募集職種が複数あるとき、どれから再開するか
採用担当が抜けたあと、募集していた職種が3つ、4つと残っていることがあります。営業、施工管理、事務、ドライバー——どれも現場から「早く」と言われていて、どれも止めるとは言いにくい。結果として全部の掲載を再開し、応募が来た順に手をつけて、返信が追いつかなくなる。担当不在の会社でいちばん起きやすい失敗です。
この記事では、予算の配分ではなく「今月どれを動かすか」という粒度で並べ替えの手順を示します。判断に使う軸は3つだけです。欠員の切迫度、採用の難しさ、そして応募対応にかかる手間。この3つを紙1枚に書き出すと、動かす職種はたいてい1つか2つに絞られます。
全職種を同時に再開すると回らない理由
採用の作業量は掲載した職種の数ではなく、届く応募の数で決まります。1職種あたり週に5件の応募があるなら、4職種で週20件。ここに書類選考、日程調整、面接同席の依頼、見送り連絡がぶら下がります。前任者が専任で回していた量を、兼任の担当者が同じ速度で処理できることはまずありません。
そして応募対応が遅れると、応募者は他社の選考へ移っていきます。掲載を続けている限り媒体費は発生し続けるので、返信できない状態での掲載は費用だけが出ていく形になります。この構造は求人を止めている間に、応募者はどうなるのかで詳しく整理しています。
動かす職種を絞るのは、諦めではなく、対応できる量に合わせる作業です。 4職種を薄く回して全部取り逃すより、1職種を確実に埋めたほうが現場に人が入ります。
並べ替えに使う3つの軸
軸1:欠員の切迫度
「早く欲しい」ではなく、人が入らないと何が止まるかで見ます。
- 受注を断っている、シフトが組めない、既存社員の残業が続いている → 切迫度は高い
- 増員だが今の人数でも業務は回っている → 中
- 将来の体制強化、良い人がいれば採りたい → 低
現場のヒアリングは主観が入るため、「この職種が欠けたことで断った仕事や止まった業務があるか」を具体的に聞くと差が出やすくなります。
軸2:採用難易度
難易度が高い職種は、動かしても今月中に決まりません。逆に難易度が低い職種は、掲載を再開すれば比較的早く応募が集まります。過去の実績から次の3点を確認します。
- 前回の募集で、掲載から内定までにかかった週数
- 応募が集まった媒体と、集まらなかった媒体
- 資格や経験の必須要件があるか
前任者の記録が残っていない場合は、求人媒体の棚卸しで何を確認するかの手順で契約と過去の掲載実績を先に洗い出してください。
軸3:応募対応にかかる手間
同じ1件の応募でも、職種によって手間はまったく違います。
| 手間が軽い応募 | 手間が重い応募 |
|---|---|
| 書類選考の基準が明確(資格の有無など) | 経歴を読み込んで判断が必要 |
| 面接1回で決められる | 現場責任者や役員の同席が必要 |
| 面接官の候補が複数いる | 面接できる人が1人だけ |
| 応募が週数件に収まる | 応募が週10件を超える |
面接官が1人しかいない職種は、その人の予定がボトルネックになります。応募が来ても日程が2週間先になるなら、今月動かす意味は薄くなります。
3軸を1枚の表に落とす
職種名を縦に並べ、3軸を各3点で採点します。切迫度は高いほど加点、難易度と手間は「低いほど加点」にするのがポイントです。難易度が高い職種を上位に置くと、今月は何も決まらないまま終わります。
| 職種 | 切迫度(高3/中2/低1) | 決まりやすさ(易3/中2/難1) | 対応の軽さ(軽3/中2/重1) | 合計 |
|---|---|---|---|---|
| 例)施工管理 | 3 | 1 | 1 | 5 |
| 例)一般事務 | 2 | 3 | 3 | 8 |
| 例)営業 | 3 | 2 | 2 | 7 |
この例なら、今月動かすのは事務と営業です。施工管理は切迫度が高いにもかかわらず後回しに見えますが、これは「採らない」という意味ではありません。難易度の高い職種は、掲載よりも先に要件の見直しや紹介会社への依頼といった別の打ち手が必要になることが多く、片手間の掲載再開では応募が動きにくいためです。
合計点が同じになった場合は、切迫度の高いほうを先に動かします。
動かさない職種の掲載はどうするか
掲載を続けたまま放置するのが最も損失が大きい選択です。動かさないと決めた職種は、次のどれかにはっきり寄せてください。
- 掲載を止める(推奨) — 契約期間中で返金がない場合も、応募を受けて返信できない状態を避けるほうが後の採用に影響しにくくなります
- 掲載は残し、応募には「選考開始時期のご案内」だけを自動返信で返す — 期日を書けるときのみ
- 契約更新日まで様子を見て、更新しない
2を選ぶなら、返信文に「後日ご連絡します」だけ書いて放置するのは避けます。連絡の受け皿づくりは採用担当が不在の間、応募窓口を1日でつくる手順にまとめています。
現場への説明の仕方
「担当が辞めたので今月は事務だけやります」と伝えると、後回しにされた部署は納得しません。説明で押さえるのは3点です。
- 順番の理由を、忙しさではなく処理能力で説明する:「対応できる応募数が今は週◯件までなので、同時に動かすのは2職種にします」
- 後回しにする職種について、今月やることを示す:求人票の要件見直し、面接官の確保、紹介会社への連絡など。掲載していない期間も準備は進むと伝わります
- 見直しの時期を約束する:「4週間後に応募状況を見て入れ替えます」と決めておく
入社日を約束するのは避けます。担当不在の状態では読みが立たないため、約束できるのは「いつ見直すか」までです。
翌月以降の入れ替え
4週間ごとに同じ表を作り直します。動かした職種が内定に至ったら外し、次の順位を上げる。切迫度が変わっていれば点数を書き換える。この入れ替えを続けると、止めている職種が忘れられるのを防げます。
なお、この並べ替えは担当が1人(または兼任)である前提での応急処置です。職種数が3つ以上あり毎月採用が必要な会社では、そもそも1人で回し続けるのが難しくなります。限界の見極めは総務兼任で採用を回す限界はどこにあるかを参考にしてください。
絞り込みの前に、棚卸しから
どの職種を動かすか決めるには、いま何がどこに掲載され、どの応募者が途中で止まっているかが分かっている必要があります。担当が抜けた直後は、そこが見えないまま判断を迫られることが多いはずです。
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