この機会に人事部を作るべきか、採用だけ回すか
採用担当が1名辞めただけで、求人も応募対応も内定者の連絡も全部止まった。この状況を見て「そもそも人事という機能が弱すぎるのではないか」「この機会に人事部を作るべきではないか」と考える経営者の方は少なくありません。発想としては正しい方向を向いています。一人に依存していたから止まったのであって、組織として持てば止まりません。
ただ、順番を間違えると高い買い物になります。人事部は「作る」と決めれば作れますが、作っただけでは業務が集まらず、看板だけが組織図に残ることがあります。この記事では、人事部が成立する規模の目安と、部を作る前に踏んでおきたい段階、そして「いまは採用だけ回す」という判断が合理的になる条件を整理します。
止まっているのは採用で、人事部の不在ではない
まず切り分けが必要です。いま起きているのは、求人の掲載が止まり、応募者への返信が滞り、選考中の人が宙に浮いているという状態です。これは採用という業務の担い手が消えたことによる問題で、人事部という箱の有無とは別の話です。
人事部を新設しても、求人媒体の管理画面に誰かがログインできるようになるわけではありませんし、選考中の応募者に今週中に返信が届くわけでもありません。復旧は復旧として、組織設計とは別の時間軸で進めることになります。直後にやるべきことの順番は採用担当が退職した直後にやるべき7つのこと(優先順位つき)にまとめているので、まだ手がついていない項目があればそちらを先に埋めてください。
組織の話は、止血が終わってからでも遅くないことが多い、というのがこの記事の立場です。
人事部が成立する規模の目安
人事部を「部」として置くかどうかは、そこに集まる仕事の量で決まります。専任者を置くだけの仕事量がないのに箱だけ作ると、担当者は手が空き、他部署の雑務が流れ込み、やがて総務と区別がつかなくなります。
判断材料になるのは、主に次の3つです。数字は一般的な目安であり、業種や拠点数によって上下します。
| 判断材料 | 採用だけ回すほうが現実的な状態 | 人事部の検討に入りやすい状態 |
|---|---|---|
| 従業員数 | 数十名規模で、労務は総務や顧問社労士で回っている | 100名を超え、部署数も増えて社内調整が常時発生する |
| 年間の中途採用人数 | 年に数名程度。募集が出る月と出ない月がある | 通年で募集が走り、複数職種が同時に動いている |
| 労務の量 | 入退社手続きが月に数件。給与計算は外部委託 | 入退社・勤怠・評価・教育が毎月まとまった工数になる |
| 制度の整備 | 就業規則と賃金テーブルがあり、改定頻度は低い | 評価制度や等級の見直しが経営課題になっている |
右側の列に3つ以上当てはまるなら、人事部という単位で考える意味が出てきます。左側に寄っているなら、いま必要なのは部ではなく「採用を止めずに回す担当者1名と、その人が辞めても止まらない手順」です。
採用業務が実際に月何時間かかっているかを先に測ると、専任か兼任かの議論がぶれにくくなります。測り方は採用業務は月何時間かかるのか、測ってから後任を決めるを参照してください。
先に部を作ると起きやすいこと
規模が追いついていない段階で人事部を立ち上げると、次のような経過をたどることがあります。
1つ目は、業務が集まらないことです。採用以外の仕事(評価、教育、労務)は、これまで総務や各部門長が分担して持っています。組織図を書き換えても、実務の移管は自動では起きません。「人事部に移す」と決めた業務が、結局は従来の担当者の手元に残ったまま半年が過ぎる、という形になりがちです。
2つ目は、採用の立ち上がりが遅れることです。部の設計、権限の整理、既存業務の棚卸しに時間を使っている間も、求人は止まったままで、応募者は他社の選考に進みます。放置期間に何が起きるかは求人を止めている間に、応募者はどうなるのかで整理しています。
3つ目は、採用した人の役割が曖昧になることです。「人事部長候補」として採用すると期待値が高くなりますが、実際に任せられるのは当面は採用実務だけ、ということが起こります。期待と実態がずれると、早期の離職につながりやすくなります。
部を作る前に踏んでおきたい二段階
順番としては、次の二段階を踏んでから組織の話に進むほうが安全です。
第一段階は、採用の手順化です。 誰が担当になっても同じ手順で動ける状態を作ります。媒体の契約と権限、応募から面接までの流れ、合否の判断基準、決裁の通し方。この4つが文書になっていれば、担当が入れ替わっても採用は止まりにくくなります。最初に何を書くかは採用フローを手順化するとき、最初に書くべき5項目にまとめています。
第二段階は、担当1名の定着です。手順があっても、動かす人がいなければ回りません。ここで重要なのは、後任を人事経験者に限定しないことです。手順が整っていれば、採用の経験がない人でも実務は回せるようになることが多く、むしろ社内事情を知っている人のほうが現場との調整は早く進みます。
この二段階が済んだ状態は、人事部を作るための土台にもなります。手順書があり、担当者が定着していれば、そこに労務や評価の業務を足していく形で部に育てられます。逆の順番、つまり箱を先に作って中身を後から集める進め方は、時間がかかりやすいということです。
「採用だけ回す」を選ぶ場合のコスト感
比較のため、当面の選択肢を並べます。金額はいずれも目安で、地域や職種によって変動します。
| 選択肢 | 初期にかかること | 向いている状況 |
|---|---|---|
| 採用担当1名を補充して回す | 採用費用と年収相当の人件費。立ち上げ期間は社内の工数も要る | 年間の採用人数が限られ、労務は既存体制で足りている |
| 総務・管理部門の兼任で回す | 追加の人件費は抑えられるが、繁忙期の重なりで滞りやすい | 募集職種が1〜2、応募数が月数件に収まる |
| 人事部を新設する | 部長級の採用費用と人件費、既存業務の移管調整 | 従業員100名超、通年採用、制度改定が経営課題 |
兼任でどこまで持てるかの線引きは総務兼任で採用を回す限界はどこにあるかに詳しく書いています。専任か外部委託かの分岐を数字で見たい場合は採用担当を正社員で置くか、外部委託と兼任で回すかが参考になります。
人事部の新設は、一度決めると戻しにくい意思決定です。一方で採用の復旧は、いま動けば数ヶ月で形になります。判断を先送りしてよいというのは、放置してよいという意味ではなく、順番として採用の復旧と手順化が先に来るということです。
当社の立ち位置
株式会社Talencoの「採用担当引き継ぎ代行」は、まさにこの二段階を代行するサービスです。止まった求人活動を復旧させ、後任の採用担当を採り、手順化して引き継ぐところまでを担当します。後任は採用担当の経験者でなくてかまいません。当社が育てて引き継ぐため、社内異動や未経験の採用でも成立しやすい設計にしています。
標準プランは4ヶ月・200万円(税別・広告費込み・分割可)です。復旧だけを急ぐ2ヶ月80万円のプラン、より深く入る6ヶ月300万円のプランもあります。内訳は料金プランをご覧ください。
人事部を作るかどうかの判断は、採用が回り始めてからでも遅くありません。まずは何が止まっていて、何が残っているかを確かめるところからです。採用担当引き継ぎ代行では、採用ストップ診断(媒体アカウント・契約・進行中の応募者の棚卸し)までは無料で行っています。ご相談はLINE公式からお願いします。