前任者のファイルにパスワードがかかって開けないとき
退職した採用担当のPCや共有フォルダから、ようやく「応募者管理表.xlsx」や「媒体契約一覧.zip」を見つけた。開こうとしたらパスワードを求められ、どこにも書かれていない。本人にはもう直接聞けない、あるいは聞きづらい。——引き継ぎが止まる場面として、かなり頻度の高いパターンです。
ここで多くの会社がやってしまうのが、「パスワード解除ツール」を検索して試し始めることです。先に結論を書くと、手を出す順番としては最後です。採用まわりのデータは、かなりの部分が社外(求人媒体・人材紹介会社・制作会社)にも残っています。開かないファイルを割ろうとするより、元データを持っている相手から取り直すほうが速く、安全なことが多いのです。
まず「どの種類のロックか」を見分ける
同じ「パスワードを聞かれる」でも、中身を見られるかどうかは大きく違います。最初の5分でここを切り分けてください。
| 画面の出方 | 種類 | 中身が見られるか |
|---|---|---|
| 開く前にパスワード入力を求められる | 読み取りパスワード(ファイル暗号化) | 見られない |
| 「読み取り専用で開く」を選べる | 書き込みパスワード | 見られる(編集だけ不可) |
| 開けるがセルや行が編集できない | シート保護・ブック保護 | 見られる |
| 解凍時にパスワードを求められる | 暗号化ZIP | 見られない |
| 「アクセス権がありません」と出る | クラウド共有の権限設定 | 管理者の操作で解決しやすい |
実際に困るのは、上の表の「見られない」2つだけです。書き込みパスワードやシート保護は、読み取り専用で開けば内容は確認できます。コピーして別ファイルに貼り直せば、実務上は十分なことが多い。クラウド(Google ドライブ、Microsoft 365など)の権限エラーは、自社の管理者アカウントで所有権や共有設定を変更できる場合があるため、情報システム担当か契約の管理者に相談するのが先です。
つまり、本当に手が止まるのは「暗号化されたファイル」に限られます。まずそれが何件あるのかを数えてください。10件あると思っていたものが2件だった、ということはよくあります。
本人に連絡が取れる場合は、一度にまとめて頼む
前任者と連絡が取れるなら、ここが最短ルートです。ただし退職後の協力は業務命令ではなく任意のお願いになるため、頼み方で結果が変わります。
避けたいのは、思い出すたびに単発で連絡してしまうことです。「あのファイルのパスワードを教えてください」を3日おきに送ると、相手の負担感は回数で積み上がります。
- 開かないファイルを全部洗い出してから、一度の連絡にまとめる
- ファイル名・保存場所・更新日を一覧にして添える(相手が探さなくて済む)
- パスワードそのものではなく「どのルールで付けていたか」を聞く形も有効(例:案件名+年月など、複数ファイルが一度に解ける)
- 返信期限は切らず、「お手すきのときで構いません」と添える
パスワードは、できればメールとは別の手段(電話、チャットなど)で受け取り、社内の決まった保管場所に記録します。受け取ったあとは、暗号化を解除したコピーを共有フォルダに置き直してください。パスワード付きのまま置いておくと、同じ問題が半年後にもう一度起きます。
退職後の前任者への連絡は、聞いてよい範囲と角が立つ範囲があります。詳しくは退職後の前任者に質問していいか。連絡の取り方と限界にまとめています。
連絡が取れない場合、社内で先に試すこと
退職代行経由だった、連絡先が分からない、関係が良好ではない。こうした場合でも、社内に同じ情報が残っていることがあります。
- 共有フォルダやクラウドの「以前のバージョン」:上書き保存される前の、暗号化していない版が残っている場合があります
- メールの添付ファイル:前任者が社内に送った段階ではパスワードなし、というケースは少なくありません。退職者のメールボックスを残してあるなら、添付ファイル付きのメールを日付順に見ていく
