内定通知書・労働条件通知書の書式が見つからないとき
面接まではなんとか進めた。応募者にも「今週中にご連絡します」と伝えてある。ところが、いざ内定を出そうとして手が止まる。前任の採用担当が使っていた内定通知書のWordファイルが、どこにも見当たらない。共有フォルダを探しても、あるのは数年前の議事録ばかり。本人のPCは返却されたが、ログインパスワードが分からない、あるいはすでに初期化されている——。
この状態でよくあるのが、インターネットで拾ったテンプレートをそのまま使ってしまうことです。内定通知書ならまだ実害は出にくいのですが、労働条件通知書は法律で明示すべき内容が決まっているため、出所の分からない様式を使うと後から差し替えが必要になることがあります。ここでは、探す・逆引きする・そろえる・置き直す、の順に整理します。
作る前に、まず探す
新しく作るより、社内にある実物を見つけるほうが速く、内容も自社の実態に合っています。探す場所には優先順位があります。
- 共有フォルダの「人事」「労務」以外の場所。採用書式は「総務」「契約」「入社手続き」など、担当者の感覚でバラバラの場所に置かれていることが多いです。フォルダ名ではなく、ファイル名で「内定」「労働条件」「雇入」などを全体検索します
- メールの送信済みトレイ。前任者のメールアカウントが残っていれば、過去の内定者宛の送信メールに、添付ファイルとして実物が残っています。アカウントを止める前に必ず確認してください
- 会計・労務のクラウドサービス。雇用契約の電子化サービスや労務管理システムを使っていた場合、書式はそのサービス内にあります
- 顧問社労士。就業規則の作成を依頼している社労士がいるなら、労働条件通知書の様式も持っていることがほとんどです
- 過去に入社した社員の個人ファイル(次章)
前任者のPCやメールを扱うときは、応募者の履歴書など個人情報の取り扱いも同時に発生します。この点は応募者の個人情報が退職者のPCや個人アカウントに残っているときで詳しく整理しています。
過去に入社した社員のファイルから逆引きする
書式データが見つからなくても、過去に入社した社員の労務ファイルには「送った実物」が保管されていることが多いです。紙のファイルでもかまいません。ここから逆引きします。
- 直近1〜2年で入社した社員のファイルを2〜3人分開く
- 労働条件通知書(または雇用契約書)の控え、内定通知書の控えを探す
- 見つかったら、氏名・日付・条件が入っている箇所を伏せて、そのままWordやExcelで打ち直す
打ち直しは手間に見えますが、自社が実際に使っていた文言をそのまま再現できるため、社内の説明がいりません。複数人分を見比べると、雇用形態や職種による書き分けのパターンも見えてきます。
注意点は、そのファイルが古い場合です。労働条件の明示ルールは改正されており、数年前の様式には今は必要な項目が入っていないことがあります。内定通知書は原型として使えますが、労働条件通知書は次章の確認を挟んでください。
最低限そろえる4種類
採用を再開するために、当面そろえるべき書式は4つです。すべてを一度に作ろうとせず、この4つに絞ります。
| 書式 | 使う場面 | 自社で作ってよいか | 出所の優先順位 |
|---|---|---|---|
| 面接案内 | 日程確定後の連絡 | 作ってよい(メール文で足りる) | 送信済みメールから流用 |
| 不採用通知 | 選考見送りの連絡 | 作ってよい | 送信済みメールから流用 |
| 内定通知書 | 採用を決めたとき | 作ってよい(書きすぎに注意) | 過去入社者のファイル |
| 労働条件通知書 | 労働条件の明示 | 自己流で作らない | 社労士・公的な様式 |
面接案内と不採用通知は、体裁より速さが優先されます。文面が用意できていない状態で応募者を待たせると、選考中の候補者から順に離れていきます。応募対応が止まることの影響は求人を止めている間に、応募者はどうなるのかにまとめました。
労働条件通知書だけは、自己流で作らない
労働条件通知書は、他の3つと性質が違います。労働基準法第15条により、労働契約を結ぶ際に一定の労働条件を明示することが会社に義務づけられており、明示すべき項目は労働基準法施行規則で定められています。つまり、体裁の問題ではなく、書いていない項目があること自体が問題になり得ます。
明示事項には、契約期間、就業の場所と従事すべき業務、始業・終業時刻や休憩・休日、賃金の決定や計算・支払方法、退職に関する事項などが含まれます。加えて2024年4月からは、就業場所・業務の「変更の範囲」の明示、有期労働契約における更新上限の明示などが追加されています。前任者が数年前に作った様式をそのまま使うと、この追加分が抜けることになります。
したがって、労働条件通知書については次のどちらかに寄せてください。
- 顧問社労士がいる場合は、社労士に現行の様式を出してもらう
- いない場合は、厚生労働省が公開しているモデル労働条件通知書の様式を確認し、自社の内容を当てはめる
いずれの場合も、就業規則や給与規程と食い違いがないかは社内で確認が必要です。固定残業代を採用している、試用期間中の条件が本採用と違う、といった自社固有の事情は様式には書かれていません。判断に迷う項目が出たら、埋めずに社労士に確認するほうが、後から訂正するより早く済みます。
内定通知書は「書きすぎない」
内定通知書は法律で様式が決まっているわけではありません。ただし、採用内定の通知によって、一定の条件付きで労働契約が成立したと判断される場合があります。そのため、確定していない条件を先に書いてしまうと、後から変更しづらくなります。
盛り込む項目は、この程度で足ります。
- 採用を決定した旨と、対象の職種・雇用形態
- 入社予定日
- 提出してもらう書類と提出期限
- 承諾の意思表示の方法と期限
- 労働条件の詳細は労働条件通知書で別途明示する旨
- 問い合わせ先(担当者名と連絡先)
給与額を内定通知書に書くかどうかは会社によりますが、書くなら労働条件通知書と一円単位で一致させてください。二つの書面で数字が違うと、入社前に信頼を損ないます。入社日が近い内定者の手続きが止まっている場合は、入社直前の内定者の手続きが止まっているときの確認項目を先に確認するほうが優先度が高いことがあります。
見つけたら、置き場所まで決めて終わりにする
書式を復元しただけでは、同じことがまた起きます。最後にこの3つをやってください。
- 共有フォルダの決まった場所に置く(「採用_書式」など、探さなくても分かる名前で)
- ファイル名に更新日を入れる(例:労働条件通知書_雛形_2026-09.docx)
- 差し込む箇所を〇〇や【 】で明示し、直接編集しない元ファイルを1つ残す
権限設定も忘れずに。個人アカウントのドライブに置くと、担当が代わったときに同じ問題が再発します。書式以外にも同じ構造で消える情報は多く、何がどこにあるかを一覧にする作業については採用業務の属人化を解く。引き継ぎ書に必ず書く12項目が使えます。
書式が見つからないのは、たいてい氷山の一角
書式が消えている会社では、媒体のログイン情報、選考中の応募者リスト、エージェントとの契約書も同じように所在不明になっていることが多いです。ひとつずつ探していると、その間も応募者は待たされます。
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まずは現状の把握からで結構です。採用ストップ診断(媒体アカウント・契約・進行中の応募者の棚卸し)までは無料で行っています。ご相談はLINE公式アカウントから、書式が見つからないという一行だけでもかまいません。