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費用と比較

欠員を放置している損失を、いくらと見積もるか

採用担当が退職して求人が止まっている。外部に頼むか自社で粘るかを決めたいが、役員会に持っていくと「その費用は高くないか」で止まる。止まる理由ははっきりしていて、稟議書に載っているのが「出ていく金額」だけだからです。欠員を埋めずに置いている間にも金は出ていますが、それは請求書の形をしていないので、誰の目にも入りません。

この記事では、その見えない側を数字にする手順だけを扱います。稟議書の項目立てや、社内での説明の順序については採用の外部委託費を社内で通すときの説明の組み立て方で扱っているので、そちらを前提にお読みください。ここでは「機会損失をいくらと書くか」の一点に絞ります。

損失額は、厳密さより「前提が追えること」で通る

最初に前提を一つ置きます。欠員の損失額は、正確に出すことができません。売れたはずの案件も、辞めなかったはずの社員も、実際には起きていない出来事だからです。

そのため、目指すべきは精密な数字ではなく、前提を見せた概算です。決裁者が見るのは小数点ではなく、「この前提なら妥当か」という一点です。前提が書いてあれば、決裁者は自分で数字を動かせます。前提が書いていない数字は、どれだけ細かくても「どこから出てきたのか」で止まります。

もう一つ。3つの積み上げ方を後で挙げますが、全部やる必要はありません。自社で数字が取りやすいものを1つ選べば足ります。3つ並べると合算したくなりますが、粗利の減少と残業代の増加は一部が重なるため、二重計上とみなされて説明が長くなります。1つに絞って、残りは「これ以外にも◯◯がある」と文章で添えるほうが通りやすいことが多いです。

積み上げ方A:1人あたりの粗利や売上寄与から出す

営業職、施工管理、店舗スタッフなど、売上との距離が近い職種に向きます。

手順は3つです。

  1. 直近1年の粗利(または売上総利益)を、その職種の在籍人数で割る
  2. 1人あたり年間粗利を12で割り、1ヶ月あたりにする
  3. 欠員数と、埋まるまでの想定月数を掛ける

仮に、営業部門の年間粗利が1億2,000万円、営業10名とします。1人あたり年間1,200万円、月100万円。欠員1名が3ヶ月続けば300万円という計算です。数字はすべて自社の実績から取るので、出典を聞かれても答えられます。

注意点が2つあります。新人がすぐ同じ粗利を上げるわけではないので、立ち上がり期間を差し引く(たとえば「6ヶ月目から満額」とする)ほうが実態に近くなります。もう一つ、間接部門にこの方法を当てると数字が跳ね上がりすぎて信用されません。売上と距離のある職種ではBに切り替えてください。

積み上げ方B:残業代と外注費の増加から出す

欠員の穴を、既存社員の残業か外注で埋めている場合はこちらが向きます。すでに支払っている実費なので、経理から数字を取れるのが強みです。

  1. 欠員が出た月の前後で、その部署の残業代を比較する
  2. 同じ期間で、外注費・派遣費・業務委託費の増減を見る
  3. 差額の合計を、月あたりの追加支出とする

この方法の利点は、決裁者が反論しにくいことです。推定ではなく、すでに出ている支出だからです。欠員を派遣や業務委託で暫定的に埋めている場合の月額感については現場の欠員を派遣や業務委託で先に埋める判断にまとめています。

弱点は、金額が小さく出やすいことです。現場が無理をして残業も外注もせずに回している場合、支出はほぼ増えません。そのときは「支出は増えていないが、負荷はCの形で溜まっている」と書き添えます。

積み上げ方C:既存社員の離職リスクから出す

欠員の負荷を既存社員が吸収している状態が続くと、その社員が辞める確率が上がります。これを金額にするなら、採用し直すための費用に置き換えます。

  1. その職種を1名採用するのにかかる費用(媒体費・紹介手数料・社内工数)を出す
  2. 欠員の負荷を被っている人数を数える
  3. 「そのうち1名が辞めたら」という仮定で、1名分の再採用費用を損失額とする

