採用の外部委託費に使える助成金はあるのか
採用担当が退職して採用が止まり、外部に委託する案を社内で通そうとすると、ほぼ必ず「助成金は使えないのか」と聞かれます。委託費を全額そのまま出すよりも、公的な補助が付くなら稟議が通りやすいという判断は自然です。ただ、ここで期待値を上げすぎると、あとで「使えると言ったじゃないか」という話になり、かえって決裁が止まります。
この記事は制度の一覧ではありません。採用に関する助成金が「何に対して出るお金なのか」という構造を理解して、自社が検討する余地があるかを見分け、どこに確認すれば確実な回答が得られるかを整理します。制度の名称・要件・金額は改正されることがあるため、この記事では金額や支給の可否を示しません。
助成金は「委託費」ではなく「雇用」と「訓練」に付くことが多い
国の雇用関係助成金は、大きく言えば雇用保険の仕組みを財源として、雇用を増やす・安定させる・能力を高める行為に対して支給されます。つまり支給の判定対象になるのは、多くの場合「誰をどういう条件で雇ったか」「どういう訓練を受けさせたか」であって、その過程で外部にいくら払ったかではありません。
そのため、求人広告費や人材紹介手数料、採用代行の委託費といった採用活動そのものの支出は、国の雇用関係助成金では対象外として扱われることが多いと考えておくのが安全です。採用活動費の一部を補助する枠組みは、国よりも自治体(都道府県・市区町村)の産業振興・人材確保系の補助制度に見られることがありますが、公募時期が限られ、金額の上限も小さい傾向があります。
| 支出の種類 | 助成の対象になりやすいか |
|---|---|
| 求人広告費・人材紹介手数料・採用代行の委託費 | 国の雇用関係助成金では対象外のことが多い。自治体の補助制度に一部枠がある場合がある |
| 採用した人を雇い入れた事実(対象者の属性による) | 雇い入れに対する助成の枠組みがある |
| 採用した人への研修・訓練(研修費、訓練中の賃金) | 教育訓練系の助成の枠組みがある |
| 有期契約から正社員への転換など処遇の改善 | 処遇改善系の助成の枠組みがある |
この表の読み方は「委託費の値引き交渉として助成金を当てにするのは難しいが、後任を採用して育てる部分には制度が用意されている」ということです。
後任を採用して育てる場面で検討余地がある制度の種類
採用担当の後任を社外から採る、あるいは未経験者を後任に据えて育てる、という進め方は、助成金の設計と方向が合っている場面があります。種類として押さえておくとよいのは次の3系統です。制度名は時期によって変わるため、ここでは性質で書きます。
| 系統 | 何に対して出るものか | 検討できる場面 |
|---|---|---|
| 雇い入れ系 | 一定の条件に当てはまる求職者を、一定の条件で雇い入れたこと | 後任を新規採用する。トライアル的な期間を置いて本採用に移す |
| 教育訓練系 | 計画に沿った訓練を実施したこと(外部研修の受講料、訓練中の賃金など) | 未経験の後任に採用実務の研修を受けさせる |
| 処遇改善系 | 有期契約から無期・正社員への転換、賃金体系の整備など | 契約社員として迎えた後任を正社員化する |
未経験者を後任にする考え方自体は後任は未経験でいい。採用担当が4ヶ月で育つ理由で詳しく書いていますが、この進め方は教育訓練系の制度と検討の相性が良い場面があります。ただし、訓練計画の事前提出が求められる制度では、走り出した後から遡って申請できないことが多い点に注意が必要です。制度を検討するなら、採用を始める前に窓口へ相談しておくのが実務上の原則になります。
申請の前提として先に確認する項目
制度ごとの細かい要件は窓口で確認する前提として、どの制度でも前提になりやすい事項はあらかじめ自社で点検できます。以下は「これが崩れていると、そもそも検討が進まないことが多い」項目です。
- 雇用保険の適用事業所であり、労働保険料の滞納がないか
- 就業規則・賃金規程が最新の内容で整備され、届出が済んでいるか
- 労働者名簿・出勤簿・賃金台帳が保存され、実態と一致しているか
- 対象者の雇用契約書に、制度が求める条件(期間、労働時間、賃金など)が明記できるか
- 計画届や訓練計画の事前提出が必要な制度かどうか、その提出期限
- 支給申請の受付期間(多くの制度で期間を過ぎると受け付けられません)
- 過去に労働関係法令違反や不正受給の指摘を受けていないか
採用担当が退職したばかりの会社では、このうち「雇用契約書の書式が見つからない」「規程が古い」といった形で引っかかることがあります。書式が残っていない場合の復元は内定通知書・労働条件通知書の書式が見つからないときにまとめました。
確認先は、雇用関係助成金であれば所轄の都道府県労働局またはハローワークの助成金担当窓口、自治体の補助金であれば当該自治体の産業振興・雇用関連の担当課です。申請書類の作成代行は社会保険労務士の業務であり、当社は助成金の申請代行を行いません。制度の適用可否は必ず窓口または社会保険労務士に確認してください。
稟議では「助成金ありき」で組まない
助成金は支給決定まで確定しないお金です。したがって、稟議書に助成金を差し引いた実質負担額だけを書くと、不支給や減額のときに説明が破綻します。書き方としては、委託費の総額を本体として示し、助成金は「検討中の別枠」として注記に回すほうが通りやすいことが多いです。
費用の比較軸自体は、助成金とは別に用意しておく必要があります。後任を人材紹介で採る場合の総額は採用担当の後任を人材紹介で採ると総額いくらかかるか、社内向けの説明の組み立ては採用の外部委託費を社内で通すときの説明の組み立て方にあります。助成金の有無より、採用が止まっている期間に発生し続ける媒体費と、埋まらない欠員のほうが金額として大きくなる場合があります。
なお、資金繰りの都合で総額の負担が重いという話であれば、助成金を探すより支払い方法を調整するほうが早いこともあります。当社の標準プラン(4ヶ月・200万円/税別・広告費込み)は分割払いにも対応しています。判断の考え方は一括払いと分割払いはどちらを選ぶべきかにまとめました。
まとめ
- 国の雇用関係助成金は、採用活動の委託費そのものではなく、採用した後の雇用や訓練に対して支給される設計のことが多い
- 委託費の一部を補助する枠は、自治体の制度に見られることがあるが公募時期が限られる
- 後任を採用して育てる場面では、雇い入れ系・教育訓練系・処遇改善系に検討余地がある場合がある
- どの制度も、雇用保険の適用、規程の整備、事前の計画提出、申請期限といった前提の確認が先
- 適用の可否と金額は、所轄の労働局・ハローワーク、自治体窓口、社会保険労務士に確認する
助成金を調べている間も、止まっている求人の媒体費は発生し、選考中だった応募者は動き続けます。制度の確認は並行で進めつつ、先に復旧の段取りを決めておくと損失が小さくなります。
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