媒体営業の提案と見積もりを、素人がどう評価するか
採用担当が退職したあと、求人媒体の営業担当から「掲載を再開しませんか」「今なら枠が空いています」と連絡が入ることがあります。前任者は相場も過去の反応も知っていたので判断できましたが、引き継いだ側にはその材料がありません。提案書に並んだプラン名とオプション名の意味が分からないまま、「では、これでお願いします」と言ってしまう。金額が動く場面としては、かなり危うい状態です。
媒体営業の提案が悪いという話ではありません。問題は、評価の物差しを持っていない状態で判断を求められていることです。物差しは、専門知識ではなく数個の質問と一回の割り算でつくれます。以下、提案を受けた場に持ち込める形で整理します。
提案が通りやすくなる状況を自覚する
その提案が妥当かどうかの前に、自社が今どういう立場で話を聞いているかを確認してください。採用が止まっていて現場から催促が来ている、前任者がいないので比較材料がない、掲載を止めた期間が延びていて焦りがある。この3つが揃うと、条件を吟味せずに決めやすくなります。
また、退職の事実を媒体営業にどう伝えるかで話の進み方も変わります。この点は採用担当の退職を、媒体営業・エージェント・現場にいつ伝えるかで整理しているので、そちらを先に読んでおくと落ち着いて話せます。
提案を受けたら聞く4つのこと
その場で聞くのは4つで足ります。メモを取り、答えをそのまま持ち帰ってください。
1. 想定応募数の根拠
「この枠だと月に○件くらい来ます」という説明は、根拠を聞いて初めて評価できます。同じ職種・同じ地域・同じ給与帯の掲載を母数にした平均なのか、全業種の平均なのか、上位事例なのか。母数が示せない場合は、その数字を前提に予算を組まない方が安全です。「幅で言うといくつからいくつですか」と聞くと、実感に近い数字が出てくることが多いです。
2. 同業・同エリアの実績
自社と近い条件で、直近半年ほどの間にどう動いたかを聞きます。社名は出せなくても、職種・エリア・給与帯・応募数の傾向までは答えられる場合が多いです。「求人の内容によります」で止まるときは、どの条件が効くのかを逆に聞き返すと、原稿を直すべき箇所が見えてきます。原稿側の観点は求人原稿を刷新するときに直す7か所にまとめています。
3. 追加オプションの効果
上位表示、スカウト送信数の追加、目立つ枠の装飾など、オプションは提案の中で金額が膨らみやすい部分です。聞くのは「これを付けると応募が何件増える見込みか」「付けなかった場合との差が分かる事例はあるか」の2点です。差を説明できないオプションは、初回は外して構いません。効果が読めない項目に最初から払うより、1回目の結果を見てから足す方が判断材料が増えます。
4. 途中で止めた場合の扱い
採用が決まった、あるいは思うように応募が来なかったときに、掲載を途中で止められるか。残期間の返金があるのか、次回に振り替えられるのか、自動更新の停止はいつまでに申し出るのか。ここは口頭ではなく契約書と申込書の該当箇所を指してもらってください。
単価ではなく「応募1件あたりの見込み費用」に直す
複数の媒体を比べるとき、掲載料の総額を並べても優劣は出ません。応募が何件見込めるかで意味が変わるからです。そこで、聞き出した想定応募数の低い側の数字で割り算をします。
| 項目 | A社の提案(例) | B社の提案(例) |
|---|---|---|
| 掲載料+オプション | 30万円 | 18万円 |
| 想定応募数(幅の低い側) | 10件 | 4件 |
| 応募1件あたりの見込み費用 | 3.0万円 | 4.5万円 |
| うち自社の職種に近い実績の提示 | あり | なし |
※数字は計算の見せ方を示すための架空の例です。実際の相場は職種・地域・時期で大きく変わります。
高い側の数字ではなく低い側で割るのは、うまくいかなかった場合の負担を先に見ておくためです。実績の提示がない提案は、想定応募数の信頼度が一段下がると考えて扱ってください。
余裕があれば、応募1件あたりではなく「面接まで進んだ1件あたり」「入社1名あたり」でも計算してみると差が開きます。この考え方は採用単価から逆算する採用予算の立て方で詳しく扱っています。
即決を避けるための時間の作り方
「今日中なら割引が効きます」と言われても、比較の時間は取れます。断らずに時間をつくる言い方を用意しておくと角が立ちません。
| 場面 | 使える返し方 |
|---|---|
| その場で決めてほしいと言われた | 「社内の決裁ルートがあるので、見積書を書面でいただけますか」 |
| 割引の期限を示された | 「期限を過ぎた場合の通常価格も併記してください」 |
| 他社と比べたい | 「同じ形式で他社にも出してもらうので、想定応募数の根拠も書面に入れてください」 |
| 過去の掲載条件が分からない | 「前任者の契約内容を確認中なので、現在の契約状況の一覧をください」 |
書面でもらう理由は2つあります。口頭の見込み数字は後から検証できないこと、そして社内で説明するときに原本が必要になることです。前任者の契約が整理できていない段階なら、求人媒体の棚卸しで何を確認するかの手順で、今払っている費用を先に把握しておくと、新規の提案が高いのか妥当なのか判断しやすくなります。
目安としては、書面を受け取ってから3営業日、他社見積もりを並べるなら1〜2週間を見ておくと落ち着いて比べられます。ただし応募者対応が止まっている場合は別で、そちらは掲載の判断より先に手を打つ領域です。
それでも判断に自信が持てないとき
4つの質問と割り算まで進めても、「この数字が高いのか安いのか」の感覚は、比較した回数がないと身につきません。ここは知識の差ではなく経験の差なので、社内で無理に埋めようとすると時間だけ過ぎることがあります。
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