採用管理システム(ATS)の契約とデータをどう引き継ぐか
求人媒体の管理画面は総務でも開けるのに、応募者の履歴だけがどうしても追えない。そんなときは、前任者が採用管理システム(ATS=応募者の情報と選考の進み具合をまとめて管理するツール)を使っていた可能性があります。ATSは便利な反面、社内で触っているのが採用担当ひとりというケースが多く、その人が抜けた瞬間に「誰も中身を見られないのに毎月お金だけ出ていく箱」になりがちです。
この記事では、ATSを使っている会社が担当者不在のときに詰まる場所を、①管理者権限の付け替え、②契約更新日、③応募者データと媒体連携、の3つに分けて整理します。そのうえで、解約する場合にデータをどう持ち出すか、Excel運用に戻すなら最低限どの項目を残せばよいかまで具体的に示します。
ATSが止まると、媒体の復旧だけでは足りない
求人媒体の管理画面にログインできれば、掲載の停止や再開はできます。ただしATSを併用していた会社では、「誰がどの段階まで進んでいるか」という選考の履歴はATS側にしか残っていないことがよくあります。媒体側に見えるのは応募が届いた事実までで、その後の面接日程や評価コメントはATSの中です。
つまり、媒体のアカウント回収が終わっても、選考中の応募者の状態がわからないままということが起こります。媒体側の詰まりどころについては求人媒体の管理画面に入れないときの確認手順にまとめているので、そちらを先に片付けたうえで、この記事のATS側の作業に進んでください。
詰まるのは3か所に集約される
| 詰まりどころ | 症状 | 最初に見る場所 |
|---|---|---|
| 管理者権限 | 招待も設定変更もできない。閲覧しかできない | 現在のユーザー一覧と権限区分 |
| 契約 | 更新日も金額も不明。気づいたら自動更新 | 請求書・クレジットカード明細・利用規約 |
| データと連携 | 応募が入ってこない/履歴が追えない | 媒体連携設定・自動返信メールの設定 |
1. 管理者権限の付け替え
多くのATSは、ユーザーに「管理者」「一般」「閲覧のみ」といった権限区分を持たせています。前任者だけが管理者だった場合、残った社員のアカウントでは新しい人を招待できず、支払い情報も見られません。
前任者が在籍中なら、退職日前に自社の別の社員を管理者に昇格させてもらってください。すでに退職している場合は、ATSの提供会社に法人としての契約者であることを示して、管理者権限の移管を依頼するのが早道です。会社名義の契約であれば、契約書や請求書、法人ドメインのメールアドレスから本人確認が進むことが多いです。
このとき管理者は2名以上にしておくと、次に誰かが抜けたときに同じことが起きません。アカウント全般の回収については採用担当の退職時に回収すべきアカウントと情報で層別に整理しています。
2. 契約更新日と自動更新
ATSは年間契約・自動更新が採られていることが多く、解約には「更新日の○日前までに書面で通知」といった条件が付く場合があります。担当者不在のあいだに更新日を通過し、使っていない1年分を払い続けていた、という事態は避けたいところです。
確認したいのは、契約期間の開始日と終了日、更新の方式(自動か申込制か)、解約通知の期限と方法、そしてアカウント数に応じた課金かどうかの4点です。請求書が経理に届いていれば、そこから提供会社名と契約プランをたどれます。
3. 応募者データと媒体連携
ATSは求人媒体と連携し、応募が自動で取り込まれる設定になっていることがあります。この連携が前任者の個人アカウントや個人メールアドレスに紐づいていると、応募は届いているのに誰の目にも触れない状態が続きます。
自動返信メールの差出人名や署名も要確認です。退職した担当者の名前で「担当の◯◯です」と自動返信が飛び続けているケースがあります。応募者側から見た影響は求人を止めている間に、応募者はどうなるのかでも触れています。
解約する場合、何を持ち出すか
ATSを解約すると、蓄積された応募者情報は一定期間後に削除されるのが一般的です。解約の意思が固まったら、通知を出す前にエクスポート(データの書き出し)を済ませてください。
書き出しの形式はCSV(表計算ソフトで開ける形式)が多いのですが、履歴書や職務経歴書などの添付ファイルはCSVに含まれず、別途まとめてダウンロードする必要がある場合があります。ここを見落とすと、応募者の名前と日付だけが残って中身がない、という状態になります。
持ち出す前に確認したいのは次の点です。
- 応募者一覧のCSVに、どの項目まで含まれるか(評価コメントやメール本文が抜けることがある)
- 添付ファイルの一括ダウンロード機能があるか。ない場合は件数と作業時間を見積もる
- 個人情報の保管ルール(保存先、アクセスできる人、保存期間)を社内で決めてから書き出す
- 応募者に案内した利用目的の範囲を超えないか
Excel運用に戻す場合の最小項目セット
ツールを止めて表計算で回す場合、項目を増やしすぎると更新されなくなります。後任が未経験でも運用を続けられる最小の構成は、次のあたりです。
| 項目 | 用途 |
|---|---|
| 応募日 | 放置日数を見る。返信の優先順位づけに使う |
| 氏名・連絡先 | 連絡手段。電話とメールの両方 |
| 応募経路(媒体名・紹介会社名) | 費用対効果の振り返りと、連絡時の文面判断 |
| 応募職種 | 現場への振り分け |
| 選考ステータス | 書類確認中/一次調整中/一次済/内定など数種に限定 |
| 最終連絡日 | 誰の返信待ちかを判断する |
| 次のアクションと担当者 | 宙に浮く応募者を出さない |
| 備考 | 口頭で伝えた条件や希望入社日 |
ステータスの言葉は途中で増やさず、最初に決めた数種類で固定するほうが続きやすいです。返信の優先順位づけの考え方は応募者への返信速度が採用結果をどう変えるかを参照してください。
続けるか、やめるかは応募数と担当者で決まる
同時に動く求人が少なく、月の応募が担当者の目で追える範囲なら、Excel運用に戻しても実務は回ることが多いです。一方で複数職種を同時に募集していたり、媒体を複数使っていたりする場合は、ツールを維持したまま権限だけ付け替えるほうが早く復旧します。
判断の前提として、契約の全体像を紙に書き出しておくと迷いません。ATSを含めた引き継ぎ項目の全体像は採用業務の属人化を解く。引き継ぎ書に必ず書く12項目にまとめています。
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