結局あと何人採るのかを、社内で確定させる
採用担当が退職したあと、社内に残るのは「募集中」という状態だけです。求人原稿は出たまま、現場からは「早く入れてください」と言われ、経営側は「そんなに採る話になっていたか」と首をかしげる。誰も嘘をついていないのに人数が合わないのは、必要人数が前任者の頭の中と各部署の口頭の希望に分かれて存在していたからです。
この記事は、精緻な要員計画をつくる話ではありません。今期あと何人を、いつまでに採るのか。それを1枚の紙に載せて社内で確定させるところまでを扱います。ここが決まらないと、求人を再開しても職種の優先順位が決められず、後任の採用担当に渡す指示も「とりあえず集めて」以上のものになりません。
人数が曖昧なままだと、何が止まるか
必要人数が確定していない状態で採用を再開すると、次の3つが同時に詰まります。
ひとつは媒体への予算配分です。3人採るのか8人採るのかで、掲載する媒体数も掛ける金額も変わります。ふたつめは選考のスピードです。あと1人しか枠がないのに2人を同時に最終面接へ通すと、片方を待たせる時間が生まれ、その間に辞退が起きやすくなります。みっつめは現場への説明です。人数の根拠がないと「順番に採ります」としか言えず、現場は待っているのか外されたのか分からなくなります。
つまり人数の確定は、採用活動の再開よりも前に置くべき作業です。媒体の復旧や応募者対応と違って費用も権限もほとんど必要なく、社内だけで数日で終わります。
1枚に並べる4つの数字
必要人数は、次の4つを職種ごとに並べると出ます。
| 欄 | 中身 | 情報の出どころ |
|---|---|---|
| ① 現在の欠員 | すでに席が空いている人数 | 各部署の組織図と実在籍者の差 |
| ② 退職が決まっている人 | 退職届が出ている・退職日が確定している人数 | 労務・総務が持つ退職手続き |
| ③ 増員の希望 | 業務量の増加や新規案件で増やしたい人数 | 部門長へのヒアリング |
| ④ 埋まりかけている分 | 内定承諾済み・選考が最終段階の人数 | 選考中の応募者一覧 |
計算は単純で、①+②+③−④が「あと採る人数」の出発点になります。④を引き忘れると、すでに入社が決まっている人の分まで募集し続けることになり、入社後に枠が余る/余らないの揉め事につながります。選考の途中で担当が抜けている場合は、進行中の応募者の棚卸しが先に必要です。
必要時期の欄も同じ表に足してください。「4月まで」「12月まで」と書くだけで、今月動かす職種と来月でよい職種が分かれます。日付が入らない行は、多くの場合③の希望です。
「できれば欲しい」を人数に入れない線引き
部門長に聞くと、人数は必ず膨らみます。悪意ではなく、余裕があった方が現場は楽だからです。③の増員希望を数字に入れるかどうかは、次の3つを聞いて判断します。
- 入らなかったら何が止まるか。 「残業が増える」は困りごとですが、「受注を断る」「シフトが組めない」は事業の停止です。後者だけを確定人数に入れます。
- その人に任せる仕事が、いま誰の手に積まれているか。特定の社員の残業時間や、外注に回している金額として現れていれば、根拠のある増員です。
- 増員後の人件費を、どの予算で持つか。部門の予算に載っていない増員は、この段階では「検討中」に置きます。
答えが揃わない行は、削除せず表の下段に「検討中」として残します。消すと現場は「聞いてもらえなかった」と受け取りますが、検討中として見えていれば、次の期に判断する約束として機能します。現場からの依頼を口頭で受け続けない仕組みとしては、現場からの募集依頼を受ける1枚(求人依頼票)を作るも合わせて使えます。
人件費の枠から、上限人数を出す
現場の希望を足し上げた数字と、会社が払える人数は別です。上から押さえる数字も出しておきます。
考え方は、今期に使える人件費の追加枠を、1人あたりの年間人件費で割るだけです。1人あたりの人件費は、月給に社会保険料の会社負担などを加えると月給の1.2倍前後で見ておくと実態から離れにくい、というのが目安になります(正確な率は自社の給与規程と保険料率で確認してください)。
| 項目 | 計算例(目安) |
|---|---|
| 今期使える人件費の追加枠 | 1,200万円 |
| 想定月給 | 30万円 |
| 1人あたり月の会社負担 | 30万円 × 1.2 = 36万円 |
| 入社から期末までの残月数 | 6ヶ月 |
| 1人あたり今期の負担 | 36万円 × 6 = 216万円 |
| 今期の上限人数 | 1,200万円 ÷ 216万円 ≒ 5人 |
見落としやすいのは残月数です。期の後半に入社する人は今期の人件費を半分しか使いませんが、来期は12ヶ月分かかります。今期の枠で採れる人数と、来期に払い続けられる人数は別に確認してください。 上の例なら、来期は1人あたり432万円が通年で乗ります。
採用そのものにかかる費用(媒体費や紹介手数料)は人件費とは別枠です。人数から予算を組む手順は採用単価から逆算する採用予算の立て方にまとめています。
確定した人数を、募集の順番に変える
人数が決まっても、全職種を同時に募集すると応募対応が回りません。特に採用担当が不在の会社では、動かせる職種は1〜2に絞るのが現実的です。確定した表に、次の2列を足します。
- いつまでに必要か(必要時期)
- 応募1人あたりの手間(面接回数、現場の立ち会いの有無)
必要時期が近く、手間が軽い職種から出します。逆に、必要時期が半年以上先で、選考に現場の工数が重くかかる職種は、後任が立ち上がってからでも間に合うことが多いです。並べ替えの具体的な基準は募集職種が複数あるとき、どれから再開するかで扱っています。
誰が、いつまでに確定させるか
この1枚は、集計だけなら管理部門で作れますが、確定は経営の判断です。決め方は次の順番にすると30〜60分で終わります。
- 管理部門が①②④を埋める(在籍データと選考中の一覧から機械的に出る)
- 部門長に③の希望と根拠を出してもらう(期限を切る。1週間以上空けない)
- 社長または管理担当役員が、③のうち確定に入れる行を選ぶ
- 確定人数・必要時期・上限人数を1枚に固定し、日付を入れて共有する
日付を入れるのは、後から「あのときの人数」と参照できるようにするためです。期中に退職者が出れば数字は動きます。月1回、②と④だけ更新すれば表は生き続けます。
確定した人数が5人でも2人でも、その数字を持って初めて後任の採用担当に「この職種を、この時期までに」と渡せます。後任が未経験者でも、人数と期限が決まっていれば任せる範囲を切れます(後任は未経験でいい。採用担当が4ヶ月で育つ理由)。
人数が決まらないまま募集を続けないために
採用担当の不在で困るのは、作業が止まることよりも、判断の材料が社内に残っていないことです。あと何人という数字は、本来は経営が持つべき情報で、採用担当が抜けても失われないはずのものです。いま社内で数字が言えないなら、それは人数の管理も前任者に寄っていたということになります。
採用担当引き継ぎ代行では、止まった求人活動の復旧、後任の採用、引き継ぎと業務改善までを4ヶ月で行います(標準プラン200万円・税別・広告費込み、分割可)。着手時には、必要人数の整理と募集職種の優先順位づけも一緒に進めます。
- サービスの進め方:採用担当引き継ぎ代行
- 期間と金額:料金プラン
採用ストップ診断(媒体アカウント・契約・進行中の応募者の棚卸し)までは無料です。 ご相談はLINE公式からお受けしています。まだ人数が固まっていない段階でも、棚卸しの結果から「あと何人採る話になっていたのか」を一緒に洗い出せます。