媒体やツールのIDとパスワードを、個人任せにしない形に直す
前任者が使っていた求人媒体や適性検査、Web面接ツールのアカウントをようやく取り戻した。ところが、変更した新しいパスワードは後任の手帳に書かれ、認証コードは後任の個人携帯に届く設定になっている。これでは持ち主の名前が変わっただけで、次に誰かが辞めたときにまた同じ回収作業が必要になります。
この記事は、回収を終えた後の「持ち方」に絞って整理します。回収の手順そのものは採用担当の退職時に回収すべきアカウントと情報で扱っています。ここでは、台帳の作り方、パスワードの共有方法、二要素認証の受け取り先、権限の分け方、退職時に止める手順を、一続きの運用として組み立てます。
回収の次に決めるのは「誰が鍵を持つか」
アカウントが個人任せになる原因は、担当者の意識ではありません。登録や変更が担当者一人の判断で完結し、それを会社が知る仕組みがないためです。運用を直すときの原則は次の3つです。
- 契約名義と登録メールアドレスは会社のものにする
- パスワードの保管場所を社内で1か所に決める
- 人が抜けたときに止める手順を、抜ける前に書いておく
この3つを支える道具が、次に作る台帳です。
台帳を作る:誰がどのIDを持っているか
台帳は「どのサービスに、誰が、どの権限で入れるか」を一覧にしたものです。表計算ソフトで作ってかまいません。ただし、**台帳にはパスワードそのものを書きません。**書くのは「どこに保管しているか」までです。
| 列 | 書く内容 | 書かないもの |
|---|---|---|
| サービス名・用途 | 求人媒体、適性検査、日程調整など | — |
| 契約名義 | 法人名、契約担当部署 | 個人の氏名だけの記載 |
| ログインID | 登録しているメールアドレス | パスワード |
| 管理者 | 管理部門の責任者と代理の2名 | — |
| 操作者 | 日々操作する担当者の氏名 | — |
| 二要素認証の受け取り先 | 共用アドレス、貸与端末など | 個人携帯の番号 |
| パスワードの保管場所 | 管理ツールの保管庫名など | パスワードの値 |
| 最終確認日 | 台帳の内容を照合した日 | — |
新しいツールを契約するときは、契約の手続きと同時にこの台帳へ1行足すことをルールにします。行が足されていない契約は、経理が支払いを止めて確認する、という運用にしておくと抜けを拾いやすくなります。
パスワードの共有:表計算に平文で書かない
台帳と同じファイルにパスワードを並べて書くと、ファイルが転送されたり複製されたりした時点で、誰が見たのか追えなくなります。退職者が自分のパソコンに複製を残していても、会社からは分かりません。
担当者ごとにユーザーを分けられるなら分ける
媒体やツールによっては、1つの契約の中に担当者ごとのユーザーを追加できる場合があります。この場合は、1つのIDを複数人で使い回すより、一人ひとりにユーザーを発行するほうが管理しやすくなります。退職時はその人のユーザーを削除するだけで済み、他の人のパスワードを変える必要がないためです。
管理ツールを使う場合の最小構成
ユーザーを分けられないサービスは、パスワード管理ツールで共有します。最初から多機能に使う必要はなく、次の形で足ります。
- 採用用の保管庫を1つだけ作る
- 保管庫の所有者は管理部門の責任者と代理の2名にする
- 担当者には、操作に必要な項目だけを共有する
- パスワードを変えたら保管庫を更新し、台帳の最終確認日を書き換える
すぐに導入できない場合の暫定策としては、台帳とパスワードを別の場所に分け、パスワードは管理部門の責任者だけが開ける場所に置きます。担当者が変更したときは、その日のうちに責任者へ伝えることを決めておきます。
二要素認証の受け取り先を個人携帯にしない
二要素認証は、パスワードに加えて確認コードを求める仕組みです。このコードの届く先が個人携帯だと、パスワードを正しく管理していても、本人がいなくなった時点でログインできなくなります。
受け取り先の候補は次のとおりです。
- メールで届く場合:個人名のアドレスではなく、採用用の共用アドレスにする。移し方は採用の連絡先を個人名アドレスから共用アドレスへ移すを参照してください
- SMSで届く場合:会社名義の携帯電話を受け取り先にする
- 認証アプリを使う場合:会社の貸与端末に入れるか、認証コードを扱えるパスワード管理ツールに登録する
あわせて、設定時に表示されるバックアップコード(端末をなくしたときに使う予備の番号)も保管庫に入れておきます。台帳の「二要素認証の受け取り先」の欄が埋まっていない行は、まだ個人に依存している行です。
管理者は管理部門、担当者は操作権限だけ
多くのツールには、ユーザーの追加や削除ができる管理者権限と、日々の作業だけができる操作権限があります。管理者権限を担当者本人が持っていると、その人が辞めるときに「止める側」と「止められる側」が同じ人になってしまいます。
そのため、管理者権限は管理部門の責任者と代理の2名が持ち、担当者には原稿の編集や応募者の対応に必要な操作権限だけを渡します。代理を置くのは、責任者が不在のときにも権限を止められるようにするためです。媒体の権限を段階ごとにどう渡していくかは、後任に媒体の管理画面の権限を、どこまで渡すかで詳しく扱っています。
退職・異動のときに止める手順
止める作業は、最終出社日にまとめて行います。台帳があれば、該当者の行を抜き出すだけで作業の一覧ができあがります。
| 順番 | やること | 担当 |
|---|---|---|
| 1 | 台帳から、本人が操作者・管理者になっている行を抜き出す | 管理部門 |
| 2 | 個別に発行していたユーザーを削除または停止する | 管理部門 |
| 3 | 共有していたIDのパスワードを変更し、保管庫を更新する | 管理部門 |
| 4 | 二要素認証の受け取り先が本人になっていないか確かめ、なっていれば付け替える | 管理部門 |
| 5 | パスワード管理ツールの共有を解除する | 管理部門 |
| 6 | 台帳の操作者欄と最終確認日を書き換える | 管理部門 |
手順3と4は、本人がまだ在籍しているうちに済ませるほうが安全です。付け替えの途中で確認コードが求められた場合に、本人に受け取ってもらえるためです。
台帳を古くしないために
台帳は作った時点がいちばん正確で、放っておくと少しずつ実態からずれていきます。新しいツールの契約、担当者の交代、パスワードの変更のたびに更新するのが基本です。加えて、月に1回は最終確認日が古い行を見直し、使っていないアカウントがあれば解約や停止を検討します。
アカウントの持ち方を直す作業は、採用が止まっている最中には後回しにされがちです。しかし、ここを個人任せのままにしておくと、次の担当交代でも同じ回収作業を繰り返すことになります。
当社の採用担当引き継ぎ代行では、止まった求人活動を立て直し、後任の採用担当を採用して育てたうえで、こうした台帳や権限の設計を社内に残す形で引き継ぎます。後任は採用担当の経験者でなくてかまいません。費用は料金プランにまとめています。まずは何が残っていて何が抜けているかを確かめたい場合は、採用ストップ診断(媒体アカウント・契約・進行中の応募者の棚卸し)までは無料でご利用いただけます。ご相談はLINE公式から受け付けています。