項目あると誰も使いません。書類選考で使うのは3〜5項目が限度です。

#確認すること判定扱い
1通勤片道◯分以内、または転居可の記載○/××なら見送り
2直近3社の在籍がいずれも1年以上○/××なら面接で理由を確認
3◯◯業務の実務経験(年数不問、担当範囲を記載)○/××なら見送り
4希望年収が提示レンジの上限+◯万円以内○/××なら条件をすり合わせて判断
5初回連絡から3営業日以内に返信がある○/××は督促1回まで

「×なら即見送り」と「×でも面接で確認する」を分けておくと、後任が迷いません。未経験で後任に入った人でも、この形なら初週から書類選考を回せます(後任が決まったあと、最初の2週間で教えるべきこと)。

復元した基準を、そのまま使ってはいけない場合

過去の履歴から逆算した基準は、あくまで「前任者が実際にやっていたこと」の記録です。それが正しいとは限りません。次の2点は必ず確認してください。

第一に、法令上使えない条件が紛れていないか。性別、年齢、出身地、家族構成などを理由とした選別は、募集・採用において認められていません。履歴を並べると偏りが見えることがありますが、それを基準として明文化することはできません。偏りに気づいた場合は、その条件を落として組み直します。

第二に、その基準で採った人が定着しているか。早期退職が続いている職種なら、前任者の基準は見直す対象です。復元は現状把握であって、追認ではありません。

最後に、作ったチェック表は現場の面接官に見せて合意を取ってください。書類選考の基準と面接での見方がずれていると、通した人が面接で全員落ちるという事態になります。合意した内容は引き継ぎ書に残します(採用業務の属人化を解く。引き継ぎ書に必ず書く12項目)。

復元にかかる時間の目安

職種1つあたり、応募者を並べるのに2〜3時間、比較と言語化に2時間程度を見ておくとよいでしょう。募集職種が複数ある会社では、まず応募数が多い職種、または今すぐ再開したい職種の1つに絞って着手するほうが進みます。

前任者がまだ在籍している、あるいは連絡が取れる状態なら、復元した基準を見せて「こういう見方で合っていましたか」と確認するのが最短です。ゼロから聞き出すより、たたき台を見せたほうが本人も答えやすくなります。


過去の履歴から基準を戻す作業は、材料さえ揃っていれば社内でも進められます。ただし、媒体アカウントに入れない、応募者データの所在が分からない、そもそも選考中の応募者が何人いるか把握できていない、という状態では着手できません。

Talencoの採用担当引き継ぎ代行は、止まった求人活動の復旧、後任の採用、引き継ぎと業務改善までを4ヶ月で行います。合否基準の復元やチェック表の整備も、引き継ぎの範囲に含めています。後任は採用担当の経験者でなくてかまいません。当社が育てたうえで引き渡します。費用は料金プランをご覧ください。

まずは現状の把握からで結構です。媒体アカウント・契約・進行中の応募者の棚卸しを行う「採用ストップ診断」までは無料で対応しています。LINE公式アカウントからご連絡ください。

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