- 送信済みの会議資料:採用会議や経営会議に出した応募状況の報告資料は、暗号化されていないことが多い
- 印刷物:面接時に使った応募者一覧、稟議に添付した見積書。紙のほうが残っていることがあります
- 会計・経理の控え:媒体の契約内容は、請求書と稟議書からかなり復元できます
退職者のメールボックスを急いで削除してしまうと、この復元手段がなくなります。アカウントの停止と削除は別に考えてください。
元データは、社外に残っている
ここが本題です。採用のデータは、自社のファイルだけに存在しているわけではありません。むしろ多くは、取引先側のシステムに原本があります。
| 開けないファイルの中身 | 取り直せる先 | 依頼・確認の仕方 |
|---|---|---|
| 応募者の一覧、選考状況 | 求人媒体の管理画面 | 応募者一覧をCSVで出力。期間を指定して全件 |
| 媒体の契約内容・掲載期間・金額 | 媒体の営業担当、代理店 | 「現在有効な契約の一覧をください」と依頼 |
| 進行中の推薦候補者 | 人材紹介会社 | 推薦済み・選考中の候補者の状況を一覧で |
| 求人原稿の本文・写真 | 媒体の管理画面、制作会社 | 掲載中なら画面からコピーできる |
| 支払い履歴・残予算 | 経理、媒体の請求書 | 請求書から契約を逆算する |
| 内定者に提示した条件 | 本人に渡した書面、労務の控え | 労働条件通知書の控えを確認 |
媒体の管理画面に入れないと取り出せないものもありますが、それは別の詰まりどころです。認証メールや二要素認証の回復手順は求人媒体の管理画面に入れないときの確認手順で扱っています。契約そのものの洗い出しは求人媒体の棚卸しで何を確認するかが参考になります。
媒体営業や紹介会社に連絡するとき、「前任者が退職して分からない」と事情をそのまま伝えて構いません。相手にとっても取引を続けたい相手ですから、対応してもらえることが多い現場感です。
解除ツールを使う前に確認したいこと
それでも、どうしても必要なファイルが残ることはあります。その場合に外部の解除ツールやサービスを検討する前に、次の点を確認してください。
- そのファイルに応募者の個人情報が入っていないか。履歴書や面接メモを含むファイルを外部サービスにアップロードすることは、本人から取得した利用目的の範囲を超える可能性があります
- 自社の情報セキュリティ規程や、委託先との契約に抵触しないか
- 出所の不明なソフトをダウンロードして業務PCで実行することのリスク
- かかる時間と費用に対して、そのファイルが本当に見合うか(取り直しのほうが早いことが多い)
判断に迷う場合は、いったん保留にして、取り直せる情報から復旧を進めるほうが実務は前に進みます。
開いたあと、同じことを繰り返さない
無事に中身が手に入ったら、次の担当者が同じ壁にぶつからないようにします。難しいことはしません。
個人がパスワードを決めるのをやめ、保護はファイル単位ではなくフォルダの権限で行うに切り替えます。応募者情報だけ閲覧できる人を限定し、それ以外の契約書や原稿は採用に関わる人が全員見られる状態にしておく。フォルダ構成と権限の考え方は採用の共有フォルダを作り直す。最小のフォルダ構成と権限に、管理表そのものを作り直す場合の最小構成は応募者管理表をExcelで作り直す。最低限の列と運用ルールにまとめています。
開かないファイルを前に手が止まっている状態は、実際には「どこに原本があるか分かれば動ける」状態であることがほとんどです。ただ、どの媒体と契約していて、誰が選考中で、どのデータが社外に残っているのかを棚卸しする作業そのものに手が回らない、というのが多くの会社の実情だと思います。
採用担当引き継ぎ代行では、止まった求人活動の復旧、後任の採用、引き継ぎと業務改善までを4ヶ月で行います。後任は採用担当の経験者でなくて構いません(当社が育てて引き継ぎます)。費用の内訳は料金プランをご覧ください。
まずは採用ストップ診断(媒体アカウント・契約・進行中の応募者の棚卸し)までは無料です。開かないファイルが何件あるか分からない段階でも構いません。LINE公式からご相談ください。