人材紹介を使う職種なら、手数料の相場は理論年収の30〜35%前後とされることが多く、金額の目安は採用担当の後任を人材紹介で採ると総額いくらかかるかで整理しています。

Cは仮定が一段深いので、単独で使うと弱くなります。「Bの実額+Cは文章で補足」という組み合わせが扱いやすいことが多いです。

積み上げ方向く職種必要なデータ説明のしやすさ
A 粗利・売上寄与営業・施工・店舗など部門粗利、在籍人数金額は大きく出るが、立ち上がり期間の扱いを聞かれやすい
B 残業代・外注費間接部門、製造、事務給与データ、外注費の推移実額なので反論されにくいが、金額は小さく出やすい
C 離職リスク少人数で回している部署1名あたり採用費用仮定が深く、単独では弱い。補足向き

外部委託費と並べるときは、月額に揃える

損失額を出したら、検討している選択肢の費用と並べます。このとき、金額の単位を月額に揃えてください。

理由は2つあります。ひとつは、欠員の損失が「時間とともに積み上がる費用」であるのに対し、委託費は「一度きりの総額」に見えるためです。単位が違うまま並べると、総額のほうだけが大きく見えます。もうひとつは、決裁者が知りたいのが「いつまで待てるか」だからです。月額に直すと、何ヶ月で逆転するかが一目で分かります。

当社の標準プランは4ヶ月・200万円(税別・広告費込み・分割可)なので、月額換算では50万円です。内訳の考え方は引き継ぎ代行の200万円は何に対する費用なのかに分けて書いています。

項目総額月額換算前提
欠員の損失(Aで試算)3ヶ月で300万円100万円営業1名分。立ち上がり期間は考慮せず
引き継ぎ代行(標準)200万円50万円(4ヶ月)税別・広告費込み
自社のみで進める場合媒体費+社内工数別途試算復旧までの月数が読めない

数字は例です。自社の実数に入れ替えてお使いください。

前提を書き添える作法

損失額を1行だけ書くと、その行が独り歩きします。金額の下に、次の4点を添えてください。

  • 何のデータから出したか(例:2025年度の部門粗利と在籍人数)
  • 何を仮定したか(例:欠員期間3ヶ月、立ち上がり期間は考慮せず)
  • 何を含めていないか(例:既存社員の残業増、既存応募者の辞退分は含まない)
  • 数字が動く条件(例:欠員が6ヶ月に延びれば倍になる)

「含めていないもの」を先に書いておくと、指摘を先回りできます。控えめに出した数字のほうが、結果として通りやすいことが多いです。

なお、求人を止めている間に応募者側で何が起きるかは、金額に換算しにくい一方で復旧作業量に直結します。求人を止めている間に、応募者はどうなるのかを補足資料として添えると、月数の前提に説得力が出ます。

数字が取れないときは、月数だけ書く

粗利も残業データもすぐ出せない会社もあります。その場合は金額をあきらめて、「現状のままだと再開まで何ヶ月かかるか」だけを書く方法があります。復旧日数は社内で検証できるので、金額より議論が短く済むことがあります。


損失額の試算は、自社の数字さえ揃えば社内でも作れます。ただ、前提に置く「復旧までの月数」が読めないと、どの方法も成立しません。

株式会社Talencoの採用担当引き継ぎ代行では、止まった求人活動の復旧、後任の採用、引き継ぎと業務改善までを4ヶ月で行います。後任は採用担当の経験者でなくても構いません。費用は料金プランをご覧ください。

現在の媒体アカウント・契約・進行中の応募者を洗い出す「採用ストップ診断」までは無料です。復旧までの月数の見立てもこの段階でお出しできますので、稟議の前提を固める材料としてお使いください。ご相談はLINE公式からどうぞ。

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