内定を出したまま返事が来ていない候補者への催促のしかた
採用担当が退職したあと、選考の記録をたどっていくと「内定を出したところまでは分かるが、その後どうなったか分からない」候補者が出てくることがあります。承諾書も辞退の連絡も残っておらず、前任者と本人のやり取りだけで止まっている状態です。
この状態がやっかいなのは、会社側からは「返事待ち」に見えていても、候補者側からは「返事をしたのに音沙汰がない」「もう連絡が来ないから他社に決めた」と見えている場合があることです。どちらなのかを確かめないまま催促のメールを送ると、行き違いが大きくなります。まず事実を固め、そのうえで期限を切り直す、という順番で進めます。
まず「いつ、どんな条件で内定を出したか」を確定させる
催促の文面を考える前に、会社として何を通知済みなのかを確認します。ここが曖昧なまま連絡すると、候補者から条件を聞き返されたときに答えられません。
探す場所は、おおむね次の順で当たると見つかることが多いです。
| 探す場所 | 分かること | 注意点 |
|---|---|---|
| 前任者の会社メール(送信済みフォルダ) | 内定通知の送信日、本文、回答期限 | 「内定」「お祝い」「条件」などで全文検索する |
| 求人媒体・ATSのメッセージ履歴 | 媒体経由でやり取りしていた場合の通知日 | 媒体を経由せず個人メールに移っていることがある |
| 人材紹介会社の担当者 | 推薦日、内定連絡日、本人の反応 | 紹介経由なら会社より状況を把握している場合がある |
| 稟議・決裁の記録 | 提示予定だった給与・入社日 | 実際に通知した条件とずれていることがある |
| 共有フォルダ内の内定通知書・労働条件通知書 | 書面の有無と記載内容 | 下書きのまま送っていない場合もある |
確認したいのは、通知日・提示条件・回答期限の3点です。 このうち回答期限が書かれていないケースは珍しくありません。その場合は「期限を設定していなかった」という前提で進めます。
前任者の個人携帯や個人メールだけでやり取りが進んでいた形跡がある場合は、前任者の個人携帯・個人メールで進んでいた候補者をどう見つけるかの手順で痕跡を洗ってください。書式そのものが見当たらないときは内定通知書・労働条件通知書の書式が見つからないときも参考になります。
口頭で承諾していた形跡があるかを先に確かめる
書面の承諾書が無くても、電話や面接の場で本人が「お受けします」と答えていた場合、会社と本人の間で労働契約が成立していると解される場合があります。この違いは大きく、扱いが変わります。
- 承諾の形跡がない → 「回答待ちの候補者」。期限を切って回答を求める
- 口頭承諾の形跡がある → 「入社予定者」。催促ではなく、入社に向けた連絡として扱う
口頭承諾の形跡は、前任者のメール文中の表現(「先日はご快諾いただき」など)、面接官の記憶、紹介会社への報告、入社日の社内共有などから読み取れます。この段階で会社側から一方的に「なかったこと」にするのは、労働契約の取消(解雇に準じた扱い)として問題になる場合があります。 判断に迷うときは、連絡を送る前に顧問の社会保険労務士や弁護士に相談してください。
口頭承諾があったうえで連絡が途切れている場合は、催促ではなく関係の立て直しが必要です。進め方は内定者フォローが途絶えたときの立て直し方にまとめています。
期限が過ぎている場合は、期限を切り直して伝える
回答期限が設定されていて、すでに過ぎている。あるいは期限そのものが無い。どちらの場合も、過ぎた期限を持ち出して責めるのは得策ではありません。連絡が途切れた原因が会社側(担当者の退職)にある可能性が高いからです。
連絡文の骨格は、次の4点で足ります。
- 担当が変わったこと(前任者の退職理由には触れない)
- 内定通知を送った日と、提示した条件の要点
- 新しい回答期限(発信日から1週間程度が目安)
- 決めかねている点があれば聞かせてほしい、という一文
○○様 お世話になっております。株式会社△△の□□と申します。採用の担当が交代し、本件を引き継いでおります。 ○月○日付でお送りした採用内定のご連絡につきまして、当方の体制変更によりご連絡が滞っておりましたこと、お詫び申し上げます。 提示させていただいた条件は、職種○○、月給○○円、入社日○月○日です。内容に変更はございません。 つきましては、○月○日(○)までにご意向をお聞かせいただけますと幸いです。ご検討にあたって確認したい点や、入社日のご相談がありましたら、遠慮なくお知らせください。
期限は「いつまで」と日付で書きます。「お早めに」では動きません。あわせて、入社日を動かせる余地があるなら先に伝えておくと、他社と迷っている候補者の判断材料になります。
送る手段は、前任者が使っていた経路(媒体メッセージ、メール、紹介会社経由)をそのまま使うのが基本です。紹介会社経由の候補者に直接連絡すると、手続き上の混乱を招くことがあります。担当交代の伝え方そのものは選考中の応募者に「担当が変わりました」をどう伝えるかで整理しています。
それでも返事が来ないとき、採用枠を埋めてよいか
新しい期限を過ぎても反応がない場合、次の順で判断します。順番を飛ばすと、後から本人が現れたときに対応できなくなります。
| 順番 | 確認すること | 判断 |
|---|---|---|
| 1 | 連絡が本人に届いているか(メール不達、媒体の退会、電話の不通) | 届いていなければ別経路で1回試す |
| 2 | 承諾の形跡があるか | あれば枠を埋める判断は保留し、専門家に相談 |
| 3 | 期限を切った連絡を、何回・どの経路で送ったか | 経路を変えて2回程度は送っておく |
| 4 | 現場の欠員がどれだけ切迫しているか | 切迫していれば並行して募集を再開する |
| 5 | 打ち切りの意思表示を送ったか | 送ったうえで、社内の記録に残す |
承諾の形跡がない候補者については、期限を切った連絡を送り、さらに一定期間反応がない時点で「ご連絡がないため、今回は選考を終了とさせていただきます。状況が変わりましたらご一報ください」と一文を送って区切ります。区切りの回数と間隔の考え方は連絡が取れない応募者を、いつ選考終了にするかで詳しく扱っています。
実務上は、返事を待ち続けるより、同じ枠の募集を並行して再開しておくほうが安全なことが多いです。ただし後から承諾の返事が届く可能性がある以上、他の候補者に内定を出す前に、待っている候補者へ打ち切りの意思表示を済ませておいてください。二重に内定を出した状態は、どちらの相手にも説明が立ちません。
同じ状態を繰り返さないために
この種の宙ぶらりんは、内定通知に回答期限が書かれていない、承諾の記録が本人のメールにしか残っていない、という2点から生まれることがほとんどです。今後の内定通知には、回答期限の日付と、承諾の連絡先(個人ではなく採用窓口のアドレス)を必ず書いてください。承諾の返信は共有フォルダか管理表に転記し、担当が誰であっても状況が追える形にしておきます。
内定を出したままの候補者が複数いる、承諾したのか辞退したのか分からない人がいる、そもそも誰に内定を出したのかが分からない。こうした状態は、採用担当が抜けた直後にはよく起きます。
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