応募者に「前の担当者とは話が違う」と言われたときの対応
採用担当が辞めた後、引き継いだ選考を進めていると、応募者からこう言われることがあります。「前の担当の方からは月給30万円と伺っていたのですが」「勤務地は本社と聞いています」「面接は2回までという話でした」。社内の記録にはそんな条件は残っていない。求人票にもそう書いていない。しかし応募者は、確かにそう聞いたと言っている。
この場面で最もまずいのは、その場で「そんなはずはありません」と否定することと、逆にその場で「では、そのとおりで」と引き受けることです。どちらも後で戻せなくなります。ここでは、選考中(内定前)の候補者を想定して、初動から結論の伝え方までを順に整理します。内定後に判明した口約束の扱いは性質が違うので、内定者フォローが途絶えたときの立て直し方を参照してください。
まず「否定しない・約束しない」で受ける
指摘を受けた瞬間にやることは、事実確認ではなく受け止めです。応募者は条件を吊り上げたいのではなく、話が食い違ったことに不安を感じている場合が多いためです。
その場で使える返し方は、次の3つの要素で足ります。
- 教えてもらったことへの礼と、食い違いがあることの認識を伝える
- 前任の退職により引き継ぎ中であることを、簡潔に事実として伝える
- 社内で確認して、いつまでに回答するかを約束する
「調べます」だけで期限を言わないと、応募者側は放置されたと受け取ります。**回答期限は、その場で日付を切ってください。**当日中が難しければ翌営業日中、確認先が複数にまたがるなら3営業日以内、というように、守れる範囲で最も短い期限を出します。
担当交代そのものの伝え方をまだ整理していない場合は、選考中の応募者に「担当が変わりました」をどう伝えるかに文面の骨格があります。
即答してよい範囲と、持ち帰る範囲を分ける
会話の途中で判断を求められたとき、自分が何を答えてよい立場なのかが曖昧だと、つい言い切ってしまいます。面談の前に、この線を紙に書いておくと事故が減ります。
| 項目 | その場で答えてよいか | 理由 |
|---|---|---|
| 選考の残り回数・次の面接の相手 | 答えてよいことが多い | 社内で確定でき、後から変えても不利益が小さい |
| 勤務地の候補・配属予定部署 | 確認のうえ回答 | 就業場所の変更の範囲は書面記載事項に関わる |
| 給与額・手当・固定残業代の内訳 | 持ち帰る | 決裁者の承認が必要。口頭の数字が独り歩きしやすい |
| 入社日 | 持ち帰る | 受け入れ部署・労務手続きの日程と連動する |
| 前任者が「約束した」かどうかの評価 | 持ち帰る | 事実未確認のまま断定すると後で覆せない |
線引きの原則はひとつで、金額と日付は持ち帰るです。この2つは後から下げると心証を大きく損ないますが、上げる分には問題が起きにくい。だから確定してから出します。
求人票の記載自体が古いままになっているケースもあります。就業場所や業務の変更の範囲、固定残業代の内訳など、今の求人票に必要な記載は求人票の労働条件の書き方が今のルールに合っているかで確認できます。
社内で何を突き合わせるか
持ち帰った後の確認は、次の順で当たると早いことが多いです。
- 求人票・スカウト文面の当時のバージョン(媒体の管理画面に掲載履歴が残っている場合があります)
- 応募者に送ったメールの送信済みフォルダ、媒体のメッセージ履歴
- 面接の評価シート、面接官のメモ
- 面接に同席した現場責任者の記憶
- 給与テーブル・等級表など、社内で決まっている基準
書面に残っていれば、そこが基準になります。残っていない場合でも、面接官が「その話は自分も聞いた」と言うなら、口頭で伝わっていた可能性は高いと扱ってよいでしょう。前任者の頭の中にしかなかった判断基準を復元する手順は、前任者の合否判断の基準を、過去の選考履歴から復元するにまとめています。
前任者に確認が取れない場合
すでに退職している、有給消化中で連絡がつきにくい、退職の経緯が円満でない。いずれの場合も、応募者を待たせ続ける理由にはなりません。
連絡が取れるなら、聞くのは「約束したかどうか」ではなく「どの数字をどう伝えたか」です。責任の追及に聞こえる問い方をすると、返事が返ってこなくなります。
連絡が取れない、または記憶が曖昧で確定できない場合は、その事実を応募者に伝えたうえで、会社としての結論を示します。避けたいのは、次のような表現です。
- 「前任が勝手に言ったことなので当社は関知しません」(応募者から見れば会社の言葉です)
- 「記録がないので、そのような事実はありません」(応募者の記憶を否定することになります)
- 「確認中です」を期限なしで繰り返す
代わりに、「社内の記録と関係者への確認では、その条件を確定した経緯が確認できませんでした。当社の説明が不足していたことをお詫びします。そのうえで、現時点でご提示できる条件をお伝えします」という順で組み立てます。非を認める部分と、条件の結論を分けて話すのが要点です。
条件を下げる結論になったとき
確認の結果、応募者が聞いていた条件を出せないと分かることがあります。このとき「無理です」の一言で終えると、辞退だけでなく媒体の口コミに残ることもあります。選択肢を並べて、応募者に選んでもらう形にします。
| 提示の仕方 | 内容 |
|---|---|
| 条件の分解 | 基本給は下げても、手当・賞与の見込み・昇給時期で埋められないかを示す |
| 時期をずらす | 入社時は提示額、試用期間終了後や半年後の見直しで到達する道筋を示す |
| 役割を変える | 職種・等級を変えれば提示できる場合、その選択肢も並べる |
| 判断の猶予 | その場で結論を求めず、回答期限を明示して持ち帰ってもらう |
いずれの場合も、口頭で合意した内容はその日のうちにメールで文面化し、応募者に確認してもらいます。ここを飛ばすと、同じ食い違いが内定後にもう一度起きます。条件のずれが辞退につながる構造は内定辞退が続くときに見直すことでも扱っています。
同じことを繰り返さないために
このトラブルは、担当者の資質ではなく記録の不在から起きています。再発を防ぐ最小限の手当ては3つです。
- 応募者に伝えた条件は、口頭で話した後に必ずメールで送る(送信済みが記録になります)
- 候補者一覧に「提示済みの条件」の欄を作り、誰が見ても分かる場所に置く
- 金額と入社日は、決裁者の承認前に口に出さないというルールを面接官全員に共有する
3つとも、システムを入れなくても表計算ソフト1枚でできます。採用の判断や手順が特定の人の頭の中にある状態を解く手順は、採用が特定の人に依存している状態の解き方を参照してください。
一人で抱え込む前に
条件の食い違いへの対応は、採用の知識よりも、社内のどこに決裁権があり、何が書面で決まっているかを把握しているかどうかで決まります。前任者が抜けた直後は、その把握自体ができていないことが多く、応募者を待たせている間にも選考は他社と並行して進んでいます。
株式会社Talencoの採用担当引き継ぎ代行は、止まった求人活動の復旧、後任の採用、引き継ぎと業務改善までを一括で担うサービスです。後任は採用担当の経験者でなくてかまいません。当社が育てて引き継ぎます(後任は未経験でいい。採用担当が4ヶ月で育つ理由)。標準プランは4ヶ月・200万円(税別・広告費込み・分割可)で、期間の短い復旧プランもあります。詳細は料金プランをご確認ください。
まずは、媒体アカウント・契約・進行中の応募者の棚卸しを行う「採用ストップ診断」までは無料です。ご相談はLINE公式からお受けしています。