不採用者の応募書類は、いつまで保管していつ捨てるか
採用担当が退職したあと、机の引き出しやキャビネットから履歴書・職務経歴書の束が出てくることがあります。共有サーバーにも「2023年応募者」といったフォルダが残っている。中身を見ると、選考に進まなかった人の書類が何年分も混ざっている——これは珍しい話ではありません。
前任者は「いつか使うかもしれない」と残していたのか、単に捨てるタイミングを決めていなかったのか、いまとなっては分かりません。ここで問題になるのは、書類の存在そのものではなく、保管期間と廃棄方法を決めた人がもう社内にいないことです。この記事では、社内に正規に残っている応募書類をどう扱うかに絞って整理します。退職者の私物PCや個人メールに残っているケースは別の論点なので、応募者の個人情報が退職者のPCや個人アカウントに残っているときを参照してください。
保管期間に決まった年数はあるのか
まず前提として、不採用になった応募者の書類を「何年保管しなければならない」と一律に定めた法律の規定は、一般的には見当たりません。労働基準法が定める労働者名簿などの保存義務は、雇い入れた人が対象です。
一方で個人情報保護法には、利用する必要がなくなった個人データは遅滞なく消去するよう努める、という趣旨の規定があります。つまり方向としては「決められた年数まで持ち続ける」ではなく、必要がなくなったら消す。ただし何をもって必要がなくなったとするかは自社で決めるという構造になります。
もう一つ確認しておきたいのが、応募を受け付けたときに応募者へ何と伝えていたかです。求人媒体の応募フォームや自社サイトの応募ページに「取得した個人情報は◯年間保管します」「不採用の場合は責任をもって破棄します」といった記載があれば、その内容が自社のルールになります。前任者が作った文面が生きている可能性があるので、媒体の掲載原稿と自社サイトの応募ページは必ず確認してください。
保管期間を自社で決めるときの判断材料
保管を続ける理由は、実務上ほぼ二つに絞られます。再応募や再アプローチの可能性と、選考の振り返り(どんな人が応募してきたかの記録)です。逆に保管を続けるコストは、保管場所と、漏えいしたときの影響です。この兼ね合いで期間を決めます。
| 書類の区分 | 保管を続ける理由 | 期間の目安(自社で決める前提) |
|---|---|---|
| 書類選考で見送った人 | 再応募時の重複確認 | 半年〜1年程度に設定する会社が多い |
| 面接まで進んで見送った人 | 別ポジションでの再検討、再アプローチ | 1年程度で区切る例が多い |
| 辞退・連絡が途絶えた人 | 再応募時の経緯確認 | 見送り者と同じ扱いにすると管理が楽 |
| 内定辞退者 | 事情の記録、再打診 | 1年程度。個別に判断する場合もある |
上の年数はあくまで目安で、法的な根拠があるものではありません。決め方のコツは、区分ごとに細かく変えないことです。**期間を分けるほど運用が複雑になり、結局誰も廃棄しなくなります。**迷ったら「不採用通知を出した日から1年」のように一本化したほうが続きます。
なお、保管している応募者に改めて声をかけられるかどうかは、取得時の利用目的の書き方と経過期間によります。この論点は過去の応募者リストを使って、応募ゼロの期間を埋めるで扱っているので、再アプローチを検討している場合はそちらを先に読んでください。
「返却します」と約束していた場合
紙の履歴書を郵送で受け付けていた会社では、応募要項に「選考結果に関わらず応募書類は返却いたします」と書いていることがあります。この一文が残っているのに返却していない書類が出てきたら、扱いは二つです。
一つは、いまからでも返却する方法。不採用通知からかなり時間が経っている場合、突然書類が返送されると応募者が戸惑うため、短い添え状を同封します。「選考時にお預かりした書類をお返しします。当社の事務手続きの都合で送付が遅れましたことをお詫びします」程度で足ります。担当者が退職したことを詳しく書く必要はありません。
もう一つは、返却せず破棄する方法。連絡先が変わっていて返送できない、あるいは大量にあって現実的でない場合です。この場合も、社内では「返却の約束があったが破棄した」という事実を記録に残しておきます。そのうえで、今後の応募要項からは返却の記載を外し、「応募書類は返却せず、当社の責任で破棄します」に統一しておくと、同じことが繰り返されにくくなります。求人原稿を触るタイミングでまとめて直すなら、求人原稿を刷新するときに直す7か所もあわせて確認してください。
紙とデータ、それぞれの捨て方
廃棄は「捨てた」だけでは不十分で、復元できない状態にすることと、その事実を残すことがセットになります。
| 紙の書類 | 電子データ | |
|---|---|---|
| 具体的な方法 | シュレッダー、または溶解処理の専門業者に委託 | ファイル削除に加え、ごみ箱・バックアップ・共有ドライブの複製も削除 |
| 見落としやすい場所 | 面接官が持ち帰ったコピー、会議室に残った資料 | 個人フォルダ、メール添付、ダウンロードフォルダ、外付けドライブ |
| 記録の残し方 | 廃棄日・件数・担当者名を台帳に記入。業者委託なら証明書を保管 | 削除日・対象フォルダ・実施者を台帳に記入 |
| 注意点 | 家庭用シュレッダーは細断が粗い機種もあるため裁断幅を確認 | 採用管理システム上のデータは契約解約時に別途対応が必要 |
電子データで特に抜けやすいのが、求人媒体や採用管理システムの中に残っている応募者情報です。自社のサーバーを片づけても、媒体の管理画面には応募履歴が残り続けます。契約やアカウントの状態が分からない場合は、採用担当の退職時に回収すべきアカウントと情報で全体の棚卸し手順を確認してから着手すると、二度手間になりにくくなります。
記録の残し方は、凝ったフォーマットは不要です。エクセル1枚に「廃棄日/対象(例:2024年◯月応募分・書類選考見送り)/件数/方法/実施者/立会者」を並べるだけで十分機能します。この台帳があると、後日「あの人の書類はまだあるか」と聞かれたときに、探さずに答えられます。
決めたルールを、次の担当者に渡す形にする
保管期間を決めても、廃棄する日を誰かがカレンダーに載せなければ実行されません。四半期に一度、あるいは半期に一度、「保管期間を過ぎた応募書類を廃棄する日」を固定してしまうのが現実的です。担当者が変わっても日付が残っていれば作業は続きます。
そして、決めた内容は口頭ではなく引き継ぎ書に書きます。保管場所、保管期間、廃棄の方法、台帳の置き場所、応募要項に書いている文言。この5つが書いてあれば、後任が未経験者でも同じ運用を続けられます。引き継ぎ書に何を書くかの全体像は採用業務の属人化を解く。引き継ぎ書に必ず書く12項目にまとめています。
応募書類の整理は、優先順位としては応募者対応や求人の再開より後ろに来ることが多い作業です。ただ、担当者が不在のまま放置すると、量が増えて誰も手をつけられなくなります。求人を再開するタイミングで、一度まとめて片づけておくと後が楽になります。
手が回らないときは
採用担当が抜けた直後は、応募者への連絡、媒体の契約確認、後任探しが同時に降ってきます。書類の整理まで社内だけで進めるのが難しいときは、外部の手を借りる選択肢もあります。
採用担当引き継ぎ代行では、止まった求人活動の復旧、後任の採用、そして引き継ぎと業務改善までを一括で担当します。後任は採用担当の経験者でなくてかまいません。当社が育てて引き継ぐことを前提にしているためです。費用は料金プランに掲載しています(標準プランは4ヶ月・200万円/税別・広告費込み・分割可)。
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