採用費を減らすとき、最初に削るのはどこか
「採用費を2割落としてほしい」と言われたとき、真っ先に目に入るのは毎月出ていく求人媒体の掲載料です。金額が大きく、止めるボタンもすぐ押せる。けれど媒体の掲載を止めると、その月の応募はほぼそのまま消えます。支出は減りますが、欠員も減りません。
採用費には「止めると応募が減るもの」と「止めても応募がほとんど変わらないもの」が混ざっています。削る順番は、この見分けがついているかどうかで決まります。採用担当が退職して社内に詳しい人がいない状態だと、この仕分けが誰にもできないまま、いちばん効いている支出から止めてしまうことがあります。
削る順番は「効果が追えない順」
原則はひとつです。応募への影響が小さいものから順に削り、影響が大きいものを最後に残す。 影響が分からないものは「分からない=小さい」ではなく、まず追えるようにしてから判断します。
| 順番 | 削る対象 | 応募への影響 | 判断にかかる時間 |
|---|---|---|---|
| 1 | 効果が追えていないオプション費 | 小さいことが多い | その日〜数日 |
| 2 | 重複している媒体 | 一部重複分のみ | 1〜2週間 |
| 3 | 使っていない年間枠・残枠 | 影響なし(使い切る側に回す) | 契約書の確認次第 |
| 4 | 成果報酬の料率・社数 | 中期的に出る | 交渉期間が必要 |
| 5 | 掲載の本数・期間 | 直接響く | 即日 |
| — | 応募に返信する人の時間 | 削らない | — |
1. 効果が追えていないオプション費
求人媒体の請求書には、基本の掲載料のほかに上位表示、スカウト送信通数、特集枠、動画制作、原稿のリライト代などが並んでいることがあります。前任の採用担当が営業の提案で付けたまま、効果を検証せずに更新され続けているものが見つかりやすい箇所です。
確認するのは「このオプションを付けた月と付けていない月で、応募数が変わったか」。変わったかどうかを誰も答えられないオプションは、いったん外して応募数の推移を見ます。外しても数字が動かなければ、そのまま落とせます。請求書から契約の実体を洗い出す手順は求人媒体の棚卸しで何を確認するかにまとめています。
2. 重複している媒体
同じ職種を同じエリアで複数の媒体に出していると、応募者が重なることがあります。特に求人検索エンジンと総合型の転職サイトは掲載される求人が重なりやすく、同じ人が別経路から応募してくることも起こります。
見分け方は、応募者の氏名・連絡先を媒体をまたいで突き合わせること。重複が目立つ組み合わせがあれば、片方を止めても総応募数がそれほど落ちない可能性があります。ただし確認には応募経路の記録が要ります。記録がない場合は、1媒体ずつ止めて1〜2週間の応募数を見るほうが確実です。
3. 使っていない年間枠・残枠
年間契約のパック枠が未使用のまま残っていることがあります。これは「削る」というより「使い切る」対象です。残枠があるのに新規で掲載を買っていれば、新規購入分をやめて残枠に寄せるだけで支出が下がります。有効期限と繰り越しの可否は契約書で確認してください。
同時に、今年度いくら使っていくら残っているかが分からない状態なら、先に残額を確定させたほうが削る判断が速くなります(今年の採用予算がいくら残っているか分からないとき)。
4. 成果報酬の料率・付き合う社数
人材紹介の手数料は理論年収の30〜35%程度が目安とされます。採用が発生しなければ費用は出ませんが、1名決まれば一度に大きな額が動きます。料率そのものの引き下げ交渉は材料がないと通りにくく、短期では効きにくい削り方です。一方、推薦がほとんど来ていない紹介会社を整理すると、対応にかかる時間が減ります。これは金額ではなく工数の削減として効きます。
5. 掲載の本数・期間
ここまでやってまだ足りないときに、初めて掲載そのものに手を付けます。やり方は2つ。職種を絞るか、期間を区切るか。全職種を一律に止めるのではなく、欠員の切迫度が低い職種から外すほうが痛みが小さくなります。
最後まで残す支出は「応募に返信する人の時間」
削ってはいけないのは、応募が届いたときに返信する人の時間です。これは請求書に載らないため、削った自覚のないまま削られやすい支出でもあります。兼任者の工数を他業務に回した結果、応募への返信が数日遅れるようになると、掲載料は払い続けているのに応募が選考に乗らない状態になります。
返信の遅れが選考に与える影響は応募者への返信速度が採用結果をどう変えるかで詳しく扱っています。予算を絞る局面ほど、少ない応募を取りこぼさない体制のほうが費用対効果は高くなりやすいと考えてください。
削った後にどれだけ応募が落ちるかを事前に見積もる
削る判断の前に、落ちる応募数を概算しておくと社内の説明が楽になります。精密な予測は不要で、次の3つの数字で足ります。
| 使う数字 | 取得先 | 計算 |
|---|---|---|
| 直近3ヶ月の媒体別・月あたり応募数 | 各媒体の管理画面 | 媒体ごとに平均を出す |
| 止める媒体の応募数 | 上記から該当分 | これがそのまま減る見込み |
| 応募から採用までの通過率 | 過去の選考記録 | 応募◯件で1名採用、の形にする |
たとえば「A媒体の応募が月8件、応募20件で1名採用」という状態なら、A媒体を止めると採用ペースは月0.4名分落ちる見積もりになります。これを欠員1名あたりの損失と並べると、削ってよい支出かどうかの判断材料になります。管理画面に入れず数字が取れない場合は、先に求人媒体の管理画面に入れないときの確認手順を確認してください。
見積もりはあくまで目安です。季節要因や原稿の内容でも応募数は動きます。それでも「止めたらどれくらい落ちそうか」を数字で示しておくと、後から「思ったより採れない」と言われたときの説明がしやすくなります。
削る前に、無駄が本当に無駄かを確かめる
採用費の圧縮でいちばん多い失敗は、効いている支出を止めて、効いていない支出を残してしまうことです。前任者が辞めた直後は、どの支出が何に効いていたかの記録が社内に残っていないことが多く、この取り違えが起きやすくなります。
まずは契約と支出の全体像を可視化し、そのうえで影響の小さいものから順に外す。順番さえ守れば、応募をほとんど落とさずに一定の圧縮ができる場合があります。
当社の採用担当引き継ぎ代行では、止まった求人活動の復旧と後任の採用、引き継ぎまでを4ヶ月で行います(標準プラン200万円・税別・広告費込み・分割可。詳細は料金プラン)。まずは現状の整理だけでも構いません。採用ストップ診断(媒体アカウント・契約・進行中の応募者の棚卸し)までは無料です。ご相談はLINE公式からお受けしています。