前任者が契約した採用ツールの料金が引き落とされ続けているとき
求人媒体の契約は請求書が届くので気づきます。問題は、月額数百円から数千円の小さなツールです。日程調整ツール、クラウドストレージ、文書作成サービス、名刺管理、オンライン会議の有料プラン、署名サービス。前任の採用担当が「自分の判断で入れた方が早い」と契約し、個人カードや個人メールアドレスで登録したまま退職すると、誰も契約者が分からないまま更新だけが続きます。
金額が小さいため経理のチェックも通りやすく、「毎月出ている見慣れた支出」として処理され続けます。けれど中には、応募者の履歴書や面接メモが入っているサービスもあります。費用の話であると同時に、データの所在の話でもあります。
少額サブスクが残り続ける理由
残り続ける構造には理由があります。ひとつは、契約した本人以外に通知が届かないこと。更新案内も領収書も前任者の個人メールに送られるため、社内の誰にも更新のタイミングが見えません。
もうひとつは、解約には管理画面へのログインが必要なことです。請求を止めたいだけなのに、ログインできなければ止められない。媒体の管理画面と同じ詰まり方で、ここは求人媒体の管理画面に入れないときの確認手順と考え方が共通します。
そして三つ目が、止めてよいかの判断が誰にもつかないことです。使っているか分からない、中に何が入っているか分からない、だから触らない。この状態が一番長く続きます。
まず契約を洗い出す
探す場所は3つです。上から順に見ると、たいていの契約は拾えます。
1. クレジットカードの明細(直近12ヶ月)
法人カードの明細を12ヶ月分さかのぼってください。年額契約のサービスは11ヶ月前に1回だけ出ているので、直近3ヶ月だけでは見つかりません。横文字のサービス名、決済代行会社名義、海外決済手数料がついている行に印をつけます。
2. 経費精算の履歴
前任者が個人カードで払い、経費精算で回収していた場合は、カード明細ではなく精算申請に残っています。「ソフトウェア利用料」「通信費」「雑費」で毎月同額の申請がないか確認してください。この形で払われていた場合、退職でカードが止まり、サービス側が未払いとして止める流れになります。支払い方法そのものの切り替えは媒体費が前任者の個人クレジットカードで払われていたときに手順をまとめています。
3. 共有メールと社内の痕跡
採用の共用アドレスやグループ宛に届いた領収書メール、社内チャットに貼られたURL、求人票や応募者への案内メールに書かれているリンク先。面接日程の案内に外部ツールのURLが入っていれば、そのツールは契約が生きている可能性が高いです。
データが消えるかどうかで扱いを分ける
洗い出したら、すぐ解約してよいものと、先にデータを出すものに分けます。判断軸は金額ではなく、中に何が入っているかです。
| 区分 | 該当しやすいサービス | 解約前にやること |
|---|---|---|
| 中身が消えて困る | クラウドストレージ、文書作成、採用管理、適性検査、電子契約・署名 | データのエクスポート、保存期限の確認 |
| 中身は困らないが設定が消える | 日程調整ツール、メール配信、フォーム | 発行済みURLの差し替え、送信先の確認 |
| すぐ止めてよい | 使われた形跡のない有料プラン、重複している同種ツール | 契約期間と自動更新日の確認のみ |
応募者の履歴書や評価メモが入っているサービスは、解約と同時にアクセスできなくなるだけでなく、一定期間後に削除されることがあります。先に中身を取り出してください。選考データの持ち出しは採用管理システム(ATS)の契約とデータをどう引き継ぐかに、エクスポートで押さえる項目を整理しています。
日程調整ツールと電子署名には、もうひとつ注意点があります。前任者名義で発行したURLが、すでに応募者や内定者に送られている場合があることです。解約するとリンクが切れ、応募者側には「アクセスできません」とだけ表示されます。差し替えの連絡を先に出すか、解約を数日ずらすかを決めてから止めてください。
名義変更と解約の優先順位
全部を同時には進められません。次の順で片づけると、事故が起きにくくなります。
| 優先度 | 対象 | 取る対応 | 目安 |
|---|---|---|---|
| 1 | 応募者・内定者が現在使っているツール | 名義変更。止めない | 今週中 |
| 2 | 応募者データが入っているツール | エクスポート後に名義変更 | 今週中 |
| 3 | 使っていないが自動更新が近い契約 | 更新停止の手続き | 更新日の2週間前まで |
| 4 | 使途不明・重複している契約 | 1ヶ月だけ止めて影響を見る | 翌月 |
名義変更は、サービスによって手続きが大きく違います。管理画面から支払い方法とメールアドレスを変えるだけで済むものもあれば、サポート窓口への申請と本人確認を求められるものもあります。問い合わせの際は、法人名・契約に使われていたメールアドレス・直近の請求日と金額を添えると話が早く進むことが多いです。
優先度4の「1ヶ月だけ止めて影響を見る」は、使途が分からないものへの現実的な対処です。誰も困らなければそのまま解約し、困る人が出てきたらその場で再契約する。少額のサブスクは再契約の障壁が低いので、迷い続けるより一度止めた方が結論が出ます。ただし、データが消える区分のものはこの方法を取らないでください。
同じことを繰り返さないために
契約が社内に見えなくなる原因は、支払い方法と通知先が個人に紐づいていたことです。戻すときに次の3点を決めておくと、次の担当交代で同じ探索をせずに済みます。
- 支払いは法人カードか請求書払いに統一する
- 通知先は採用の共用アドレスにする(個人名アドレスからの移行は採用の連絡先を個人名アドレスから共用アドレスへ移すを参照)
- サービス名・月額・更新日・管理者を1枚の表にして、管理部門が持つ
ツール1つあたりの金額は小さくても、数が増えれば年間では無視できない額になります。それ以上に、契約者が分からないサービスに応募者の個人情報が置かれている状態は、金額とは別の問題です。媒体の棚卸しを進めるなら求人媒体の棚卸しで何を確認するかと合わせて、同じタイミングで表に起こしてしまうのが効率的です。
洗い出しと止める判断を、外から手伝う
カード明細を12ヶ月分さかのぼり、サービスごとに問い合わせ、データを出してから解約する。作業そのものは難しくありませんが、通常業務の合間に進めると数週間かかります。その間も引き落としは続きます。
株式会社Talencoの採用担当引き継ぎ代行では、止まった求人活動の復旧と並行して、媒体・ツール・契約の棚卸しを行い、後任の採用と引き継ぎまでを一続きで進めます。後任は採用担当の経験者でなくてかまいません。標準プランは4ヶ月・200万円(税別・広告費込み・分割可)で、ほかに復旧のみの2ヶ月プランもあります。内訳は料金プランをご覧ください。
まずは現状を把握するところからで構いません。採用ストップ診断(媒体アカウント・契約・進行中の応募者の棚卸し)までは無料です。ご相談はLINE公式からお受けしています。明細を手元に置いていただければ、どこから止めるべきかの整理までお手伝いできます。