試用期間の満了が近い社員の本採用判断が止まっているとき
採用担当が退職したあとに見落とされやすいのが、すでに入社している社員の試用期間です。採用の進行中案件は「応募者が待っている」ので誰かが気づきますが、試用期間の満了日は誰にも催促されません。社内の誰かが気づかないまま日が過ぎ、就業規則の定めどおり自動的に本採用になっている、という状態が起きます。
本採用になること自体が問題なのではありません。問題は、判断した記録が残らないまま社員の身分が確定してしまうことと、本来なら延長や見直しを検討すべきケースがあった場合に、選択肢が消えた後で気づくことです。この記事では制度の解説ではなく、満了日をいつまでに洗い出し、誰に何を聞き、どこから専門家に渡すかという段取りに絞って整理します。
満了日は入社日から逆算するしかない
前任者が管理表を作っていない場合、試用期間の満了日を教えてくれるものは社内に存在しません。次の順番で拾います。
- 直近12ヶ月の入社者を給与計算のデータか社会保険の取得届から拾う(人事台帳より漏れが少ないことが多い)
- その人の雇用契約書または労働条件通知書を探し、試用期間の記載を確認する
- 契約書に記載がなければ就業規則の試用期間の条文を確認する(3ヶ月または6ヶ月と定めている会社が多い)
- 入社日に期間を足して満了日を出す
契約書と就業規則で期間が違っている場合があります。前任者が個別に短くしたり、延長の可能性を書き足していたりするためです。食い違いが見つかったときは自己判断せず、後述のとおり専門家に確認してください。契約書そのものが見つからない場合の探し方は内定通知書・労働条件通知書の書式が見つからないときにまとめています。
対象者を1枚の表にする
洗い出した結果は、次の項目だけの表にします。凝ったものは不要です。
| 氏名 | 入社日 | 試用期間 | 満了日 | 判断の着手期限 | 現在の状態 |
|---|---|---|---|---|---|
| A | 2026/7/1 | 3ヶ月 | 2026/9/30 | 満了済み | 要確認 |
| B | 2026/8/16 | 3ヶ月 | 2026/11/15 | 10月中旬 | 未着手 |
| C | 2026/6/1 | 6ヶ月 | 2026/11/30 | 10月末 | 未着手 |
着手期限は、満了日の1ヶ月以上前に置いておくと動きやすくなります。理由は後述しますが、本採用しない・延長するという判断には手続き上の時間が必要になることが多いためです。すでに満了日を過ぎている人がいたら、その人を最優先で扱います。
配属先に聞くのは3点でいい
採用の経験がない方が配属先にヒアリングしようとすると、評価シートを作る話になりがちです。満了が迫っている状況では間に合いません。上長に聞くのは次の3点に絞ります。
- 勤怠:無断欠勤や遅刻が繰り返されていないか。あった場合、何回か
- 仕事の水準:任せた仕事が期限内に終わっているか。想定していたレベルとの差はどこか
- 指導の記録:注意や指導をしたことがあるか。あるなら、いつ・何を伝え、その後どう変わったか
3つ目が最も重要です。問題があると感じていても一度も本人に伝えていないケースは珍しくありません。指導の事実と記録があるかどうかで、その後に取れる選択肢が変わります。メールやチャットで注意した履歴が残っていれば、それも探しておいてください。
この3点で「特に問題なし」と返ってくれば、本採用に進めて差し支えないことがほとんどです。入社直後のフォロー全般が止まっている場合は入社直後の社員のフォローが止まっているときに拾うこともあわせて確認してください。
判断は3つに分かれる。うち2つは早めに専門家へ
| 判断 | 社内で進められるか | 目安の着手時期 |
|---|---|---|
| 本採用する | 社内で完結しやすい | 満了の2週間前 |
| 試用期間を延長する | 就業規則の根拠と本人への説明が必要 | 満了の1ヶ月前 |
| 本採用しない | 社内判断で進めない | 検討し始めた時点 |
延長と本採用見送りには、社内の都合では動かせない制約があります。
試用期間の延長は、就業規則に延長できる旨とその期間の定めがないと難しいとされています。定めがあっても、理由の説明と本人への通知が必要になる場合が多く、満了日を過ぎてから「やっぱり延ばします」と言うのは通りにくい進め方です。
本採用の見送りは、法律上は解雇に準じた扱いになるのが一般的な整理です。労働基準法では、雇入れから14日を超えて引き続き使用している労働者を解雇する場合、原則として30日前の予告か解雇予告手当が必要とされています。つまり、満了日の直前に決めても手続きが間に合わないことがあります。
延長・見送りのどちらかが頭をよぎった時点で、顧問社労士か弁護士に相談してください。 相談の前に、先ほどの3点と契約書・就業規則の該当条文を揃えておくと話が早くなります。社労士にどこまで頼めるかは顧問社労士に採用業務をどこまで頼めるかを参照してください。
本採用にする場合でも、やっておくこと
問題なく本採用に進める場合でも、次の3つは残しておきます。
- 本人に口頭で伝える(1分で足ります。「試用期間が満了し、本採用となりました」で十分)
- 通知書を出すか、出さない場合も社内の記録として判断日と判断者を残す
- 試用期間後の条件変更の有無を確認する
3つ目が抜けやすい箇所です。前任者が採用時に「試用期間が明けたら基本給を上げる」「資格手当をつける」といった説明をしていることがあり、その約束が書面に残っていないと、本人だけが覚えている状態になります。採用時の求人票・労働条件通知書・面接メモを見比べ、食い違いがないか確認してください。本人から指摘されたときの初動は応募者に「前の担当者とは話が違う」と言われたときの対応と同じ考え方で進められます。
次の人で同じことを起こさないために
対象者の処理が終わったら、入社者名簿に「試用期間満了日」と「判断予定日(満了の1ヶ月前)」の列を足し、管理部門のカレンダーに登録します。作業としては10分ほどですが、これがないと担当者が変わるたびに同じ取りこぼしが起きます。採用と入社後の手続きのどちらが持つかを決めていない会社では、境界をどこに引くかも合わせて決めておくと抜けにくくなります。
試用期間の満了は、採用担当が不在でも待ってくれない期限のひとつです。同じように、媒体の契約更新日や選考中の応募者への返信も、社内の誰も見ていないまま日数だけが進みます。何がいつの期限なのかを一度に洗い出しておくと、優先順位がつけやすくなります。
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