人材紹介会社は何社まで付き合うか
採用担当が辞めたあと、受信箱を開くと人材紹介会社からの推薦メールが並んでいる。送り主の会社名を数えると5社、場合によっては10社を超えている。契約書がどこにあるかも分からず、どの会社と何を話していたかも分からない。とりあえず全部に返信しようとして、結局どれにも返せないまま数週間が過ぎている——という状態の方に向けた記事です。
ここで決めるべきは「どの紹介会社が優秀か」ではありません。担当者が不在の今、自社が責任を持って返答できるのは何社かという、処理能力の側からの線引きです。残す社数を先に決めてから、どこを残すかを選びます。
1社あたり、週にどれだけ時間がかかるのか
人材紹介会社との付き合いは、登録して終わりではありません。推薦が来たら書類を見て、合否を返し、通過なら面接日程を出し、面接後に評価を返す。この往復が発生します。
1社あたりの週の負荷は、推薦の本数によって変わります。あくまで目安ですが、おおよそ次のような時間感です。
| 作業 | 1件あたりの目安 | 週あたりの発生 |
|---|---|---|
| 推薦書類の確認と合否返答 | 10〜15分 | 推薦本数ぶん |
| 面接日程の調整(往復含む) | 15〜30分 | 書類通過者ぶん |
| 面接後の評価の返却 | 10〜20分 | 面接実施数ぶん |
| 担当者からの定例連絡・条件のすり合わせ | 15〜30分 | 1社につき週1回程度 |
週に3件の推薦が来る会社が1社あれば、それだけで1〜2時間は消えます。これが5社あると、推薦の本数も比例して増えるため、兼任で採用を持っている人の可処分時間をあっさり超えます。採用業務全体の時間の測り方は採用業務は月何時間かかるのか、測ってから後任を決めるで詳しく扱っています。
目安として、採用を兼任で持っている状態なら2〜3社、専任の担当が不在で管理部門が片手間に見ている状態なら1〜2社に収めると回しやすくなります。
返答が遅れると、推薦は自然に止まる
紹介会社を減らすことに抵抗がある方は多いと思います。「多く登録しておけば、そのぶん候補者が来るのでは」という発想です。
ただ実務では、返答が遅い会社への推薦は細っていきます。紹介会社の担当者は複数の求人を抱えていて、候補者に提案する順番を選んでいます。書類の返答が2週間返ってこない求人は、候補者に勧めにくくなります。候補者側も待たされれば他社に決まるため、担当者にとっては提案するだけ無駄になるからです。
つまり、返答できないまま多社を抱えている状態は、社数を絞った状態より候補者が来にくくなることがあります。登録社数と推薦の量は比例しません。比例するのは、返答の速さと推薦の量のほうです。
応募者側の目線でも同じことが起きます。返信の遅れがどう効いてくるかは応募者への返信速度が採用結果をどう変えるかにまとめています。
残す会社を選ぶ3つの基準
社数の上限を決めたら、どこを残すかを選びます。前任者が付き合っていた会社の中から、次の3点で絞ると判断がつきやすくなります。
1. 自社の職種で実績があるか
過去1〜2年で、その会社から入社した人がいるか。面接まで進んだ候補者がいるか。これが最も強い材料です。記録が残っていなければ、入社者の入社日と、当時その月に届いていた請求書を突き合わせると、どの会社経由だったか分かることが多いです。
同じ採用でも、製造の現場職と管理部門では得意な紹介会社が違います。実績がない会社は、担当者の印象がよくても今回は外す判断でかまいません。
2. 連絡の返りが速いか
再開連絡を出したときに、何日で返ってきたか。これは今から測れます。こちらが遅れた側であっても、2営業日以内に返す会社と、1週間音沙汰がない会社では、今後の往復の負担が変わります。
窓口そのものが切れている場合の再開手順は人材紹介会社との窓口が切れたときの再開連絡を参照してください。
3. 条件を理解しているか
推薦されてくる候補者が、求人票の条件からずれていないか。勤務地が通えない人、提示給与と希望が大きく離れている人ばかりが来る会社は、条件が伝わっていないか、伝えても精度が上がらないかのどちらかです。前任者が口頭で細かい条件を伝えていて、その内容がどこにも残っていない場合もあります。
残す会社には、再開時に求人票とは別に「今回はここを重視する」という3〜4行のメモを渡しておくと、推薦の精度が上がりやすくなります。
止める会社への連絡と、契約を切らずに休止する扱い
減らす側の会社に、黙って返信をやめるのは避けたほうがよいです。後で再開したくなったときに、こちらの評判が残ります。
連絡は短くてかまいません。要点は3つです。推薦を一旦止めてほしいこと、理由を簡潔に書くこと、再開の可能性を残すなら触れておくことです。
株式会社〇〇 △△様
いつもお世話になっております。弊社の採用担当が変わり、現在は体制の立て直しを進めております。
つきましては、一度ご推薦の受付を停止させていただきたく存じます。現在ご提案いただいている候補者様については、今週中に個別にご連絡いたします。
体制が整い次第、改めてご相談させていただく可能性がございます。その際はよろしくお願いいたします。
ここで大事なのは、契約の解約と推薦の停止は別の話であるという点です。人材紹介の基本契約は、成功報酬型であれば登録しているだけで費用は発生しないことが多く、無理に解約しなくても「推薦の受付を止める」だけで実務上の負荷はなくなります。
| 扱い | 費用 | 再開のしやすさ | 向く場面 |
|---|---|---|---|
| 推薦の停止(契約は維持) | 発生しないことが多い | 連絡1本で戻せる | 実績はあるが今は手が回らない |
| 契約の解約 | 発生しない | 契約の締結からやり直し | 今後も使う予定がない |
ただし、契約書に最低利用の定めや年会費の取り決めがある場合もあります。契約書が見つかったら、費用が発生する条件の箇所は必ず確認してください。
なお、進行中の候補者がいる会社を止めるときは、候補者本人への対応が先です。選考の途中で止まっている人への連絡の出し方は選考中の応募者に「担当が変わりました」をどう伝えるかに文面の骨格をまとめています。
絞ったあとに、記録を1枚残す
社数を絞ったら、残した会社の情報を1枚にまとめておきます。会社名、担当者名と連絡先、契約の締結日、手数料率、返金規定の有無、これまでの実績。この6項目があれば、次に担当が変わっても同じ混乱は起きにくくなります。
逆にここを作らないまま進めると、後任が着任したときに再び「どこと契約しているか分からない」状態から始まることになります。引き継ぎ書に何を書くかは採用業務の属人化を解く。引き継ぎ書に必ず書く12項目で整理しています。
紹介会社の社数を絞るのも、止める連絡を出すのも、やること自体は難しくありません。詰まるのは「どこと契約しているかを洗い出す」最初の一歩です。前任者しか知らない契約が残っていると、そこで止まります。
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