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採用を兼任で持つ社員に、手当や評価をどう設定するか

採用担当が抜けたあと、「とりあえず総務のAさんに見てもらう」「現場のBさんに面接だけ入ってもらう」という形で走り出した会社は多いと思います。最初の1〜2ヶ月は本人の善意で回ります。問題は3ヶ月目以降で、応募対応の返信が遅れ始め、媒体の更新が止まり、本人からは何も言ってこないまま静かに滞留していきます。

原因は能力ではなく、たいてい設計です。既存業務を減らさず、手当も出さず、評価にも載らない状態で追加の仕事を渡すと、その仕事は本人の中でいちばん後回しになります。この記事では、兼任者に何で報いるか(手当・評価・業務削減)の選び方と、金額の決め方、そして「いつ兼任をやめるか」を先に決めておく設計をまとめます。兼任でどこまで回せるかという業務量の線引きは総務兼任で採用を回す限界はどこにあるかで扱っているので、ここでは処遇の設計に絞ります。

無償の追加業務は、悪意なく後回しになる

兼任者にとって、採用は「自分の本業の評価に影響しない仕事」です。総務の締め処理や請求書対応には期限があり、遅れれば誰かに叱られます。応募者への返信は遅れても社内の誰も気づきません。この非対称が続くかぎり、採用は本人の努力量に依存し続けます。

しかも採用は、遅れの影響が外に出ます。応募者は連絡が来なければ他社に進み、掲載費だけが消化されます(求人を止めている間に、応募者はどうなるのか)。兼任の処遇設計は福利厚生の話ではなく、返信を止めないための仕組みとして考えたほうが実態に合います。

報い方は3つ。どれか一つではなく組み合わせる

手段内容向いている状況弱点
手当月額の兼任手当・特別手当を支給期間が半年以上見込まれる/担当が1名に固定される金額が小さいと逆に不満になる。減額・停止の条件を決めにくい
評価目標設定や評価シートに採用の項目を入れる評価制度が既にあり、期中でも項目を足せる反映が半年〜1年後になり、目の前の負荷感は減らない
業務削減既存業務の一部を外す・後ろ倒しにする兼任者が繁忙部署に所属している誰かに移す必要があり、上長の調整が要る

現実には、業務削減を土台に置き、手当か評価のどちらかを足す形が続きやすいと感じます。手当だけを出して業務量をそのままにすると、「お金はもらったので断れない」状態になり、本人が抱え込んだまま消耗します。逆に業務削減だけだと、担当を引き受けたこと自体が記録に残らず、異動や昇給の場面で評価されません。

手当の金額は、残業換算ではなく「担う範囲」で決める

「採用に月10時間使うから、時間単価×10時間」という決め方は、一見合理的ですが機能しにくいです。理由は二つあります。ひとつは、慣れるほど時間が短くなるため、上達すると手当が下がる逆インセンティブになること。もうひとつは、採用の負荷は作業時間より「いつ来るか分からない連絡を待つ状態」にあることです。

そこで、担う範囲の広さで階段状に決めるほうが運用しやすくなります。以下は金額そのものの相場ではなく、社内の既存手当(役職手当・当番手当・特殊業務手当)と釣り合いを取るための目安の考え方です。

担う範囲具体的な業務手当の考え方の目安
窓口だけ応募通知の受信、一次返信、面接日程の調整社内の当番手当・電話当番手当と同水準に揃える
窓口+媒体運用上記に加え、原稿の修正、掲載の開始停止、応募状況の週次報告小さめの役職手当(係長クラス)と同水準を上限の目安に
選考の設計まで上記に加え、求人条件の起案、紹介会社との窓口、選考基準の整理兼任の範囲を超えている可能性が高く、手当より体制の見直しを検討

金額を決めるとき、外部に出した場合の費用と比べておくと社内の説明が通りやすくなります。同じ業務を採用代行に出すと月額で発生し(採用代行の費用相場と、どこまで任せられるかの境界線)、後任を採用すれば紹介手数料と年収が乗ります(採用担当の給与相場と、後任にいくら払うべきか)。兼任手当は、それらに比べれば桁が小さいことが多いはずです。

評価項目に入れるなら、本人が制御できる数字にする

評価に載せる場合、「採用人数」「応募数」を目標にするのは避けたほうが無難です。応募数は市況と予算と職種で決まり、兼任者の努力ではほとんど動きません。動かない数字で評価されると、次に頼んだとき断られます。

代わりに、本人の行動で動く項目を置きます。

  • 応募から一次返信までの日数(例:翌営業日以内)
  • 未対応の応募が週次でゼロになっているか
  • 面接日程の調整が滞留していないか
  • 媒体・紹介会社との連絡窓口が機能しているか

このうち返信速度は、採用結果への影響が大きい割に兼任者でも管理できる項目です(応募者への返信速度が採用結果をどう変えるか)。評価者側も、数字の良し悪しを判断するのに採用の専門知識が要りません。

兼任を解除する条件を、始める前に決める

兼任がこじれるのは、終わりが決まっていないときです。「後任が決まるまで」という言い方は、後任探しが止まると無期限になります。開始時点で、次の3つを文書に残しておくことをおすすめします。

  1. 期限:いつまでの臨時措置か(例:後任の入社まで、または6ヶ月経過時点で再協議)
  2. 解除の条件:後任の採用が決まった時点、募集職種が◯件を超えた時点、兼任者の本業が繁忙期に入る時点
  3. 手当の扱い:解除時に手当を止めること、止める理由が「降格ではない」ことの明記

3つ目は見落とされがちですが、あとで揉める箇所です。支給を始めるときに「臨時措置であり、担当を外れた時点で支給を終える」と書面で合意しておくと、解除の話が切り出しやすくなります。

なお、兼任者に採用を任せ続けるか、その人を正式な後任として育てるかは別の判断です。社内から選ぶ場合の人選基準は採用担当を社内異動で用意するときの選び方にまとめています。

「臨時のはずが3年」を避ける

兼任の設計で怖いのは、破綻ではなく定着です。手当を出して評価にも載せると、体制としては一応成立してしまい、採用担当を置く議論が先送りになります。そのまま1年、2年と経つと、また同じ属人化が起きます(採用担当が一人しかいない会社のリスクを整理する)。

兼任は、後任が立ち上がるまでの橋渡しとして設計するのが現実的です。手当と評価は橋を渡り切るための燃料であって、橋そのものではありません。


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